目標管理・人事評価制度(人事考課)では「働きがい」は増えないというショッキングな調査結果があります。「そんなバカな…」と驚かれたかもしれません。しかし、その調査結果に会社の発展にとって大変有意義なヒントが隠れていました。それを公的な統計調査データを引用しながらご説明します。

 「働きがい」とは、働いているうちに心の内側から沸き上がってくる喜び。簡単にいえば、内発的動機付けとお考えください。

1. ショッキングな調査結果:目標管理・評価制度では「働きがい」は増えない

(1)会社の目標を達成することが働きがいになるのか?

A.目標達成は私の成長の指標なのか?

 営業マンをしていた頃、「君の目標を達成することが、君の成長そのものなんだ。」と言われたことがあります。
 正直言って「上手い事言うなあ」そういう考え方も出きるなあとは思いましたが、働きがいは増えませんでした。目標必達のストレスも弱まりませんでした。

(2)厚生労働省「働きがい」関連調査結果より

A.厚生労働省調査結果より「目標管理をしても働きがいは増えない」

 厚生労働省職業安定局による「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」H26年5月(PDF)によれば、目標管理制度の実施の有無と、働きがいはほとんど無関係です。同様に、仕事の満足と目標管理制度実施の有無も無関係です。
(目標管理が「実施されている」群と「実施されていない群」との間のポイント差はわずかに7.2ポイント。「実施されている」群:57.8%に対し「実施されていない群」:50.6。要は目標管理を導入しようがしまいが、働きがいは増えも減りもしない。)

 相関性が最下位というのはショッキングな結果です。確かに、目標管理制度の運用は難しいので、導入実施している事実と上手く運用できているかどうかには大きな差があるのですが、最下位となれば言い訳はできません。

 通常の方法で行なう目標管理は動機付けの仕組みというよりは、ノルマ管理の仕組みに近いです。社員の労働をコントロールするための管理ツールとしては今でも有用です。
 ただし、目標管理だけでは働きがいは増えません。(普通の運用方法では、やる気も増えないと言っても良いでしょう。)もちろん、働きがいが増える方法は別項にて紹介する予定です。

「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」における用語説明
  • 「働きやすさ」(働く苦労・障壁が小さい)
  • 「働きがい」(働く価値がある)

(3)働く意味を知りたい

 「働きがい」の向上に効果がある雇用管理制度等を探すため、「実施されている」群と「実施されていない群」との間のポイント差を分析し列挙しました。一言で言えば、ポイント差がある制度を実施することが、働きがいにつながると考えられます。

 「各自に与えられた仕事の意義や重要性についての説明」が順位1位であることは、非常に興味深いです。豊かな日本社会では、沢山のビジネスパーソンが「自分の仕事の意義や重要性を知りたい、働く意味を知りたい。」と考えているのです。

A.企業の行う雇用管理制度と「働きがい」の関係

雇用管理制度と「働きがい」の関係分析表
資料出所:「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査 報告書」平成26 年5月、厚生労働省職業安定局 雇用開発部雇用開発企画課(PDF)を加藤が加工しました。

同報告書中のアンケート調査概要

◆職場の働きやすさ・働きがいに関するアンケート調査(従業員調査)
・調査主体:厚生労働省(調査・集計は、(株)クロスマーケティングに委託)
・調査時期:平成25 年10 月11 日〜平成25 年10 月18 日
・調査対象:従業員規模30〜300 人未満の中小企業で働く18〜59 歳までの常用労働者(勤務先が農林漁業である者、公務員、派遣労働者を除く)10,000 人

(4)「働きがい」の向上に効果がある雇用管理制度

 同調査によれば、「働きがい」の向上に効果がある雇用管理制度等(「実施されている」群と「実施されていない群」との間で20%ポイント以上差がみられた項目)は次の通りです。

【評価処遇・配置】
・ 本人の希望ができるだけ尊重される配置

【人材育成】
・ 自分の希望に応じ、特定のスキルや知識を学べる研修

【業務管理・組織管理、人間関係管理】
・ 各自に与えられた仕事の意義や重要性についての説明
・ 従業員の意見の会社の経営計画への反映
・ 提案制度などによる従業員の意見の吸い上げ
・ 経験が浅い社員に責任ある仕事を任せ裁量権を与える

