リーダーが明日から実践できる若手世代の指導育成方法とツール|支援型コミュニケーション

 今までの指導育成方法が大きく間違っている訳ではありません。また、厳しい仕事ですから、厳しく指導しなければいけない場面もあるはずです。

 しかし、若手世代と我々とは大きく違う為、ミスマッチが生じています。そこで、今までの指導育成方法を尊重しつつ、プラスアルファで新しい育成方法を取り入れましょう

1.若手世代を支援(指導育成)する場合のポイント

 若手世代に対しては、どのように指導育成方法を改善していけばよいのでしょうか?若手世代を指導育成する場合のポイントは次の通りです。

(1)働く仲間目線で「支援型コミュニケーション」をする

 働く仲間目線で「支援型コミュニケーション」をしましょう。「上から目線で接しない」ということが大切です。企業や組織は上意下達、上司(主任・係長など)の命令を部下が受けます。それは当然ですが、毎日毎日上から目線で管理をすると、若手世代はやる気をなくします。

 そこで、次のようなポイントに配慮して接しましょう。

  • 働く仲間意識で接しましょう
  • 支援しましょう(若手世代を変えよう、コントロールしようとしない)
  • 上から目線、冷たい目で見ないようにしましょう

(2)対話しよう(まず聴こう、意見交換しよう)

 「対話」とは、一言で言えば「異なる意見や価値観を持った者たちが、話し合いながら理解を深め、より良いものを生み出す会話」です。当然、双方向のコミュニケーションになります。

 もう少し簡単に言えば、「まず聴こう」「相手の意見の価値を認めて、率直に意見交換しよう」ということです。

2.効果的な「声かけツール」による「支援型コミュニケーション」

 この効果的な「声かけツール」を使うと、自然に「相手を尊重したコミュニケーション」「双方向のコミュニケーション」「働く仲間目線のコミュニケーション」になります。つまり、「コミュニケーションの方法論が間違っているのか?」などと、難しいことを考えなくても、自然に上手なコミュニケーション、指導育成が出来るようになるのです。

 この「声かけツール」と上述の指導育成方針が組み合わされるコンビネーションの妙で「支援型コミュニケーション」が簡単に実践でき、効果的な指導育成が可能になります。

(1)「仕事で何か困っていることはありませんか?」

 この声かけツールは「私は貴方を助けたいのです」という意味です。貴方から若手世代への支援表明です。「困っていることがあったら相談に乗りますから」と言外に含ませた言葉です。部下や後輩の仕事が上手く行くように手助けしてあげたいという思いやりにあふれた言葉です。

(2)「あなた一人でなく私と一緒に考えましょう」

 「あなた一人でなく私と一緒に考えましょう」という声かけツールは、貴方と若手世代(部下や後輩)が働く仲間であるという協働者宣言です。上から目線の指導育成、管理じゃないんだよというメッセージです。部下と上司、教える者と教わる者、管理する者と管理される者という関係から、いっしょに働く仲間(共に成長する仲間)という関係目線へ変わっていく宣言なのです。

3.若手世代(ゆとり世代)の強みと弱み

 ゆとり世代(ゆとり教育を受けた若手世代)というと、貴方は何を想像されますか?

(1)若手世代の弱み

 一般的には、「反つめこみ教育」(勉強時間を減らしたゆとり型)という強い印象から、「学力低下」や「基本的な知識力や学力が低く、集中力が持たない」というネガティブな特徴が思い浮かびます。また、「個性重視」という特徴が、「自己中心的」に見えたりします。さらに、「僕はボクですから、人と意見や価値観が違ってもいいじゃないですか?」とマイペースで飄々としています。それゆえ、他人とコミュニケーションをとるのが苦手にも見えます。

