コンピテンシー評価(プロセスの考課)と支援マネジメント

 このページは「人材育成-組織活性化重視!人事制度改善-改革テキスト」の第7章 コンピテンシーによるプロセス考課 がテーマです。

加藤昌男画像『超・成果主義』加藤昌男著-日本経済新聞社

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特に、「支援マネジメント」を実践するための具体的な方法を詳述しています。もちろん、「コンピテンシー」を活用した支援策ですので、このページの内容がさらに具体的に書かれています。
目次だけでも読んでみてください。
目次詳細(日本経済新聞出版社のサイトへリンクします)
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1.コンピテンシーの最も効果的な使い方(総括)

 コンピテンシーの最も効果的な使い方は、①ナレッジ型(仕事のヒント)であり、かつ②経営理念と連携させる事です。その結果、人材育成と組織活性化に使えるコンピテンシーになり、単なるプロセス面の評価制度以上の効果を発揮します。次の記事をご参照ください。

最新情報ポストコロナ価値共創人事戦略|新三方よしで業績向上と人材育成・活性化を両立」本ホームページ内の記事の最新ノウハウを下に転記します。

(2)価値共創の具体的支援ツール

 価値共創のための具体的支援ツールは次の通りです。

表1:「価値共創人事戦略」の具体的支援ツールと客観的基盤

  • A「経営理念と連携したコンピテンシー評価制度」、対話に使う事で経営理念と日々の行動の関係を自覚する。既存コンピテンシーを経営理念と連携しても可。

  • B「目標設定支援ツール」付箋紙ブレーンストーミング手法を用いて、多数の管理職が参加し組織目標達成の為の個人目標の体系を設計する。査定の為の目標でなく、経営計画達成のための目標にする。

  • B「チーム目標のマネジメント」を行い、組織メンバーに目標を共有してもらう。何のための目標なのかが見えてきて働きがいが高まり、チーム内で協力し合える。成果査定でなく仕事の意義自覚の為。査定より組織活性化とチーム内での協働ネットワーク構築を重視。

  • C職場の知恵を明文化した「ナレッジ型コンピテンシー評価制度」、仕事のヒントに使うには査定型や汎用型では不十分。コンピテンシーは本来職場の知恵。評価できるできないでなく、仕事のヒントになるかどうかが大切。

  • E「対話型OJT」でナレッジ型コンピテンシーを使って、目標達成支援、生産性向上。答えを押し付けず一緒に考える支援、成長支援。「第二、第三の言葉」により内発的動機づけに効果的。

  • D「第一の言葉」で仕事の成果のポジティブなフィードバックを共有、共感。価値創造=社会貢献=嬉しい事。自らの成長に気付き、エンゲージメントが向上する。

2. コンピテンシーとは何か?

コンピテンシーとは「高業績につながる行動パターン」である。すなわち、高い業績を上げている人の行動を分析すると、共通的に見られる行動パターンが抽出される。これがコンピテンシーである。

従来の考え方では、高業績を達成するためには、知識や技能が重要だと考えられてきた。だからこそ、能力主義人事が一世を風靡したのである。しかし、同じレベルの知識・技能を持つ人材であっても、常に安定して高業績を達成する者と、そうではない者に分かれる事が観察されたのである。そこに知識・技能と高業績の相関関係の謎が生れたのである。

常に安定して高業績を達成する者とそうで無い者の「差」は何処にあるのか研究したところ、特徴的な行動パターンが見つけ出された。これがコンピテンシーである。つまり、知識・技能よりも重要なものが発見されたのである。

■図表 コンピテンシーの概念図
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資料出所: 太田隆次『アメリカを救った人事革命コンピテンシー』経営書院、1999年。

例えば「顧客(患者)の満足を高めるために、常に顧客(患者)の立場に立って物事を考え企画する。」という短文に記述された内容の行動パターンを励行すれば、自ずから高業績につながるという組織の知恵を明文化したものである。その意味で、コンピテンシーは「パフォーマンスドライバー」(事前的業績評価指標)の一種である。行動レベルの「パフォーマンスドライバー」(事前的業績評価指標)を明確に体系化し、そのPlan・Do・Check・Kaizenのサイクルを回すことに、コンピテンシー考課制度の戦略的な意義がある。

従業員をコンピテンシーという行動パターンに導くものは、彼・彼女の「動機・使命感や信念・価値観、性格・特性」と言った目に見えない資質レベルの要素であり、それらの要素が総合され目に見える「態度」として現れてくる場合もある。また、「知識や技能」と言った能力が伴わなければ高業績達成のためのコンピテンシーにはなり得えない。

この「動機・使命感や信念・価値観、性格・特性」「態度」「知識や技能」といったものは、成果を達成するためのInputであり、それがコンピテンシーという高業績の達成過程Processへと繋がり、そのProcess:コンピテンシーを遂行することで高業績というOutputの実現が期待できる。こうした一連のフローにより、安定的に高業績が達成され得るという考え方に基づき、今日の考課制度は、Processをするコンピテンシーと、Outputを考課する目標管理(および業務遂行度考課)の2つの体系により成り立っている。

■図表 業績(成果)を高めるためのコンピテンシー発揮と考課制度の全体像
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コンピテンシー考課は、従来の執務態度考課や能力考課に比べて、業績への貢献度により密接に関わっている。その意味で、従来よりも精度の高い貢献度考課が可能である。

