ボルテックスジェネレーター自作!理論と具体例、空力操安エアロスタビライジングフィン
航空機に使われているエアロダイナミックスを、自動車に応用したものが、「空力操安」です。その一つであるボルテックスジェネレーターを試作し愛車の性能を改善してみました。まずは、創意工夫して、自分自身の手で自作し、大変良い結果を得られました。
改善の方向性は、①高効率の追求(燃費向上など)、②操縦安定性の向上(高速道路を安心して走れるなど)、③運転する楽しさを損なわない、というテーマです。一般車向けの改善です。レース用の空力改善、エアロパーツ等とは違います。
燃費の向上は省資源につながり、操縦安定性の向上は交通事故の減少につながる公益性、社会性の高い情報です。このホームページは本来趣味のブログではありませんが、その意味からも特別に掲載しています。
気軽にトライ・アンド・エラーして、実際に上手く行けば高価な市販品を買うなり、見栄えを良くするという方針です。下の写真では①から②、③へと見栄えが改良されています。
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1.「空力操安」とは何か?
「空力操安」とは、航空機に使われているエアロダイナミックスの技術を、自動車に応用し操縦性安定性を高める技術です。
自動車会社各社から、特許も申請されています。
参考情報:ボルテックスジェネレーターによる空気抵抗低減の研究 三菱自動車、テクニカルレビュー、2004年 NO.16。
(1)新型トヨタ86から空力操安が広まった
新型トヨタ86の「走れ、86。特別試乗会」に参加した際に、最後に技術者の方との質疑応答のコーナーがありました。そこで、私は新型トヨタ86に活用されている空力操安の事を質問しようと思ったのですが、車全体からすると瑣末な事柄に思われ、遠慮してしまいました。(その頃はまだアルミテープチューンはほとんど公開されていませんでした。)
(画像の出典:トヨタ自動車WEBサイト、新型トヨタ86のオプションであるエアロスタビライジングフィン、http://toyota.jp/86/accessories/style/)
従来は、サーキット走行をするようなマニア向けにはボルテックスジェネレーターなどが発売されていました。しかし、新型トヨタ86の発表を期に、一般ユーザーへもボルテックスジェネレーターが操縦安定性を高める技術として広められました。トヨタでは「エアロスタビライジングフィン」などと呼んでいます。
ここでご紹介するのは、レース用などではない、一般的な自動車向けのボルテックスジェネレーターの応用例です。(レース用では、ダウンフォースを増やすような活用事例が多いです。車体を下に押しつけるダウンフォースは走行抵抗ともなります。)
(2)ボルテックスジェネレーターの原理
A.ボルテックスジェネレーターとは?
ボルテックスジェネレーターとは意図的に乱流を生じさせる事で空力特性を改善する装置です(Vortex generator、乱流を生成する装置)。
意図的に乱流を生じさせ、境界層剥離を抑えます。それによって空気抵抗を減らす効果があります。
(左:市販の汎用品。中、右が自作のボルテックスジェネレーター例)
B.ボルテックスジェネレーターと自動車のエアロダイナミクス
ボルテックスジェネレーターの原理を、一般的な言葉を使って至極簡単に説明すると、次のようになります。
- 空気には粘りがあるので、ボディに絡みつく。
- 絡みついた空気は、車体後方へ流れるに従って、だんだん速度が低下していく。
- 絡みついた空気は、ルーフ後端や車体の後端ではさらに速度が低下し、ついに力尽きて剥がれ、逆流の「渦」を巻く。
- その逆流渦(逆流し負圧を発生)が車を後ろに引っ張る力(抗力、ドラッグ)となり、効率を悪化させる(逆流渦による「悪さ1」)。燃費も悪くなるし、速度も出ない。
- さらにその逆流渦は車体を横揺れさせる。つまり、高速になればなるほど車体が不安定になる(逆流渦による「悪さ2」)。