 若手世代の弱み(ネガティブな印象)を簡潔に整理すれば、次の様になります。

  • 「反つめこみ教育」:「学力低下」「基本的な知識力や学力が低く、集中力が持たない」
  • 「個性重視」:「自己中心的」「好きな仕事しかしたくない」「やりたいことだけ、やればいい」「自分らしさ第一で、会社や組織が合わなければ退職する方が合理的と考えがち」
  • 「競争回避」(みんな一位、絶対評価):「競争心が無い」「いつもマイペース」「負けた経験が無い(負けても這い上がる経験)」「忍耐力が無い」「ストレスに弱い」「叱られると辞めてしまう」「実社会の競争志向についていけない」
  • 「コミュニケーション能力が無い」:「他人とコミュニケーションをとるのが苦手」「自分と考え方や価値観が違う人(別世代の人など)とのコミュニケーションが特に苦手、別世代と付き合わない」
  • 「会社や組織と距離感がある」:「自分が一番大切」「プライベート重視」「熱意が無い」「言われたことしかやらない」
  • 「すぐ辞める」:「自分らしさ第一で、会社や組織が合わなければ退職する方が合理的と考えがち」「ストレスに弱く、叱られると辞めてしまう」

(2)良い点・強み

 しかし、そういった特徴は、見方を変えると良い点・強みにもなります。例えば、次の通りです。

  • 「反つめこみ教育」:考える力を養った。知識偏重のデメリットを減らした。問題解決能力を養った。
  • 「個性重視」:創造性の発揮を求められる社会では、個性から価値のあるものが生まれる。「個」の強さは何事においてもスタート地点として重要。
  • 「競争回避」(みんな一位、絶対評価):素直(そして優秀)。豊かな人間性。優しさや思いやりといった人間性は、他人の意見を聞く対話能力を高めるため、創造性を発揮させるベース(多様性尊重は、創造性発揮の重要な方法論)。他人と自分を比較し、他人を蹴り落とすような無意味な競争はしない(全体最適化に向く)。
  • 「コミュニケーション能力が無い」:受け入れる組織側で対策が必要。
  • 「会社と距離感がある」:受け入れる組織側で対策が必要。
  • 「すぐ辞める」:受け入れる組織側で対策が必要。

4.若手世代は戦力になれる!

(1)強みを活かし弱みは支援補足する

 こうした、良い点・強みで、ネガティブな事柄の弱みを消せば、(その特徴がうまく組合わさると)、若手世代は頼もしい戦力に成長できるのです。

(2)弱み、ネガティブばかり見ると空回り

 しかし、空回りしてしまうと、社会経験の浅い若者が机上のキャリア教育で学んだ「働きがい」や「個性重視」にこだわり過ぎて、次のような強い葛藤が生まれてしまいがちです。

  • 職場側:若手は使えない。何を考えているか解らない。やる気があるのか無いのか解らない?(なんとかして若手を我々の様に変えられないか?)
  • 若手世代側:学校で習った「あるべきキャリアプラン、職業人生」と違う。働きがいや社会に役立つ実感が無い。会社や組織の人たちは考え方が古すぎる。(自分らしさを犠牲にするなら辞めた方がまし。)

5.自己流で指導育成すると若手世代には効果が無い!?

 「自分たちが昔教わったように若手世代を指導すると、効果が無い。(悪くすると辞めてしまう)」と悩んでいる方は大勢います。

 思いやりを持って指導しても、ちょっとした「ミスマッチ」で上手くいきません。そこで、次の様なポイントに配慮して指導育成するのが効果的です。

(1)「自分らしさ重視(個性重視、自己実現が尊い)の価値観」を理解する

 今の若手世代は、「自分らしさ重視(個性重視、自己実現が尊い)の価値観」で育っています。ですから、「こちらの方が正しい、それは間違っている、こうしなさい」などと一方的に教えると、「怒られているのかな?自分の個性を否定されているのかな?」と考えてしまうのでしょう。

(2)「反つめこみ教育」(暗記より考える力重視)を理解する

 また、「反つめこみ教育」(暗記より考える力重視)で育っていますので、言われたことを丸ごと暗記するように覚える事に抵抗感もあるでしょう。

そのような指導育成方法をとると、「あ、古い考え方だな」「学校で学んできた事と違う。学校では、自分の頭で考える事を重視する学び方・教え方で素晴らしい経験をした。それと全然違う。指導育成方法が一方的な押し付け方式で古臭い。実社会は遅れているな」などと失望してしまうことでしょう。

