能力開発計画とは?意義、体系、立案ステップ、能力開発技法等基礎編

 能力開発計画の基礎を簡潔にわかりやすく紹介します。その意義、体系、立案ステップ、能力開発技法などを説明しています。このページは「人材育成-組織活性化重視!人事制度改善-改革テキスト」の第4章 能力開発計画 がテーマです。

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1. 能力開発計画の意義

 業績・成果重視の人的資源管理システムが主流となってきた今日でも、能力開発計画は依然として重要な意義を持っている。中長期的に見れば企業の業績は人的資源のパワーと極めて強い相関性を持つと言えよう。まず能力開発を推進して人的資源のパワーを高め、さらに動機付け施策を総合的に実施し従業員の貢献意欲を引き出し、チームワークを醸成してゆくことが企業業績の向上に直結する人事政策である。

 その重要な人的資源のパワーを高めることは一朝一夕には出来ない。特に外部から簡単に移転/導入のできないノウハウや知識・技能については、組織内で開発してゆかなければならない。人間の能力は二泊三日の社員研修だけで高まるものではなく、日々の業務の遂行と目標達成へ向けての真摯な努力の積み重ねによってようやく向上するものなのである。

2. マネジメント指向型“組織・人材活性化重視”の能力開発計画の体系

 マネジメント指向型“組織・人材活性化重視”人的資源管理システムにおける能力開発計画の体系は以下の通りである。従来の能力開発計画に比べて、コンピテンシーをOJTと連係させる点が特徴的である。また、チームパワーを高めることに注目し、メンバー相互協働による相乗効果を高める事も重視している。それぞれについて以下に説明する。

■図表 能力開発計画の体系
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(1)OJT(業務密着型教育訓練)

 OJTはOn the Job Trainingの略称で、業務に密着した内容を職場内で仕事をとおして行われる教育訓練である。上司や先輩が仕事を遂行し経験を積むことによってしか学ぶことの出来ない貴重なノウハウや知識・技能を教えるための教育手法である。実践的な内容を教え、仕事を遂行し目標を達成してゆくための能力を向上させることを主眼とする。従って能力開発の基本はOJTにあると言えよう。優秀な企業の特徴の一つは、職場の中でなすべき仕事や役割がきちんと確立しており、仕事や役割を遂行し目標を達成するために必要なノウハウや知識・技能をOJTによって上司・先輩が後輩に教えられる仕組みが上手く機能していると言う点である。日本の伝統的な優秀企業の中では、人的資源のパワーの大きい企業ほどOJTが習慣となっており、特別に意識することなく日常的に教育訓練が行われている。

 OJTのメリットは実践的教育である点と従業員一人ひとりの能力レベルや個性に合わせた教育を適時実施できる点である。また、期待水準に達するまで反復して継続的に実施できるため、仕事の上での成果に結びつきやすい。さらに、通常は経費もほとんどかからない。

 OJTのデメリットとしては指導する上司・先輩の指導力にバラツキがあり、同時に、指導者の個性や経験に偏りがちであるなど常に適切な教育訓練を実施するのが難しい点である。OJTの計画にしても実施内容にしても、現場の指導者である上司・先輩に大幅に依存している以上、その指導者の能力とやる気/意識に大きく左右されてしまいがちである。

 OJTは上手く機能すれば理想的な教育訓練の方法であるが、運用に際してはよほど注意深く行い、デメリットを薄めるためにOJT実施者のための研修(OJTリーダー研修)などを実施する必要があろう。

(2)コンピテンシー・ラーニング

 コンピテンシーが「高業績につながる、企業にとって価値ある情報」すなわちナレッジであることに注目し、OJTに活用する技法である。人事戦略の中では、不可視の経営資源「ノウハウの継承」という重要な課題に貢献する。コンピテンシー=ナレッジと考えることで、コンピテンシー・マネジメント・システム(後述)の実践を通して、組織の知恵を見つけ出し、その知恵を組織で共有化するという「学習する組織」の仕組みを構築することができる。

