業績向上と人材育成を両立する最新モチベーション理論です。新時代のモチベーションの秘訣を解りやすくご紹介します。「①メリット:目標系」と「②プライド:目的系」の2つの軸のバランス・調和をとり、業績向上と人材育成を両立するモチベーション戦略です。

Contents

1.「メリット&プライド」を簡単に紹介

 現場での「超・成果主義」実践の中から、新しいモチベーション戦略が産声を上げました。それが、「メリット&プライド」のモチベーション戦略です。
メリット&プライド戦略イメージ図31

(1)メリット

 メリットとは、外的報酬のメリット施策(金銭的報酬など)です。企業経営の「目標」系列です(目的達成のための手段です)。

(2)プライド

 プライドとは、内的報酬のプライド施策(働くこと成長した自分が誇らしく嬉しくなるようなこと。非金銭的報酬)です。企業経営の「目的」系列です。

(3)「メリット&プライド」の両方が大事

 「メリット&プライド」のバランス・調和が、高業績・中長期的業績向上(企業発展)と人材育成・人的成長をもたらします。

 上のイメージ図を見ていただくと、高業績・中長期的業績向上(企業発展)と人材育成・人的成長がプライド軸側に集中しているのが見えます。しかし、本質的には「メリット&プライド」の両方が大事なのです。プライド軸だけが重要なのではなく、メリット軸とプライド軸の組み合わせ、バランス・調和が重要なのです。(今日では、メリット軸が主流なため、ホームページの論旨では、プライド軸を目立たせるような表現を使うことが多いですが、両方が重要なのです。)

2.「目的&目標」と「メリット&プライド」のバランス・調和

 目的(プライド)と目標(メリット)の2軸のバランス・調和をとる(統合する)ことで、「目標必達(業績向上)、部下育成、動機付けの両立」が可能になります

 「目的&目標」と「メリット&プライド」のいずれの組合せも密接不可分であり、分離させてしまうと、意味を失いかねません。

 例えば、目的達成につながらない目標は見かけ上の業績に過ぎず、部分最適化・コスト増加要因です。プライドを高めずメリットを貪る行動・仕事は、自分自身(アイデンティティ)を喪失させ、努力の果てに自分自身をバーンアウトさせます。

(1)「メリット&プライド」の調和崩壊が人材・組織を壊している

 「目的&目標」と「メリット&プライド」のバランス・調和が崩れると、次のように人材・組織がスポイルされます。

A.人材・組織がスポイルされる

 目標以外には取り組まない社員、部下や後輩を育成しない社員、やる気が無い社員、表面的なやる気だけで覇気の無い社員、小手先の器用な仕事はできても創造的な仕事ができない社員、他人から良く評価されることを優先する行動パターンを自分自身のマーケティングと称し適応過剰となり自ら個性を失っていく社員、自分の頭で考えられない社員、損得基準でしか行動できない社員、眼の前のことしか考えられない社員。

 チームワークがどんどん悪くなった職場、部分最適化に走り烏合の衆と化した組織…

 この惨状の要因は「目的&目標」と「メリット&プライド」のバランス・調和崩壊にあります。急に日本のビジネスパーソンの資質が劣化したわけではありません。あまりにも「目標系・メリット軸」を強調しすぎた、悪しき成果主義のせいなのです。

B.不況下では目標軸・メリット軸を強調しがち

 不況下にある企業は、組織・社員に対して、目標軸・メリット軸を強調します。そのため、目的軸・プライド軸がひどく疎かになっているのが現状です。

 例えば、「目標管理だけを熱心に行う会社」「仕事をこなす能力だけを高めようとする会社」は、目的軸・プライド軸をひどく疎かにしているケースに相当します。

(2)「メリット&プライド」が調和すれば①業績向上マネジメント②人材育成③動機付けを両立できる

 「メリット&プライド」のバランスを取れば①業績向上マネジメント②人材育成③動機付けを、次のようなステップで両立できます。

  • 「目的&目標」の調和:目的志向マネジメントの強化が、全体最適指向・中長期指向・顧客指向の戦略的行動につながる
  • 「メリット&プライド」の調和:全人的成長を実感する体験が、働きがい・責任感・ダイバーシティ(異なる意見を尊重する対話が創造性につながる)を生む
  • 一人前と思われた現状から「もう一歩!」成長した精鋭社員と組織が優れた成果を生む上昇循環サイクルを加速させる(プライドの獲得は同時にメリットをも得られる。目標達成の積み重ねと目的の達成は相互に強い相関性がある。等)

3.「メリット&プライド」総合的モチベーション戦略

(1)メリット施策:頑張った者が報われる

A.頑張った者が報われるフェアネスと成果『査定』主義は違う

 成果主義(旧来の成果『査定』主義)を擁護する人々は、「頑張った者が報われるフェアネス」という考え方を持ち出します。そして、その考え方自体は決して間違っていません。

 しかし、「頑張った者が報われるフェアネス」というビジョンと、成果『査定』主義がやっていることは違うのです。

B.悪しき成果主義の目が眩むほど強烈な刺激を金銭的報酬

 悪しき成果主義(成果『査定』主義)の場合は、金銭的報酬を唯一最大の動機付け要素としているため、あまりにも刺激が強烈すぎ、ビジネスパーソンの目が眩んでしまうのです。今までの人生で培ってきた前向きな価値観より、快楽を購う事の出来る金銭欲が、我々の心に充満してしまうのです。

