働きがいがあれば、やる気が出る?今日では、それだけでは不十分です。仕事の楽しさが無ければ、やる気が出ない時代になりました。若手社員は個性重視(自分らしさ重視)の文化で育ち、人手不足の就職売り手市場の環境下にあるからです。内発的動機づけ(内発的動機付け)について、リーダー・管理者の皆様に役立つように、簡潔に説明します。会社や組織で働く場合を想定しています(学術的な難しい説明ではありません)。

1.内発的動機づけをもたらす要因

(1)内発的動機づけとは何か

 内発的動機づけとは、自分の心の内側から湧き上がってくる「やる気(意欲)の原動力」によって、やる気を高めようとする事です。自分の心からの願いやニーズと言ってもよいでしょう。

(2)内発的動機づけの3つの主な要素

 仕事のやる気を出すための「内発的動機づけ」をもたらすのは、主に次の3つです。

  • 好きな事を仕事にしたい:対象領域に興味関心がある(ゲームが好きだからゲームクリエーターになりたい等)
  • 働きがい:仕事の意義に価値を感じる(人や社会に貢献したい等)
  • 仕事の楽しさ:愉快な気持ちになってくる仕事(この記事でご説明します)

(3)好きな事を仕事にしたい:現実的には難しい

 「好きなことを仕事にしたい」というのは、誰もが思うことでしょう。しかし、現実的には困難が伴います。「好きな仕事ができる」という事を、やる気の源として沢山の若手社員に分け与えるのは難しいです。なぜなら、現実社会では皆が好きになるような仕事はそれほど沢山はないからです。

 例えば、誰だって、ゲームが好きですし、楽しい娯楽が好きです。しかし、他人やお客様に「面白おかしさ」という付加価値を提供するのは、芸術家並みの才能と努力が必要です。100%不可能ではないにしろ、現実的でもありません。その好きな事を生計を立てられる仕事にできるかというと、なかなか難しいでしょう。私も飛行機が大好きでしたので、本当はパイロットになりたかったのですが、高校で真面目に勉強しだしたら視力が衰えてしまい実現が困難になりました。

 また、会社の仕事は、華やかで派手な仕事ばかりではありません。むしろ、地味な仕事の方が多いでしょう。「経営企画室で企業戦略を立案する仕事がしたい」「社長秘書になって会社の中心で仕事をしてみたい」と思っても、若手社員にはなかなかそのチャンスは訪れません。

 ですから、対象領域に興味関心がある(ゲームが好きだからゲームクリエーターになりたい等)という意味の「好きな仕事をしたい」というニーズを、内発的動機づけの中心に据えるのは不可能に近いのです。

(4)働きがい:大切なやる気の源

 仕事の意義に価値を感じる(人や社会に貢献したい等)という意味です。これは、内発的動機づけの第一のやる気の源です。

 働きがいによる内発的動機づけに関心のある方は、本ホームページの次の記事などもご参照ください。

(5)仕事の楽しさ:新しいやる気の源

 愉快な気持ちになってくる仕事がやる気の源泉になるという意味です。「仕事の楽しさ」などは会社や先輩社員が若手社員に提供すべきやる気の源泉ではないと考える人も多いようです。

 しかし、今まで取り組んでこなかったからこそ、「仕事の楽しさ」を提供することに挑戦する事が、今一番重要なのです。(その方法などは、このブログ記事でご説明します)

2.仕事の楽しさへの期待と誤解

(1)若手社員の7割は「仕事の楽しさ」を求めている

 平成30年度 国民生活に関する世論調査より。加藤による独自調査含む。「どのような仕事が理想的だと思うか」という質問に対し「自分にとって楽しい仕事」と回答した者の割合(複数回答、上位4項目)。

【男女計18~29歳】

  • 平成22年度から平成30年度調査の平均:67.2%
  • 平成14年度調査の平均:57.8%。(加藤が独自に加重平均処理実施す
  • 増加の割合:9.5ポイント(16%)

 この世論調査データに見るように、「自分にとって楽しい仕事」を理想的と考える若手社員は約7割と多数を占めている。また、時系列で比較すると、平成14年度調査に比べ、9.5ポイント(16%)増えている。

【男女合計、年齢合計】比較用データ

  • 平成22年度から平成30年度調査の平均:59.4%。6割。
    (→若手社員層は全年齢層データに比べ、1割程度高い)
  • 平成14年度調査の平均:46.3%。