- 高速になればなるほど、空気は絡みついて(大きな逆流渦を発生させて)酷い悪さをする(高速道路では大きな問題になる)。
- 源流対策し、逆流渦が発生しないようにしてやれば、素晴らしい高効率化対策、操縦安定性対策になる。
- 空気が逆流渦を発生する場所(剥離点)の直前へ、逆流渦の発生(←空気の剥離)を遅らせる突起物を設置してやれば良い。
- その突起物が「ボルテックスジェネレーター」です。
- ボルテックスジェネレーターは、その直後の空気をあえて乱れさせて(Vortex=乱流を発生させて)、空気を増速させて空気の絡みつきを弱め、剥離する場所を遅らせて、逆流渦を低減します。
赤い三角のボルテックスジェネレーターにより、乱流(赤)が発生して気流が増速する。その結果、青い逆流渦の発生ポイントは遅れ、かつ逆流渦は減少する。
(逆流渦の減少→ドラッグの減少→性能の向上)
(3)ボルテックスジェネレーターの自作例
私が実際に自作したボルテックスジェネレーターの例です。私は特殊な工作技能は持っていませんので、本来別用途の半月型クッションをカッターで切って手軽に自作しました。厚さ1.5cm、高さは2cmから1cm程度にしました。(クッション半月型、400mm×約50mm×26mm。カラーが数色あるので、ちょっと試してみるレベルなら塗装しないでも使えます。)
そして、試行錯誤を容易にするため、両面テープもさほど強力でないものにして、気軽にトライ・アンド・エラーができるように工夫しました。原価は車一台分で、送料込1000円程度です。
そうして、実際に試行錯誤してみて、上手く行けば高価な市販品を買うなり、見栄えを良くするという方針です。
A.参考情報:自作する材料・汎用品など
自作される場合には、次のようなお品が役に立つかもしれません。
- カーボーイ クッション半月型(400mm×約50mm×26mm)数色あり
- カーボーイ 安心クッションL字型90cm大(厚さ18mm)数色あり
- エーモン 静音計画 風切り音低減フィンセット 2642:黒色
- 星光産業 エアロフィンプロテクター2 EW-136(クリア、赤色、黒色あり)高さ9mm
- 星光産業 エアロフィンプロテクター EW-134(クリア、赤色あり)高さ13mm
2.ボルテックスジェネレーターを自作する
(1)セダン型の場合の全体図
(2)自作ボルテックスジェネレーターの例
セダン型の場合は、次のような箇所にボルテックスジェネレーターを設置すると良い結果になると考えます。
①サイドミラー脇(ボディ側)メーカー純正採用あり。
②リアフェンダー後端(もしくはリアランプ脇)メーカー純正採用あり。
③トランク後端(後端より10cm程度離す)
④ルーフ後端(後端より10cm程度離す)メーカーオプション部品採用あり。
⑤ボンネット後部(後端より10cm程度離す)メーカー純正採用あり。
⑥フロントフェンダー脇(タイヤハウスの前)、カナード。
⑦Cピラー脇(特にトランクのあるセダン型、クーペ型に有効)メーカーオプション部品採用あり。。
(3)2ボックス、ワゴン型の場合
2ボックス、ワゴン型の場合には、③トランク後端が無くなります。
(④ルーフ後端に③が統合されます。)
また、2ボックス、ワゴン型の場合にはセダン型に比べて空気抵抗が悪化していますので、②リアフェンダー後端(もしくはリアランプ脇)の数を増やすのも良いかもしれません。(私は実験はしていません。)
(4)スポーツカー、クーペ型の場合
スポーツカー、クーペ型の場合には、セダン型に準じて設置すれば良いと思われます。新型トヨタ86の純正装備およびオプションのエアロスタビライジングフィンなどを参考にされると良いと思います。
サーキット走行をするレベルの場合には、三菱自動車のランサーエボリューションのボルテックスジェネレーターなども参考にされると良いと思います。(ルーフ後端に多数のボルテックスジェネレーターを設置し、リアスポイラーと連携してダウンフォースを高める目的が強いものです。)
3.高速道路をテストドライブして効果を確認する