C.達成・成長の承認としての金銭的報酬

 「強烈な刺激」でない性格の金銭的報酬とは、例えば達成・成長の承認としての金銭的報酬です。

(2)プライド施策:「成長する喜び、社会の役に立つ喜び」で社員を内面から動機付ける

A.仕事を通して成長する喜び、より優れた自分自身を実現する喜び

 経済的刺激策による動機付けは一時的な効果しかありません。しかし、成長の喜び、自己実現の喜び、社会に役立つ喜び(ジェネラティビティ:次世代性・生殖性欲求を満たすアイデンティティの成熟、人間形成)といった内発的な要因による動機付けは本質的(自ら頑張りたいと思う)であり、かつ長続きします。

B.社員のニーズと会社・組織のニーズを統合する

 社員が仕事を通して「立派な社会人に成長する」ための支援を会社・上司が行うことは、経営のニーズ(良い仕事をして成果をあげて欲しい)と社員のニーズ(仕事を通して成長したい)を統合する人事戦略です。「自らの成長」という非金銭的動機付け要因でありながら、社員の「金銭的・経済的メリット」に直結する、「極めて有意義」な動機付け要因です。社員は様々なニーズを持っていて、一様に対応し難いですが、どのような社員にとっても、「立派な社会人に成長する」ことは、人生を生き抜く力を獲得することに他ならなりません。つまり、全員に共通の切実で本質的なニーズでなのです。

C.私は何のために働くのか?という問いへ啓発

 仕事をする能力・目標達成のために必要な能力を育成するだけではなく、メリット&プライド戦略は社員の全人的成長を促します。「何のために会社が存在するのか?」という問いは、「何のためにこの仕事をするのか?」という問いに連続していきます。そして、その問いは「私は、何のために働くのか?」という問いへと啓発されます。

 メリット&プライド戦略では、概念論ではなく具体的な(社員自身の)体験などから社員を啓発します。道徳の授業のように「働くことは大切なことです」などと教えるのではありません。

 今自分が遂行している仕事が製品・サービスとなり、顧客や社会に役立つという客観的なストーリー(誰にでも解る論理)を、事実をもとに具体的に議論し、お互いに啓発し合って見つめ直します。その対話を通して、「私は、何のために働くのか?」という答を社員自ら自覚できるのです。

4.「仕事=社会を発展させる行動」が全人的成長の喜びを喚起する

(1)働くことは文化の中心になり得る

 「仕事=社会を発展させる行動」は全人的成長の喜びを喚起します(全人的成長の喜びは、アイデンティティが成熟する喜びです)。その喜びは、心の内側からの強い動機付けとなります。

 さらに、動機付けという次元にとどまらず、本当に良い仕事(社会を発展させる仕事)は、人生の目的になり得えます。「何のために人生を生きるのか?」そのような問いは日々の雑事の中に埋もれてしまっているが、決して忘れてはならない問いです。そうした本質的な喜びを味あわせてくれるからこそ、働くことは文化の中心になり得るのです。

(2)「世の中の役に立つものを生み出したい」欲求

 30歳から50歳になると(会社の中核人材の年代になると)、自己実現欲求(自分らしく生きたい)などの他に、「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」を満たしたいという欲求を持ち、それが満たされたときは心の中から喜びが湧き上がります(生涯発達理論より)。
 例えば「自分に与えられた場で、実り豊かな何かをつくる」という欲求であったり、「次世代に優れたもの(システムやモノ、考え方など)を残し伝えたい」「優れた社会を築き、次世代に伝えたい」という欲求です。
 本ホームページでは、「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」を満たしたいという欲求を、解りやすく社会貢献マインド、次世代貢献マインドなどと呼んでいます。

 この「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」を満たしたいという欲求が、会社生活の中では「世の中の役に立つ仕事を成し遂げる、社会の発展に繋がる何かを作り出す」ことが、心の内面からの喜びに繋がります。その喜びを感じることは、すなわち自分自身の成長を「社会との関連性において」実感することでもあります。

(3)マズローの自己実現欲求説を超えて:自分基準から自分+社会基準へ

A.自己実現欲求:自分基準

 われわれは、自分自身が思うさまに生きたい、好きなように生きたい、そしてその先に自分自身らしさが確立するという思い(自己実現欲求)があります。これは、他者との比較というよりは、自分自身の心の中にある「こんな自分になりたいという思い」を基準として判断されます。

B.「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」の欲求:自分+社会基準

 「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」は、マズローの欲求5段階説(自分基準の自己実現欲求が最も高次とする)を超えた理論です。
 自分自身の成長を「社会との関連性において」実感する、いわば自分+社会基準です。「社会性のある強い個」へ成長するというアイデンティティ成熟の喜びです。(このページで詳説しています

 人間は、いつまでも「自分さえよければ、それでよい」というレベルではありません。文化が発展し野蛮さが陰をひそめ、豊かさを実感する時代、飢えなどの生存欲求が始めから満足されている時代のニーズです。社会の中で生きる我々は独り善がりな状態を何時までも続けることはできません。

 こうした考え方は、公的な統計調査によって裏付けられています(本ホームページにも整理してあります)。また、「トヨタとAppleのイノベーションの秘密」の項にて事例をご紹介しています。
 本ホームページでは「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」を、解りやすく社会貢献マインド、次世代貢献マインドと呼んでいます。

トヨタAppleの成功は社会貢献・次世代貢献マインド

参考:統計データにみる「ジェネラティビティ(次世代性・生殖性)」(①社会貢献マインド、②次世代貢献マインド)

厚生労働省「働きがい」関連調査2014年より

厚生労働省「若者の意識に関する調査」2013年より