資料出典:平成30年度 国民生活に関する世論調査

(2)「仕事の楽しさ」プラス「働きがい」=やる気

 世論調査などの客観的データから、今日の若手社員は、「仕事の楽しさ」を求めていることが解ります。したがって、従来からモチベーションの切り札と言われてきた「働きがい」だけでは、やる気が十分には出ません。

 今日では、若手社員にのやる気を引き出すには、「仕事の楽しさ」プラス「働きがい」が必要なのです。

(3)「仕事の楽しさ」を誤解しがち

 「仕事の楽しさ」を「面白おかしい仕事」と解釈してしまうのも早計です。学生時代に過ごしたような面白おかしい事は、そのまま仕事にはなりません。遊びのように面白おかしいのは、確かに「仕事の楽しさ」の一種ですが、遊びと同じ低い次元での楽しさです。

 もっと、高い次元での楽しさがあるはずです。例えば、貴方が大好きな趣味の楽しさを思い出してみてください。ただ、何かを買ったり、何かを消費したりすることが楽しいのでしょうか?

 例えば、美味しいものを食べ歩くのが趣味の方は、単に快楽的な楽しみだけで食べ歩いているのでしょうか?例えば、食の文化的な側面にも興味があるとか、地方の文化を味わうためなど、深い楽しみがあるはずです。仕事も同様です。

3.仕事の楽しさを生む(内発的動機づけ)ポイント

 では、「好きな事を仕事にする」のでもなく、「面白おかしい仕事」でもないなら、「仕事の楽しさ」とはどういう意味なのでしょうか?

(1)デシ教授の「内発的動機づけ」

 ここでは、定評のあるデシ教授の「内発的動機づけ」(仕事が楽しい、自分からやってみようと感じる秘訣)を紹介します。

エドワード・L・デシ(Edward L. Deci)教授によれば、「①自律性」「②有能感」「③関係性」の3つ的欲求が満たされると、楽しさ・やりがいを感じ、自ら積極的に行動しようと動機づけられます(内発的動機づけ)。「①自律性」「②有能感」「③関係性」を簡単に説明すると、次のようになります。

  • 「①自律性」とは、自由に行動したい、自らの行動を自分で選びたいという欲求です。人は、外から強制されるのではなく、自分自身の価値観・考え方に基づいて行動を選びたいのです。
  • 「②有能感」とは、何かを達成することで、周りに良い影響を与えたいという欲求です。①自律性と同時に満たされる必要があります(強制されると②有能感は満たされません)。
  • 「③関係性」とは、他者と深く結びついていたいという欲求です。お互いに思いやる関係、お互いに愛し合う関係を築きたいという欲求です。①自律性と同時に満たされる必要があります(自由に行動できないと③関係性は満たされません)。

参考文献:「人を伸ばす力」エドワード・L・デシ 、リチャード・フラスト (著)桜井茂男(監訳)、新曜社、1999年。

(2)自分と会社、お客様・仲間の3つの関係性

 デシ教授の内発的動機づけを解りやすく図式化すると、次のようになります。(会社や組織で働く場合です)

 デシ理論を、イ.自分とロ.会社、ハ.お客様・仲間の3つの関係性でとらえる事が大切です。

  • 良い仕事をすると、お客様・仲間に喜ばれ、『有難う』の声を聞ける→嬉しい!
  • お客様・仲間の役に立つ実感→「②有能感」を感じられる。
  • お客様・仲間の感謝の気持ちを聞く→「③関係性」を感じられる。
  • この嬉しさをもっと体験したいと、自ら工夫して働きだす→「①自律性」が満ちてくる。自律性自体が楽しい。
  • 「①自律性」「②有能感」「③関係性」が満たされ、仕事の楽しさを体験できる。

4.内発的動機づけはゲームや趣味の楽しさと同じ

(1)良い結果を出すために創意・工夫するのが楽しい

 内発的動機づけは、ゲームや趣味の楽しさと同じです。

 「ゲーム・趣味の楽しさ」は良い結果を出すために創意・工夫するサイクルが楽しいのです。ゲームで意思決定するのは貴方、全て自分で決めます。まさに「①自律性」の喜びです。そして、結果が合理的にフィードバックされきます。

