このページは「人材育成-組織活性化重視!人事制度改善-改革テキスト」の第5章 人的資源活性化の意義と人事評価(考課)システム がテーマです。

 経営計画と連動した人的資源活性化システムのPlan・Do・Check・Kaizenのマネジメントサイクルを回し、チェックした結果を処遇に結び付ければ、従業員は人的資源管理活性化システムの各ステップで良い成果をあげようと動機付けられる。これが、新しいマネジメント指向型の人事評価(考課)システムである。 (従来のコントロール型査定主義の、「評価(考課)のための評価(考課)システム」とは、もとの考え方からして、全く異なるのである。)

1. 人材マネジメントシステムとモチベーションの向上施策

 従業員を動気付け勤労意欲を向上させる最大の施策は、「役割・目標へのチャレンジと自己実現」をキーワードにして体系的な人事制度を整備し、公平で納得性の高い処遇を実現することである。処遇には賃金処遇(月給、賞与等)と地位的処遇(役職への任命や希望する役割・職務の担当)とがあり、勤務ぶりや仕事の成果に対応した処遇をおこなうことで従業員のやる気を高めることができる。

2. マネジメント指向型人事考課の概要

(1)新しいマネジメント指向型人事評価(考課)の体系

 従来からの「業績評価(考課)」(目標管理制度)に加え、「プロセス評価(考課)」(コンピテンシー評価(考課))を導入し、併用することで「結果」と「プロセス」をバランス良く評価(考課)できる評価(考課)体系とする。これにより評価(考課)の公平性と客観性を高め、高い納得性が得られる評価(考課)制度になる。(コンピテンシーについては後ほど詳述。)

 また、従来の結果評価(考課)だけでは活性化できなかったパフォーマンス・ドライバイー「高業績達成のためのプロセス・戦略実現行動の過程」を改善し、戦略目標達成への貢献度を高めるために、「行動に視点をあてたコンピテンシー評価(考課)」を活用する意義も高い。

■図表 新しいマネジメント指向型人事評価(考課)の体系

評価制度の体系2web

 従来の人事評価(考課)制度は能力評価(考課)の定義が戦略目標達成努力と乖離している等、戦略的経営システムから超然として自己完結していた点が弱点であり、コントロール指向(査定主義)人事管理制度の限界であった。人的資源活性化のためには、マネジメントの一部分に注目するコントロール指向型(査定主義)人事評価(考課)と、戦略経営システムの中で戦略目標達成のためのシステムを築き、そのP・D・C・Kaizenサイクルを回すマネジメント指向人事評価(考課)システムとでは、どちらが実り多き成果を上げられるか、考える余地も無く明白である。

 各職層別人事評価(考課)システムの構成は次の図表のとおりである。

■図表 各職層別人事考課システムの構成
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 業績評価(考課)の従来型の内容に加えて、新しい考え方である「チーム目標管理」および「コンピテンシー考課」については、新たに後述する。

A.人事評価(考課)の段階と評価(考課)者・被評価(考課)者

 人事評価(考課)は二段階に渡って行う。これによって複数の目で従業員を評価(考課)し、客観性を高め、納得性のある考課を実現するよう配慮する。人事評価(考課)は本来従業員の働きぶり(コンピテンシー)、仕事の成果を公平かつ適切に評価(考課)し、それを賃金処遇や昇給・昇級につなげて動機付けをはかり、また従業員の能力開発につなげるねらいで実施するものであるが、ひとたび不公平な評価(考課)をすると、全く逆の効果が生まれてしまう。こうした失敗を避ける意味でも多段階に渡って評価(考課)する必要がある。

(a)一次考課者と二次考課者

 一般的に次のように考課者を設定する。最終的には役員による合議や人事担当部署において総合的な調整を行い不公平がないようにする場合も多い。

■図表 一次評価(考課)者二次評価(考課)者の設定例
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(b)一次評価(考課)者と二次評価(考課)者の役割分担