【福利厚生・安全管理・精神衛生】
・ 職場の安全管理に関する研修

2. 「自分らしさを活かして社会に貢献したい」という若者の社会貢献マインド

(1)若者意識の統計データから

 日本の優れたビジネスパーソンは次世代貢献マインドに気付いています。様々な意識調査の結果が示すように沢山のビジネスパーソンが「社会貢献マインド」や「未来の社会への貢献マインド」を確実に持っています。

(2)社会貢献マインド:8割が持つ

 厚生労働省「若者の意識に関する調査」2013年(PDF)によれば「社会に役立つことをしたい」というニーズが高まっています(若者の80%の意見)。うち37%が自分の職業を通して貢献したいと回答しています。
若者の8割が社会に役立つことをしたい

 また、企業の利潤追求重視は当然としながらも「企業は社会性を同時に追求する必要性がある」という意見が、勤続経験を経るにしたがって70%(20〜24才)から80%(35〜39才)へと増えています(男性の場合、女性は年齢に寄らず高い)。
 つまり、(特に男性の場合は)仕事の経験を重ねるにつれて「儲けるだけではなくて、社会性も必要だ」と考える割合が増えています。大変健全な成長だと考えます。これが「社会貢献マインド」です。

儲けだけでなく社会性も必要と若者の8割

3. 「次世代貢献マインド」に7割が気付く

(1)「日本の未来を良くしようという意欲」

 若者の7割が「日本の未来を良くしようという意欲」をポジティブに持っています。(ネガティブが約1割、どちらともいえないが約2割です。)
 仕事に関しては、30%から35%が日本の未来を良くするために、「仕事や学業をしっかりやって貢献する」と答えています(事務系会社員:30%、技術系会社員:35%)。

若者の7割が日本の未来を良くする意欲を持つ

(2)未来の社会を良くするための「次世代貢献マインド」

 このアンケートの設問にある「日本の未来を良くしようとする意欲」は、「次世代貢献マインド」とも呼ばれます。「次世代貢献マインド」とは、より良い社会を創り次世代へ継承したいという願い(ニーズ)です。この次世代貢献マインドが日本の若者の7割に芽生えているのです。
 「日本の未来を良くしようとする意欲」(次世代貢献マインド)は、偶然このアンケートに登場したわけではなく、次に述べる心理学的な背景があるという点が重要です。

「キーはアイデンティティが成熟する喜び」の頁より
(2)「世の中の役に立つものを生み出したい」欲求
(3)「後輩や後継者を育成したい」という願い

(3)次世代性:Generativity

 次世代貢献マインドは、心理学でいう「次世代性・生殖性」(Generativity,ジェネラティビティ)を解りやすく表現したものです。
 日本の社会も発展し、かつ豊かになりましたから、若者が成長・成熟するにつれて「次世代性・生殖性」(Generativity,ジェネラティビティ)を獲得するようになってきました。

4. コンサルティングの実務経験から

 コンサルティング実務でも社員アンケートなどを実施します。そうすると、若者層に「社会に役立つ仕事がしたい」「誇りを持てる仕事をしたい」という意見が多く見られます。そのデータと総合的満足度のデータの相関性を分析してみると、非常に高い正の相関性があります。

 一方、中堅層以降(40代以降)はその相関性が少しずつ減っていきます。そして、管理職層以上になると、そうした若者の意識を理解しかねるようです。「仕事ってそういうものじゃないんだ(仕事は儲けるためのものだ。若い奴等は甘いんだ!)」という意識で、若者の社会貢献マインドを「企業の論理に合わない」と決めつけているように思えます。

 また、社員同士も同世代の中ではとても仲が良いけれど、世代が違うとコミュニケーションギャップがあるようです。複数の企業でそうした声が良く聞かれます。

まとめ(①社会貢献マインド②次世代貢献マインド

 現代の働く若者たちは、①社会貢献マインド、と②次世代貢献マインド、の2つを持っています。
 特に、若者が仕事の経験を積むにつれて、①社会貢献マインドを持つ割合が増えていく調査データは興味深いです。つまり、現代日本の若者たちは確実に我々大人より優れた次元へと成長・成熟しつつあるということです。

 我々大人は、働く若者たちとどう向き合っていくべきなのでしょうか?このテーマは、「働きがい」を燃料にしてイノベーションや創造性を生み出そうとする場合に大変重要になってきます。これらは「トヨタとAppleのイノベーションの秘密」の項にてご紹介する予定です。