複数の箇所にボルテックスジェネレーターを取り付けますので、一ヶ所取り付ける度に、効果が確認できるよう配慮しました。具体的には、一ヶ所ボルテックスジェネレーターを付けたら高速道路を試走し、次のボルテックスジェネレーターを取り付ける場合はパーキングエリアなどへ停車して行うなどしました。
①から⑤まで、順番に取り付け、テスト走行を行いました。
(1)風切り音が低減した
①サイドミラー脇(ボディ側):高速道路で風切り音が減りました。市販品です。
(2)直進性が高まった
高速道路での直進性が高まりました。これは、操縦安定性が高まったという意味があります。
①サイドミラー脇(ボディ側):風切り音が減り、直進性が高まりました(高さ13mm、幅14mm、長さ50mmの市販品)。ボルテックスジェネレーターを取り付ける前からアルミテープチューンをサイドミラー付近に行っていましたが、明らかに直進性が良くなりました。
(3)高効率な車になった(燃費が高まり速度も出る)
高速道路で、後ろから引っ張られるような力が無くなるのが実感できました。これは、高効率な車になった(ドラッグが減り、燃費が高まり速度も出る)という意味です。
②リアフェンダー後端(もしくはリアランプ脇):明らかに軽く走るようになった。(高さ26mm、幅18mm、長さ55mmの自作品。絞り込まれている場所なのではみ出しません。)
③トランク後端(後端より10cm程度離す、以下同じ):びっくりするほど軽く走るようになった。(高さ20mm、幅15mm、長さ50mmの自作品。リアスポイラーの上に設置したので実効的な高さは高めと考えます。)
④ルーフ後端:②+③に加えて、さらに軽く走るようになったが、その変化は少なめだった(事情によりボルテックスジェネレーターの高さが9mmと低いためもある。高さ9mm、幅11mm、長さ50mmの市販品。)。
(4)高速コーナーを曲がる安心感が高まった
高速道路の高速コーナーを曲がる安心感が高まりました。(ハイスピードでの操縦安定性が高まりました。)左右から車体を挟まれるような感覚で、安心感が高まりました。今まで経験したことが無い不思議な安心感でした。
⑤ボンネット後部:(高さ8mm、幅15mm、長さ50mmの自作品。)
ただ、高速コーナーでこの効果を感じたのは、①から⑤までを取り付けた後でしたので、偶然のタイミングだったかもしれません。(①から⑤までの総合的な効果だったと考える方が適切です。)
⑤ボンネット後部の自作ボルテックスジェネレーターに固有の効果としては、走行感覚がよりスムーズに感じられました。(前後方向の空気の流がよくなったイメージです。)
その後、高さ20mm、幅15mm、長さ50mmの自作品ボルテックスジェネレーターに変更し、そのスムーズさを実感しました。
(ボンネットの上のボルテックスジェネレーターは、日産リーフ等の事例が有名です。ちょっとビックリしますけれど、効果的です。)
(5)直進安定性が向上
⑥フロントフェンダー脇(タイヤハウスの前)にカナードを自作し、装着しました。明らかに直進安定性が向上します。(下の写真のものを塗装しています。)下の形状だと、時速60kmくらいから効き始めるため、効きすぎではないかと考えます。(効きすぎは、走行抵抗と同義になります。)もう少し小型にするか、角度を寝せるべきでしょう。
(6)安定しているのに旋回性が良い
以上の自作ボルテックスジェネレーターとアルミテープチューンを取り付けた結果、現在の愛車は「安定しているのに旋回性が良い」という素晴らしい操縦安定性を手に入れました。しかも、効率が良くなっているのです。ドライブする度に惚れ惚れします。欧州の名車アルファロメオや誰からも絶賛される某ドイツ車にも乗ってきましたが、それ以上です。
もちろん、これは基礎設計の良さが最初にあって、それをユーザーのちょっとした改善で実力発揮させられたのでしょう。良い時代になりました。
4.まとめ
現在、『ファスト&スロー』~あなたの意思はどのように決まるか?~2014年、
(1)イノベーションをどのように感じましたか?