 当然のことながら、一次評価(考課)者と二次評価(考課)者ではそれぞれ果す役割が異なる。一次評価(考課)者は常に部下とともに仕事をしており、日頃から指導育成しているため細かな観察が可能であり、より具体的な部分を分担する。一方、二次評価(考課)者は何十人もの部下の細かい行動まで把握できない代りに、より広い視野で中期的な視点から部下を把握することが出来る。

 一次評価(考課)者と二次評価(考課)者の役割分担については以下の例を参考にされたい。

■図表 一次評価(考課)者と二次評価(考課)者の役割分担例
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(2)絶対評価(考課)と相対評価(考課)

 絶対評価(考課)とは、具体的な評価(考課)基準を設定し、それに基づき、従業員一人ひとりのコンピテンシーや業績を把握する方法である。業務遂行過程・結果の具体的事実を評価(考課)材料として、共通のものさしである評価(考課)基準に照らして評価(考課)を行なう。

 相対評価(考課)とは、AさんとBさんを比較して、Bさんの方が相対的に優れているのでSグレードの評価(考課)を付けるなど、共通の評価(考課)基準に判断根拠を求めず実施する評価(考課)の方法である。単に査定のためであればこの相対評価(考課)により順位付けも可能であるが、評価(考課)結果のフィードバックを通じてPlan・Do・Check・Kaizenのサイクルを回すことが出来ないため、本当の業績向上・戦略目標の達成には繋がりにくい。

 評価(考課)者は評価(考課)が簡便であるために相対考課を行ないがちであるが、一次評価(考課)は絶対評価(考課)でなければならない。二次評価(考課)や総合調整、賃金処遇への反映の段階においては、「S評価(考課)は全体の3%以内である」など相対的な序列の分布を制限することも実務上必要である。しかし、これは相対「評価(考課)」ではなく、相対的な「調整」である点に留意されたい。

3. 業績評価(考課)

(1)成績評価(考課)

 成績評価(考課)は「命じられた仕事をきちんとやり遂げたか」を評価(考課)するものである。目標重視マネジメントの視点からすると、「チーム目標管理」および「個人目標達成度評価(考課)」に取り上げられる以外の全ての仕事をここで評価(考課)するとも表現できる。

(2)個人目標達成度評価(考課)

 個人目標達成度評価(考課)は、後述するチーム目標管理が、経営計画のトップダウンの論理により展開されてくる一方で、働く従業員サイドのボトムアップ型目標提案の意義を持っている。戦略目標達成のために努力すること、戦略実現を最優先する一方で、現場の活性化やあらかじめ計画できない「不可知領域」の価値ある何かを見つけ出し、ボトムアップ提案する意義も高い。また、働く従業員の自主性を尊重する施策であり、動機付けに繋がる。

 従業員は、チーム目標管理で、経営計画と連動した複数の目標にチームの一員としてチャレンジするため、個人目標は1つに限定した。また、一般職層では、「能力開発型目標」とし、「学習と成長」を自ら実践することに限定しても良い。

 個人目標を決定する場合は、部下と上司とで相談しながら決定するが、上司はコーチング的な非指示的態度でアドバイスすべきである。

4. その他の動機付け施策

 今日では仕事は単に生計の糧を得る手段であるとするにとどまらず、仕事をとおして自らの成長と社会への貢献を目指したいと考える従業員の意識も高まってきている。このように勤労者の就労意識/価値観が変化し多様化した今日では、自己実現のチャンスを提供するなど新しい動機づけの施策を導入する必要がある。

 就業規則を整備して安心して働ける環境を整備することは、まず最初に取り組むべき基本である。誰もが公平に従業員として処遇されることを文章により明示することは大きな動機付けの施策であると同時に、組織の中にフェアーな文化を築き上げる。

 人的資源管理システムの整備の他にも小集団改善活動を行い、自分達の職場の改善に取り組む事も効果的である。また、従業員親睦会を組織して季節毎の行事を企画するなど、従業員相互の親睦を深め協調性を高めたり、職場への帰属意識を高めるなどの施策も忘れてはならない。