(3)仕事の意義・心構え論は説教に思える

 一方、仕事の意義・心構えについて指導すると、どうしても説教に思えてきます。今の若手世代は、「個性重視(自分らしさ重視)の価値観」で育っていますから、自分たちの考え方・価値観に介入されると拒否反応が起きます。「地域の皆様・お客様の事を考えてみようよ」などと常識的な事でも、他人から言われると受け入れづらいのです。自分らしくあることが最上なのですから、他人に説教されたくありません。

6.若手の良さを活かすには社会経験・仕事の経験が必要

(1)志は高いが経験が不足する若手世代

 「ゆとり教育」にしても、「自分らしさ重視のキャリア教育」にしても、いずれもこれからの日本を担う若者を育てる方法として、検討・議論され実践に移されたわけです。もちろん、日本の産業界の発展の方向性やそこで求められる人材像・スキルも検討されました(教育はビジネスパーソン、産業戦士を育てる為だけのものではないとは思いますが)。したがって、大枠としては間違っていないと考えるべきでしょう(改善の余地が無かったとは言いませんが……)。

 こうした若手世代の受けてきた教育やその結果としての特徴を見ると、次のように考えるべきでしょう。

  • 実際に社会人になって、企業や組織で働く場合、『思考能力重視の教育(ゆとり教育)』『自分らしさ重視のキャリア教育』の良さが活かされるには、社会経験・仕事の経験が必要である。
  • 自分らしさを組織の中で活かす為には、相当の人間関係スキルが必要になる。
  • だから、その経験を積むまでは周囲が支援してあげるべき

 確かに、「自分らしさを大切にしよう」「個性重視」という考え方は、まさに正論です。しかし、個性を独りよがりではなく、地域の人達やお客様、働く仲間に喜ばれる仕事に活かすには、沢山の社会経験・仕事の経験を積む必要があります。自分らしさを組織の中で活かす為には、相当の人間関係スキルが必要です。

(2)職場リーダーの役割:若手世代を支援する

 会社や組織の中で自分の個性を活かしながら、同時に経済活動・社会活動としての経済的合理性・効率性を確立する(貢献できる仕事をする、儲かる仕事をする)のは簡単な事ではありません。「だから、その経験を積むまでは職場リーダーが支援してあげるべき。」ではないでしょうか?それこそが、職場リーダーに求められる役割なのです。

 結論として、若手世代を迎える我々自身が考え方・接し方・指導育成方法を改善する(変える)べきなのです。

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 若手世代の育成に悩んでいる先輩の貴方!このアニメ動画を見てリフレッシュしてください。攻撃的サッカーと守備的サッカーはどちらが強いのか?ゆとり世代の若手は、ちょっとズレてるのでしょうか?(音声はありません、無音です)

 

リーダーが明日から実践できる若手世代の指導育成方法とツール|支援型コミュニケーション” に対して2件のコメントがあります。

  1. 今井 より:

    やらせて考えさせて裁量をもたせる。ときおりみてアドバイスし、関心をもたせていく。よい時誉める。こんな人になりたいと思う上司になる努力をする。話を聞く。成長のため注意すべきは注意する。愛情込めて。若いのができないというよりも上司が上記事項をできてるか確認すべし。キャリアプランも示してあげる。人を育てるのは大変です。あの手このてでアプローチが必要ですね。

    1. Masao_Katou より:

      今井様、コメント有難うございます。
      仰る通り、人材育成と言うのは、簡単には行きませんね。しかし、仕事をするのはAIではなく、血の通った人間です。
      相手に合わせつつ、組織のビジョンにも合わせながら、上手に真摯に取り組まないといけませんね。
      この「声かけツール」は誰にでもできるので、ぜひ試してみてください。
      頑張りすぎず、お健やかに。

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