職場を活性化するコミュニケーション能力は2つあります。①傾聴する能力と②対話する能力です。職場を活性化するためには双方向コミュニケーションでなければなりません。「黙って俺に付いてこい」はもはや通用し難いのです。
 今回は、職場のコミュニケーションを活性化する能力を実践的に開発する方法を解説します。

1.活性化型の双方向コミュニケーション能力:傾聴する能力

(1)傾聴重視の双方向コミュニケーション

 職場には仕事の割り振りや指示など、毎日が「話すコミュニケーション」で溢れています。その為に必要な「話す能力」は、管理者である貴方ならばこれまでの仕事の経験を通して十分に備えているはずです。

 したがって、管理者が意識的に学ぶべきなのは、「傾聴する能力」です。なぜなら、「話すこと」に加えて「傾聴すること」で、上司と部下の双方向コミュニケーションが実現でき、職場内のコミュニケーションが活性化するからです。

(2)より良い「傾聴」をするための技法

 相手の言うことに積極的に耳を傾ける傾聴技法には、次のようなものがあります。

A.判断フィルターを外して聴く

 相手の言うことを虚心坦懐に聴く、これほど難しい事もありません。我々はある種の判断を相手の言葉を聴くと同時にしています。これが、マイナスに作用すると次のようなフィルターになります。そのフィルターを意識的に外す努力が必要です。

 ①反射(相手の話をほとんど聞かない。上の空、拒絶。)②選択(相手の話を、自分の考えと一致している部分、理解しやすい部分だけを聞く。)③湾曲(相手の話を、自分に都合の良いように解釈する。)

B.批判をしないで聴く

 相手の話に対する批判は控え、相手が話したい事柄をまず「素直に聞く」ことに意識を集中します。相手の話が自分の考えと違う事もあるでしょう。しかし、そこをぐっと我慢して、まず「素直に聞く」ことに集中してください。

C.あいづちを打つちながら聴く

 あいづちは、聴き手から話し手への「貴方の話を傾聴していますよ」というメッセージです。次のようなあいづちを打ちながら聴くのが効果的です。

 ①「うん」(同意共感を示す)「うんうん」(楽しい話題にテンポ良く)②「うーん」(深刻な話への同情心、落ち着いて聞いてあげたい場合)③「それは素晴らしいね」「それは楽しいですね」(承認)④「それから?」「それで?」「その後どうなったの?」(続きを促す)。

D.沈黙することで傾聴する

 適切なタイミングで貴方が沈黙することで、より良い傾聴ができるようになります。傾聴に繋がる沈黙は次の2種類です。

 ①相手が話し出すまで待つ沈黙(相手の思考を乱さない)②相手が話し終えるまで待つ沈黙(相手の話や思考を遮らない)。

(3)相手に話を促すフィードバック技法

 フィードバックとは、聴き手が感じたことを伝えたり、話し手の話を別の言い回しで相手に返すことです。話し手の話に適切なフィードバックを行うことで、話し手は考えをより深めたり、新たなことに気付く事ができ、話が進展し双方向コミュニケーションが活性化します。

A.相手の感じた言葉を繰り返す

 相手が感じた言葉、「心情を表現する言葉」を、そのまま相手に繰り返すことで、相手はそのことについて、追加で話したくなります。例えば、次のように会話します。

 ①部下:最近、仕事がすごく楽しいんですよ。②管理者:そうですか、仕事がすごく楽しいんですね。③部下:ええ、そうなんです。たとえば…

B.相手の話をまとめる

 相手の話が長くなり、とりとめがなくなったりする場合、聴き手が相手の話をまとめます。そのメリットは次の2つです。

 ①聴き手が、相手の言いたいことを正しく理解したかどうか確認できる。②相手が、聴き手のまとめにより、自分自身の考えを冷静に整理できる。

C.穏便なマイナス情報フィードバックのテクニック

 マイナス情報のフィードバックをする場合には、評価的・批判的なニュアンスを少しでも少なくするために、「私(聴き手)はこう感じました」とフィードバックを行います。評価や批判が目的ではなく、あくまでも、相手に新たな気付きを促すし、双方向コミュニケーションを活性化するために、マイナス情報をフィードバックします。例えば、次のように話します。

 ①これは、私の個人的な意見だけれど…②主観的な意見だから参考程度に聞いて欲しいんだけれど…

2.問題解決型の双方向コミュニケーション能力:対話する能力

 実務に役立つより高度な双方向コミュニケーションがあります。それが、「対話」による双方向コミュニケーションです。以下にポイントを概説し、詳細は次号にて解説します。

(1)「対話」とは何か

 「対話」とは、一言で言えば「管理者と部下などが、お互いの意見を建設的に率直に出し合って、物事を改善するコミュニケーション技法」です。言葉を換えれば「問題解決型の双方向コミュニケーション」です。

 上述の傾聴技法やフィードバック技法と似ているのですが、より良い成果をあげる為に、より優れた仕事のやり方や物事を「改善する」(より良いものを作り出す)という創造的なコミュニケーションである点が特徴です。

 コーチングのように「答は部下の中にあり」とし、上手に質問してあげよう(上司の質問力が成否を決める)と部下の中の潜在的答えに固執することはありません。

 「対話」は上司と部下達で一緒になって考え、新しく作り出す「職場メンバーによる改善」に指向する双方向コミュニケーションです。

(2)「対話」コミュニケーションのポイント

A.自分の考えを主張する

 まず、自分の「考え」や、なぜそう考えるのかという「背景」を話す。

B.部下達の考えを傾聴する

 次に、自分の意見を言うと同時に、部下達の考え・意見とその背景を「共感しながら」傾聴して、理解に努める。

C.部下達の考え・意見を尊重する

 たとえ自分の考えと違っても部下達の考え・意見を尊重し、「そういう考え方もある」と受け止める。「自分の考えが正しい」(他の人考えは間違っている)という論争型の思考パターンは捨てる。

D.考え・意見の差異の中から新しい考えを作り出す

 お互いの考え・意見の差異の中から、新しい考えを作り出すヒントを見付け出す方向で話し合う。

(3)経営学で展開される「対話」(ダイアローグ)

  経営学で展開される「対話」(ダイアローグ)は、野中郁次郎教授の提唱する考え方「知識創造理論」を背景にしています。「対話」(ダイアローグ:)とは、簡潔に言えば「お互い立場の違う者が、それぞれの視点から様々なアイデアを出し合って前向きな議論を行い、より高度な付加価値や新たな最適解を創造すること。」です。

 昭和の時代の日本企業の発展の要因は、一つにはこの対話によって優れた価値や新しい技術が産み出されたからなのです。

 

参考文献:『上司のための心理学 : 組織と人を生かすカウンセリングマインド』國分康孝著、生産性出版、1995年。

参考資料:『能力・実績を高める「知識創造型OJT」~コンピテンシー・コーチングによるOJT革新の一試論~』寄稿「公務研修」第201号、加藤昌男、(財)公務研修協議会、2007年。