 まず、組織の中の知恵を見つけ出し、誰にでも見えるように文章化した上で、さらに発展させる事が重要である。組織の知恵は、通常は従業員が自分自身の個人的ノウハウとして「属人的な姿」で持っている。それを、文章化することで、組織メンバーに使ってもらえるように開示する。従業員の成熟度に応じて、ティーチングとコーチングを使い分けてOJTを実施する。

 コンピテンシーは、A4一枚の紙に記述された「OJTこれだけシート」として活用される。もちろん、A4一枚の紙に組織の知恵を全て記述することはできないが、沢山の不可視経営資源の「目次」となり、何を教えるべきか、何を学ぶべきか、目に見えるようになっていないノウハウは何かなどを教えてくれる。コンピテンシーをOJTツールとして活用することは、組織の中に眠る目に見えないノウハウ(無形資産)を探すための地図を持つに等しい。

(3)目標管理の推進と支援

 OJTこそ能力開発の基本であるが、今日ではより業績・成果に関連の深い目標管理を中心としたOJTがさらに重要である。

 目標を達成するためにどのような能力が必要なのか?そしてその能力が身につくように教育するためには何を重点的にOJTしてゆけばよいのか?こうした視点からOJTを進めることが今求められている。メニューどおりの教育をこなすだけではなく、むしろ今目の前にいる部下の能力の開発された度合いとその目標の難易度、そして目標達成に関係する様々な環境要因を個別に把握し、今まさに必要な教育を施すことこそ業績・成果につながるOJTである。

 目標達成への支援もOJTの一環である。例えば目標達成の方法に悩んでいる部下にアドバイスを与える事は正に効果的なOJTに他ならないのである。

 さらに、チーム目標管理という考え方で目標管理を展開することは、組織的な協働の体験学習である。他人と協働するとはどういうことなのか?自分の担当領域を超えてアドバイスし合うとはどういうことなのか?そういったコラボレーションを上手に行うノウハウを体験的に学ぶことができる。

(4)集合教育(OffJT)

 集合教育はOff the Job Trainingとも呼ばれ、日頃の職場や日常業務を離れ、てある特定のテーマに沿って行われる教育訓練である。

 集合教育のメリットは体系的な知識や技能の教育訓練を、多数の対象者に対して同時に実施できる点である。したがって、関係する従業員のグループの能力をある一定のレベルまで同時に向上させることが出来るため、集団的な能力の向上に効果がある。例えば、新任の管理者を一堂に集めて、管理者としての基礎知識を教育する場合には最適な方法である。また、特定の対象者に対し焦点を絞った内容の教育を実施すれば、専門的な知識のレベルアップにも有効である。

 集合教育のデメリットは仕事から離れて実施するため、ややもすると現実性・具体性に欠け抽象的・観念的な教育になりがちな点である。現実に結びつかない抽象的・観念的な教育になってしまうと、「職場に帰ってきたら2週間くらいで忘れてしまうよ。」といったことになりかねない。さらに、教育を受ける従業員が受動的になりがちで、消極的な意識のまま教育を実施してもなかなか成果があがらないというデメリットもある。また、時間的にもコスト的にも負担が大きい点も考慮しなければならない。

 集合教育には主に次の2種類がある。

(a) 階層別教育

 階層別教育には新入社員教育、中堅社員教育、女子社員リーダー教育、管理者教育、経営者教育などがある。

(b) 職種別教育

 職種別教育には営業マン教育、事務管理教育など仕事の内容に応じて多種多様のプログラムがある。

(5)自己啓発支援

 能力開発を「個」の視点からとらえると様々な教育ニーズがあるのに気づく。職業人として仕事に関係のある分野のみならず、社会人として自らの能力の幅を広げる分野まで様々である。こうした様々な教育ニーズに応えてゆくには集合教育やOJTだけでは難しい。むしろ教育ニーズの持ち主である従業員自身がメニューのなかから好きな教育プログラムを選択し、企業はそれを支援してゆく方向が望ましい。また、教育に対する動機付けの面からも自己啓発は優れており、今後も大きな役割を果してゆくであろう。