航空機に使われているエアロダイナミックスを、自動車に応用すると、たった1000円程度で、貴方の車が高効率(燃費・速度性能が向上)になり、操縦性も良くなります。このような「いかにもオカルト的な」イノベーションを見聞したときに、貴方はどう感じましたでしょうか?
『直感的にウソだと思った、騙されまいと身構えた』のではないでしょうか?それとも、趣味の事だから、ワクワクして下さったでしょうか?ぜひ、その感じ方を思い出してください。
(2)イノベーションは不愉快な情報になる?
そして、「成果主義はダメだ」という主張を聞いたときに、同じようにご不快に感じませんでしたでしょうか?
いつも読んでいる事例集や新聞に書かれていない事をこのホームページで読んだときに、『直感的にウソだと思った、騙されまいと身構え』られませんでしたでしょうか?
ボルテックスジェネレーターやアルミテープチューンに沢山の特許、理論的裏付けがあっても、「オカルトだ」という方は後をたちません。それは、今まで信じてきた常識と違うイノベーションだからです。そこに我々のイノベーションに対する限界があるのかもしれません。
(3)直感と理論は相反する場合もある
さて、我々は日々生きていく上で、直感に頼っています。なぜなら、様々な意思決定をする際に、いちいちその背景にある理論にまで遡り、理屈が合っているかどうか検討している時間が足りないからです。
直感というのは、残念ながら「過去の情報の記憶」です。今日のように社会が複雑化し、変化の規模とスピードが大きく速くなった時代では、その過去の情報にたよる意思決定は、良い結果を生みません。
貴社の人事戦略(人的資源管理)を考える場合には、直感に頼りすぎることなく、新しい理論や理屈をもご考慮くださると、貴社の発展につながると思います。
どうか、このホームページの貴重な情報を、皆様のお幸せの為にお役立てください。
(4)ご注意
あくまでも、趣味の体験を綴ったものです。他の方の車で同じ効果が出るとは限りません。(私の車は、ボディを補強していたり、一般的な車と違う部分もあります。また、ボルテックスジェネレーター試作の前に、自作のアルミテープチューンを実施しています。)
また、安全面については慎重の上にも慎重にと願います。むやみにボルテックスジェネレーターをお勧めしている訳ではありません。(私の場合は、趣味で航空機の技術や自動車のエアロダイナミクスを研究するのを楽しみとして行っていました。そういう素地がありますので、自動車への応用も可能なのだと思います。)
道路交通法等の安全法規、保安基準などを遵守されますように。(例えば、車幅から横方向へ10mmを越えてはみ出す突起物は法令違反になる可能性があります。)
(5)ボルテックスジェネレーターの弱点
ボルテックスジェネレーターは、走行抵抗になります。ただし、それを差し引いても良い効果が得られるため、活用されています。そのトレードオフ的な性格を考える必要があります。
(私が⑥フロントフェンダー脇(タイヤハウスの前)を実施していない理由でもあります。①から⑤までで十分な効果が得られたのではないかと思いましたので、あえて⑥は実施していません。ボディの先端部分なので、走行抵抗が大きいのではないかと配慮したためです。)
また、航空機に使われているエアロダイナミックスを自動車に応用しているため、時速80km以下ではあまり効果は感じられません。一番効果を感じるのは、高速道路を走る場合です。
(6)その他:エアロダイナミクス関連の記事(空力操安、アルミテープチューン)
- イノベーションの心理的葛藤!アルミテープチューンの真実
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