前回のドラッカーの知識労働者論を経て、今回はドラッカーのモチベーション論をご紹介します。そのポイントは①社員を知識労働者としてマネジメントする、②仕事そのものから満足を得る「働きがい」を与える、の2つです。

 ドラッカーのモチベーション論は、今の日本企業にとって大変参考になります。その理由は、今の日本企業の社員は、そのほとんどが知識労働者、テクノロジスト(高度技能者)だからです。

 本章のねらいは、皆様に経営の視点のモチベーション論会社を成長・発展させるモチベーション論)を紹介することです。ドラッカーのモチベーション論も、『超・成果主義』のモチベーション論も、同じように経営の視点から発想した、会社を成長・発展させるモチベーション論です。
会社を成長発展させるモチベーション 結論から言えば、『超・成果主義』のモチベーション戦略は、次のような点がドラッカーのモチベーション論と良く似ています。
成果を創り出すことを重視する。
②特に知識創造の土台となる組織の信頼関係を高めることをねらう(少なくとも成果査定主義で組織の信頼関係を破壊しない)。
本質的な「働きがい」を満たし社員に溌剌と働いてもらえるよう創意工夫を凝らす。

 そして、この2つのモチベーション論が似ている理由は、ドラッカーも『超・成果主義』も経営の視点(マネジメント論)から発想しているからです。

Contents

1.日本企業における知識労働者

 今日の日本企業の社員は、ほとんどが知識労働者に該当します。

 その理由は、肉体労働をともなうテクノロジスト・高度技能者も知識労働者としてマネジメントすべきだからです。工場の肉体労働者であっても、改善活動に参加するようなレベルの社員は、テクノロジスト(高度技能者)です。

 つまり、入社数年を経た社員は、皆テクノロジスト(高度技能者)と考えてもよいでしょう。

(1)サービス業における知識労働者

 サービス業においては、肉体労働的な部分が多い労働者もまた、知識労働者としてマネジメントすべきと考えられます。

(資料出所:『プロフェッショナルの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。P61より。)

(2)日本も「働きがい」モチベーションの時代

 日本においても、すでに「働きがい」がモチベーションの中心になっています。

■企業の行う雇用管理制度と「働きがい」の関係
雇用管理制度と「働きがい」の関係分析表

雇用管理制度と「働きがい」の関係分析表
資料出所:「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査 報告書」平成26 年5月、厚生労働省職業安定局 雇用開発部雇用開発企画課(PDF)を加藤が加工しました。

(3)日本で知識労働者を考える際の注意点

 ただし、注意すべき点もあります。それは、日本では転職がアメリカに較べ一般的ではない点です。日本ではアメリカに比較して、外部労働市場が未発達であったり、社会が転職をマイナスのイメージで捉えがちであったりしています。

 したがって、知識労働者の流動性が高いという特徴については、日本においては配慮が必要です。必要以上に強調しない方が応用が利くと思います。

2.ドラッカー知識労働者のモチベーション論のポイント

 ドラッカーのモチベーション論のポイントは2つあります。今日の日本企業の社員はテクノロジスト(高度技能者)、すなわち①知識労働者としてマネジメントされるべきなのです。その知識労働者のモチベーションには、②仕事そのものから満足を得る「働きがい」が最も重要なのです。
(資料出所:『チェンジ・リーダーの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。P122、123より。)

(1)知識労働者として適切にマネジメントされるべき

A.ボランティアのようにマネジメントしなければならない

“動機付け、とくに知識労働者の動機付けは、ボランティアの動機付けと同じである。周知のように、ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事そのものから満足を得なければならない。”
(資料出所:『明日を支配するもの』1999年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。P23より引用)

B.知識労働者はマネジメントされない!方向づけされるのみ

“上司と彼ら専門家の関係は、かつての上司と部下の関係ではなく、オーケストラの指揮者と楽器演奏者の関係に似ている。知識労働者を部下に持つ上司は、普通、オーケストラの指揮者がチューバを演奏できないのと同じように、部下の仕事を代わりにすることはできない。しかし、知識労働者のほうは、仕事の方向性については上司に頼らなければならない。とりわけ、成果の基準とすべきもの、価値や成果につては上司の判断を仰がなければならない。”
(資料出所:『明日を支配するもの』1999年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。P22、23より引用)

C.仕事はプログラム化できない

“肉体労働では、なすべき仕事はつねに明らかである。しかるに知識労働では、仕事がプログラム化されることはあまりない。”
(資料出所:『明日を支配するもの』1999年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。P171より引用)

D.すべての知識労働者がエグゼクティブ

 知識労働者は「命令に従って行動すればよいというわけにはいかない。」

E.ゲリラ戦では兵士全員がエグゼクティブ

“ベトナムのジャングルにおけるゲリラ戦で「この混乱した状況でどう指揮しているか」と問う。
大尉の答え「話足の仕事は、そうした場合どうしたらよいかをあらかじめ教えておくことだ。実際にどうするかは状況次第だ。その状況は彼らにしか判断できない。責任は私に或る。だが、どうするかを決めるのは、その場にいる者だけだ」”
(資料出所:『プロフェッショナルの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。P69より引用。)