 自己啓発支援の具体例としては次のようなものがある。

(a) 情報取得機会の提供

 公開型セミナー教育への参加斡旋や業界誌・書籍の紹介など。

(b) 通信添削講座受講支援

 通信講座を団体割引価格で斡旋したり、企業側が認めたものに限り修了した場合に半額を補助するなどして支援を行う。業務に直接関連するものに関しては半額補助など施策が望まれる。

(c) 公的資格取得支援・奨励

 上述の通信添削講座受講支援とも組み合わせて、資格取得した場合には全額補助を行うなど優遇施策を講じる。また、職務に密着した資格を取得した場合には資格手当を支給するなど賃金処遇に結びつける事例もある。

3. 能力開発の計画立案ステップ

(1)能力開発ニーズの把握

 まず現在の仕事の完遂と戦略目標達成に必要な実践的能力を開発することが第一のニーズとなろう。さらに将来の新事業展開や戦略経営の推進者(改革者)としての能力を開発するニーズも忘れてはならない。現状の能力と「求められる能力/こうあって欲しい能力」とのギャップが能力開発ニーズとなる。

 能力開発ニーズの把握方法には、インタビュー法、アンケート法、観察法などある。また、能力開発ニーズには従業員一人ひとりの個人ニーズもあるが、こちらは自己啓発支援を中心に応えるようにする。

(2)能力開発目標の設定

 何を目標として能力開発を実施するのか明確に設定しなければならない。能力開発ニーズを分析し、求められる能力と現状とのギャップを明確にして、現状では何が不足していて何をどのレベルまで向上させるのかを設定する。

 できるだけ具体的に目標を設定すれば、それが必要なカリキュラムに直結する。今はインターネットの検索機能を使えば、様々な情報にアクセスできるが、それを取捨選択するためには、本質的目的の認識と具体的目標の明確化が必要である。目的・目標を議論せずに、研修メニューの選定からはじめることは、絶対にあってはならない。(目的・目標を議論しないでも、研修メニューが選べてしまうのが情報化時代の恐ろしさでもある。)

(3)能力開発方法の選択

 能力開発ニーズを満たすにはどのような技法が良いか、経費や時間的制約を考慮しながら選択をする。現実的にはOJTを中心に、教育訓練を得意とするコンサルティング会社の研修プログラムのメニューを比較検討することになろう。

(4)能力開発実施後の評価

 最後になるが評価のステップは非常に重要である。今日では能力開発のための費用支出は削減すべき3K費目(交際費、研修費、交通費)の一つなどと言われ、かつてほど無批判に費やされることはなくなったようだが、この評価を疎かにしてはならない。

 能力開発の成果は目に見えず、短期的な成果だけでは正確な評価とも言えないなど難しいものである。しかし、計画時に能力開発目標を適切に設定してあれば評価もまたやり易いはずである。

 能力開発評価の方法には、筆記試験の実施、アンケート調査、観察調査、面接調査、実技・実習評価などの方法がある。

4. 能力開発の技法

 能力開発の技法には様々なものがあるがそれらをねらい別に整理すると次の様に分類できる。

(1)知識・概念の学習に適した技法

 講義法、定型的討議法、自由討議法、プログラム学習法、読書研究法など。

(2)技能の修得に適した技法

 実習、シミュレーター訓練など。

(3)態度・人間性の変容を目指す技法

 センシティビティトレーニング、ロールプレイング、マネジリアルグリッドセミナーなど。

(4)問題解決能力の向上に適した技法

 事例研究法、ビジネスゲーム、プロジェクト法、ケプナー・トリゴー法など。

(5)創造性開発に適した技法

 ブレーンストーミング、KJ法、ゴードン法など。

5.リーダー・管理者に役立つ参考書籍

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