3. コンピテンシー考課制度のねらい

コンピテンシー考課制度のねらいには次のようなものがある。

(1)納得性の高い考課制度を実現

(a)行動の「事実」を考課し客観性を高める

コンピテンシー行動という具体的な「行動の事実」を考課対象とすることで、考課の客観性を高められる。この特徴により、360度考課も可能になる。

(b)業績・成果考課を補完し公平性を高める

業績・成果考課や目標管理というOutputの考課をコンピテンシー行動というProcessを考課することで補完し、公平で合理的な考課制度とする。また、業績考課を補完することで、業績考課の逆機能(結果偏重の考課により、業績向上・勤労意欲の向上をかえって阻害しがちな弱点)を解決する。

(2)企業の中長期的発展に貢献する

(a)組織の知恵を開拓し組織の実力向上

組織の中には、目に見えない経営資源として沢山のノウハウが眠っている。その知恵(暗黙知)を見つけ出し発展させ、コンピテンシーとして文章化し、誰もが参考にできるようにする。

そして、その知恵である「高業績に繋がる行動特性」をベンチマーキングする(お手本となるコンピテンシー行動を真似る)ことで、組織のマンパワーの底上げを図り、組織全体の実力を向上させる。

(b)中長期的発展に繋がる行動を奨励

短期的指標が中心となる業績考課においてはプラス考課されないが、中長期的に見ると重要な行動をコンピテンシーとしてプラスに考課することで、その行動を奨励する。例えば、中長期的発展に繋がる施策や組織力の向上などのコンピテンシーを作成し、奨励するというメッセージを組織全体にむけて発信する。

(c)安定的・継続的な業績・成果の達成

コンピテンシーの体系を推奨行動として提示し、マネジメントサイクルを回すことは、従業員一人ひとりに、最大限の業績を高い確率であげてもらう仕組みを作り、運用することである。また、安定して・継続的に高い業績をあげ得る者を評価し、管理職や組織の中核に登用・配置していくことで企業業績の中長期的向上に貢献する。

(3)戦略的な人材の配置・育成

仕事に必要な能力・特性がある一方で、人それぞれに向き不向きの適性や能力特性がある。従業員のコンピテンシーを把握することで、適性に合った業務分担・配置やキャリア開発・能力開発を進め、人的資源の投資効率を高める。管理職登用のためのアセスメント資料とする。

(4)人事ビジョン・経営ビジョンの明確化

コンピテンシーの定義に経営トップ層の意見や人材ビジョンを反映させることで、期待される人材像を明示する事が出来る。経営理念や経営ビジョンを具体的な行動レベルにブレークダウンし、従業員に日々問いかける事が出来る。

4. マネジメントシステムとしてコンピテンシーを活用

ここまでは、読者の既知の仕組みである「コンピテンシー考課制度」として、コンピテンシーを紹介してきた。しかし、本テキストが提案したいのはコンピテンシーをマネジメントシステムとして活用することである。

(1)パフォーマンス・ドライバーを進捗管理

業績考課のチーム目標管理でもそうであったが、コンピテンシーもコントロール型の査定システムではなく、マネジメントシステムと考える。あくまでも、ねらいは戦略目標の達成であり、コンピテンシーをそのためのパフォーマンス・ドライバーとしてとらえなくてはならない。

もちろん、パフォーマンス・ドライバーは業績考課のための事前的指標であるから、その達成度(行動の発揮度)を考課し、フィードバックを実施する。賃金など人事処遇への反映は、フィードバックの一部分に過ぎない。単にフィードバックするだけでなく、Plan・Do・Check・Kaizenの改善サイクルが望ましい。

(2)学習する組織を作るコンピテンシー・マネジメント・システム

コンピテンシーにとっての改善サイクルとは、コンピテンシーの有効性を検証し必要なら改善することである。または、さらに効果的なコンピテンシーを創造することである。換言すれば、ある種のナレッジ・マネジメントの仕組みを運用することに他ならない。つまり、コンピテンシーをマネジメントシステムとしてとらえ運用すれば、学習する組織へと第一歩を踏み出す事ができる。

(3)コンピテンシー・マネジメント・システムの進め方

コンピテンシー・マネジメント・システムの進め方は、一般的には次のとおりである。従業員に解りやすいように考課制度と呼称するが、本質はマネジメントシステムであることは前述の通りである。

①役割(職務群)の設定、②高業績とは何かを定義、③高業績者の選定とインタビューの実施(高業績者分析)、④経営理念・経営ビジョンの分析と共有価値観(バリュー)の策定、⑤コンピテンシーモデルの設計(バリューとの連係を通して経営理念・経営ビジョンとも連係できる)、⑥コンピテンシー考課項目及び考課の視点の作成、⑦コンピテンシー考課シートの作成、⑧コンピテンシー考課制度の手引書の作成、⑨コンピテンシー考課制度の従業員・管理者への導入ガイダンスの実施、⑩考課トレーニングの実施。

5. コンピテンシーの具体例

第1章で説明した、図表:人材ビジョンの事例を具体的にコンピテンシー考課シートへと作り上げた例が、次の図表である。この事例では、コンピテンシー・マネジメント・システムであることを明確に表現するため、コンピテンシーシートと呼称している。

■図表 コンピテンシー考課シート事例(コンピテンシー・シートと呼称)
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6.リーダー・管理者に役立つ参考書籍

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