(2)働く人たちとのパートナーシップが必須

“知識労働者自身がパートナーとなって生産性の向上に取り組むことである。(中略)あらゆる知識労働に生産性と成果に対する責任を組み込む必要がある。

肉体労働については、働く人たちとのパートナーシップは最良の方法であるというだけにすぎない。(加藤注:日本企業では、この肉体労働に関する、働く人たちとのパートナーシップは改善活動やQC活動として展開されてきた。)テイラーのように、彼らに対して指示を与えるだけという方法もある。(中略)

だが、知識労働については、働く人たちとのパートナーシップは唯一の方法であって、他の方法はまったく機能しない。”
(資料出所:『プロフェッショナルの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。P62、63より引用。)

(3)仕事そのものから満足を得る「働きがい」

A.挑戦の機会がある

B.共感できる優れた「組織の使命」を持ち、その使命に献身できる

C.より良い仕事のための継続的な訓練が受けられる

D.成果を理解できる

E.敬意を受ける

 

3.『超・成果主義』の働きがいモチベーション戦略

 『超・成果主義』も経営の視点(マネジメント論)から発想したモチベーション戦略を提唱しています。それはドラッカーのモチベーション論と良く似ており、さらに最新の心理学や加藤独自のコンルサルティング経験から、よりお役に立つモチベーション論を当ホームページ内で紹介しています。

(1)「メリット&プライド」の両方が大事

 「メリット&プライド」のバランス・調和をとることが優れたモチベーション戦略です。「メリット&プライド」の調和が高業績・中長期的業績向上(企業発展)と人材育成・人的成長をもたらします。(今日ではいまだメリット軸が主流なため、ホームページの論旨では、プライド軸を目立たせるような表現を使うことが多いですが、両方が重要なのです。)

→「どうすればやる気がでる?モチベーションの秘訣はメリット&プライド」にて紹介しています。
メリット&プライド戦略イメージ図-目的と目標の調和

A.メリット

 メリットとは、外的報酬のメリット施策(金銭的報酬など)です。企業経営の「目標」系列です(目的達成のための手段です)。

B.プライド

 プライドとは、内的報酬のプライド施策(働くことや成長した自分が誇らしく嬉しくなるようなこと。非金銭的報酬)です。企業経営の「目的」系列です。

C.プライド軸:知識労働者の側面

(2)社会貢献マインド・次世代貢献マインド

→「若者の働きがい志向にどう応える?社会貢献マインドとダイバーシティ」にて紹介しています。

 30歳から50歳になると(会社の中核人材の年代になると)、自己実現欲求(自分らしく生きたい)などの他に、「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」を満たしたいという欲求を持ち、それが満たされたときは心の中から喜びが湧き上がります(生涯発達理論より)。

 例えば「自分に与えられた場で、実り豊かな何かをつくる」という欲求であったり、「次世代に優れたもの(システムやモノ、考え方など)を残し伝えたい」「優れた社会を築き、次世代に伝えたい」という欲求です。

 本ホームページでは、「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」を満たしたいという欲求を、解りやすく社会貢献マインド、次世代貢献マインドなどと呼んでいます。
社会貢献マインド・次世代貢献マインドとイノベーション・モチベーション

(3)改善マネジメントと働く人たちとのパートナーシップ

→「もっと簡単に人事改革-改善を始めたい!発想を転換する方法」にて紹介しています。

A.改善マネジメント・TQC

 『超・成果主義』の成果創造主義というのは、まさにドラッカーの言う改善マネジメントです。
マネジメント方法論を変革する


『超・成果主義』会社を良くする総合的チャート図クリックすると見やすく拡大します。2度のクリックで一番見やすくなると思います。

B.働く人たちとのパートナーシップ

 結局、会社全体が良くなる事が、社長にとっても社員にとっても、また社会にとっても一番良いことです。

 マクロ経済で見れば、トリクルダウンが機能しずらい等の議論もあります。しかし、個別企業で見れば、企業業績がよくなれば、賞与も増えて社員も潤うのです。アメリカ企業の労働者の場合は、なかなかこのような働く人たちとのパートナーシップという視点に立つことが出来ないのです。この点をドラッカーは嘆いています

(4)経営理念を展開する組織活性化

→「中堅-中小企業の強みを活かすには?組織活性化-人材育成の方法」にて紹介しています。

A.経営理念を行動レベルに展開する○○ウェイ

 「見える化」から「行動化」へ、経営理念を毎日の行動に連係させることが重要です。
経営理念を行動レベルに展開する○○ウェイ

B.価値型コンピテンシー

 経営理念を社員で共有する○○ウェイは、組織の共有価値観(Value)づくりです。○○ウェイ(バリュー)は、価値型コンピテンシーとも言えます。
経営理念を行動レベルに展開する○○ウェイ

C.社員と組織の自律性を高める○○ウェイ

 「組織の方向性」を明示し、大幅な『権限委譲』を可能にし、社員と組織の自律性を高めます。

組織の方向性を明示し大幅な権限委譲、社員と組織の自律性を高める

【参考書籍】

『明日を支配するもの』1999年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。
『チェンジ・リーダーの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。
『プロフェッショナルの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。