 ゲームが上手くいけば、「プレイヤーとして有能だ」と認められたと同じです。それが「②有能感」の喜びです。

 ソーシャルゲームならば、仲間と協力し合って一緒にプレイするという「③関係性」の喜びまで満たされます。そう考えると、ソーシャルゲームに熱中する方々が多い理由が理解できます。

 シミュレーションゲームでは、試行錯誤が容易にでき、創意・工夫するサイクル(プラスのサイクル)を何度も回せます。それで、現実社会が凝縮されているようで面白い。だから楽しいのです。

(2)シミュレーションゲームをプレイする楽しさと同じ

 「仕事の楽しさ」は、シミュレーションゲームに没頭しているときの楽しさに似ています。つまり、仕事の楽しさと同じものを、誰もが趣味の世界で感じているのかもしれません。

 例えば、日本の戦国時代のシミュレーションゲームをプレイするときには、日本の歴史を詳しく知っていなければ勝てません。また、史実だけでなく有名な歴史小説に書かれているような武将の能力特性、性格なども読み込んで、それがシミュレーションゲームに反映されている可能性を探りながらプレイします。

 例えば、人気の真田家ならば、真田幸隆、昌幸、幸村、信之の真田三代だけでなく、史実とは違っても真田十勇士一人ひとりの強み弱みに気を配ります。こうした努力、創意工夫は「①自律性」の楽しみそのものです。

 真田家は大国ではありませんので資源が溜まるまで耐えに耐えます。そして、歴史上のイベントが起こる頃に、乾坤一擲の旗揚げをします。その際の同盟国は、上杉家がいいか北条家か?歴史小説を好きで読み込んでいますから、悩むのがまた楽しく、決断する瞬間は快感を感じます。まさしく、「①自律性」の楽しみです。

 そして、結果が良ければ、小国真田家が領地を拡大できます。小国ゆえ、勝つための難易度は高いですから、勝てれば「プレイヤーとして特別有能だ」と認められたと同じです。それが「②有能感」の喜びになります。

5.具体的な方法:内発的動機づけの新アプローチ

 内発的動機づけである「仕事の楽しさ」は、社員一人ひとりの心の中のニーズに迫る必要があります。ですから、「具体的に内発的動機づけを行う方法」がなかなか難しかったのです。

 今回、内発的動機づけの具体的な方法を、コンサルティング実務の試行錯誤の中で、見つけ出しました。それを簡潔にご紹介します。

(1)3つの言葉を使う

 デシ理論を、イ.自分とロ.会社、ハ.お客様・仲間の3つの関係性でとらえ、次の3つの言葉を使って対話します。一方的な意見の押し付けではなく、双方向的な意見交換(対話)を行います。話すよりは、聞く(聴く)方に比重を置いてください。

  • 第一の言葉「仕事をしていて嬉しかった体験がありますか?」
  • 第二の言葉「仕事で何か困っていることはありませんか?」
  • 第三の言葉「あなた一人でなく私と一緒に考えましょう」

(2)「対話」をしよう

A.「対話」の定義

 「対話」とは、簡単に言えば、「まず聴こう」「相手をの意見の価値を認めて、率直に意見交換しよう」ということです。当然、双方向のコミュニケーションになります。

 「対話」の定義は、「異なる意見や価値観を持った者たちが、話し合いながら理解を深め、より良いものを生み出す会話」です。

B.「対話」の参考になる記事

 対話について詳しく知りたい場合は、本ホームページ内に記事もありますので参照してください。

若手とのコミュニケーション能力!何を考えているのか解らない?

業績向上につながる対話コミュニケーションの進め方(マネジメント能力の開発5)

(3)若手社員が仕事の楽しさを体験できるよう支援

 若手社員が仕事の楽しさを体験できるよう支援しましょう。これは、ゲームの楽しさを味わえるように支援するのと同じです。

 若手社員は仕事に慣れる前に仕事に幻滅してしまうのです。何年か働くと「仕事の楽しさ」を体験できるチャンスに巡り会えますが若手には辛い状況です。それを助けてあげたい!

 支援の要点は次の通りです。

  • 第一の言葉で仕事の楽しさを話し合い疑似体験してもらう
  • 第二の言葉・第三の言葉で若手社員を支援する

6.効果的な動機づけの方法と事例

 内発的動機づけに一番効果的な「第一の言葉を使った動機づけの方法」を紹介します。第一の言葉で仕事の楽しさを話し合い疑似体験してもらう方法です。

(1)若手社員の心を開かせるポイント

 第一の言葉「仕事をしていて嬉しかった体験がありますか?」は、「仕事のポジティブな体験について話しましょう」という意味です。これは、「相手の人間性・個性を発見、尊重しよう」とする意味も持っています。だからこそ、個性重視世代の若手社員の心を開かせるのです。

 第一の言葉「仕事をしていて嬉しかった体験がありますか?」を使った動機づけ手法のポイントは次の通りです。

  • 「働きがいは何ですか?」では建前しか聞こえません。
  • 本音を聞き出すには、相手の心を開かせる言葉が必要です。詰問調でなく、相手への誠実な関心を示す言葉が良いのです。
  • 例えば、「お客様や仲間が喜ぶのがとても嬉しい!」という本音が「仕事の楽しさ」へつながります。

(2)具体的な話し方のストーリー事例

 まずは簡単な世間話から入りましょうか?気軽な話題は、アイスブレーキングといって相手の気持ちをほぐすために効果があります。「あのW杯のサッカーの試合見ただろ?G選手が先制点を取ったじゃない。味方がパスを出した時にはもうトップスピードだったよね。どうやったらあんな凄いプレーができるんだろうか?」などと、相手の興味がありそうな話題、気持ちをほぐす気軽な話題が良いですね。そうすると、お互いに自然に気安くなってきます。

 さて、本題に入りましょう。「仕事してるとストレスが溜まる事も多いよね。でも、仕事をしていて『嬉しかった』と感じる事もたまにはあるよね。俺はさあ、お客さんが俺が提案したこと覚えいてくれて、その話題を話してくれたりとか、そんな小さな事でも何か嬉しいんだよね。」

 こうして、自分の体験した嬉しさを話すことで、自然に部下や後輩も話してくれるでしょう。最初はカッコイイ体験じゃなくても良いのです。また、最初から人生を左右するような体験を話してしまうと、「何だろう?お説教が始まるのかな?」と引かれてしまいます。

 若手社員(部下や後輩)も、自然の流れで自分の体験を話してくれるでしょう。「先輩、僕の場合はつい先週のことなんですけど、提出する書類に目次をつけて出したんです。そうしたら、『お、これなら解りやすいね。』と言ってくれたんです。ちょっと嬉しかったです。」

 若手社員が話してくれたなら、その話題に関連した貴方の体験を話してください。例えば、「そうか、目次をつけたんだね。ちょっと面倒くさい気がするけど、読みやすいからお客さんは喜んでくれるよね。俺も『プレゼンソフトより目次のあるワープロ文書の方が解りやすくていいね。』って喜ばれたことがあるよ。同じだね。」できれば共通点を見つけて、「同じだね」等と仲間意識を醸成しましょう。

「仕事ってさ、もうちょっと良くなるようにと創意工夫すると楽しくなるよね。君の『仕事で嬉しかった体験』をもっと聞かせてよ。」

7.若手社員を動機づけ活性化するのに役立つ参考書籍

ちょっとズレてる部下ほど戦力になる!日本経済新聞出版社刊、加藤昌男著。最新情報最新刊!(このホームページ上にも紹介記事ページがございます)

 若手社員を戦力化し、職場を活性化する最新のノウハウを解りやすく説明しています。若手社員を戦力化しやる気にさせる方法、内発的動機づけ、仕事の楽しさを味わう方法、組織活性化の方法、コミュニケーションを取る方法などこのページでは紹介しきれない沢山のケースや実践例で説明しています。さらに、具体的方法、具体的プログラムなどお役にたつツール(ソリューション)をまとめました。きっと皆様のお役にたつことと思います。わかりやすく平易な文章で丁寧に書いていますので、「とても読みやすい」「読んでいて面白い」と喜ばれています。

 若手社員は本当は戦力になります!若手が何を考えているか解らないと悩むリーダー・管理者の皆様の為に書きおろしました

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新情報new改良『労政時報』の労務行政研究所様が、拙著のレビューを書いてくださりました(人事・労務の専門情報誌『労政時報』の労務行政研究所が運営するjin-jour(ジンジュール)様からのレビューです)。誠に有り難うございます。