このページは「人材育成-組織活性化重視!人事制度改善-改革テキスト」の第6章 戦略経営を統合する目標管理 がテーマです。

1. 目標管理は戦略実現のための具体的行動プラン

 目標管理(Management by Objectives)は本来マネジメント手法であり、戦略経営の推進に際してその戦略実現のための具体的行動プランを策定し(Plan)、実行し(Do)、考課(評価)し(Check)、次のステップへの対策・改善を行う(Kaizen)システムである。いまや経営計画の実行プランとしても不可欠のマネジメントシステムと言えよう。

 さて、今日では業績・成果重視の人的資源管理システムが求められているが、業績・成果重視の人事考課システムを設計するのであれば、この目標管理の考課を業績考課に直結させるのが一番の近道である。本来経営管理の仕組みである目標管理と人的資源管理の仕組みである人事考課システムの整合性を高める意味でも望ましいスタイルである。

2. 目標管理とは何か

(1)目標とは何か

 目標とは、何を何処までやり遂げるのかを明確に/具体的にしたものである。期の終わりには達成することが期待される成果/アウトプットであり、いわば当該期のゴールラインと言える。

 目標には様々なレベルがあり、全社目標から個人目標まで目標面接制度によりマネジメントの網の目が張り巡らされる。下図に見るように、まず全社目標を達成する手段/方法として、その下位目標としての部門目標が策定される。さらに部門目標を達成する手段/方法として、下位目標の個人目標が設定される。この様に目標を「目標とそれに対する達成手段/方法」の連鎖で次々と具体化していくプロセスを、目標のブレークダウンと呼ぶ。

 その結果、様々なレベルの目標が有機的に結合しあった「目標の体系」が設定される。この「目標の体系」は、全社目標を達成するのに必要な手段を網羅的に、具体的な行動計画のレベルで設定したものと言える。

■図表 目標と経営計画の連係概念図
BSCと目標の体系2w

(2)アウトプット指向のマネジメント手法

 「目標管理」とは、目標を設定し、その目標を達成するべく成果/アウトプットに向って仕事を進めてゆくマネジメントの考え方/手法である。

 従来のように命じられた職務/与えられた仕事をルール/標準通りに遂行するというよりは、目標達成に向って何をするべきかを自分自身で考えながら仕事を進めてゆく点が特徴である。目標/成果に向って諸努力を傾注する事が大切で、従来のように上司やマニュアルの指示どうり仕事をすればよいという発想とは全く異なる。

(3)アウトプット指向のマネジメント手法

 「目標管理」とは、目標を設定し、その目標を達成するべく成果/アウトプットに向って仕事を進めてゆくマネジメントの考え方/手法である。

 従来のように命じられた仕事をルール/標準通りに遂行するというよりは、目標達成に向って何をするべきかを自分自身で考えながら仕事を進めてゆく点が特徴である。目標に向って諸努力を集中する事が大切で、従来のように上司やマニュアルの指示どおり仕事をすればよいという発想とは全く異なる。

(4)働く従業員の自主性尊重のマネジメント手法

 目標管理のもう一つの特徴は、働く従業員の自主性を活かすマネジメントスタイルにある。

 まず、今期の目標を決める際には部下と上司が相談しあって設定する。決して押しつけられたノルマではない。目標はやみくもに与えられるものではなく、日々自らの業務に取り組んでいる部下と、経営戦略や経営計画/部門目標に密接に関わる上司とがお互いのノウハウ/情報や創意工夫を尊重し合い、相談しあって設定するものである。

 目指すべき目標の設定に、部下自らが参画するステップが組み込まれており、自らの創意工夫を生かすチャンスとなる。また、仕事の進め方を計画していく局面では何をするべきか自分自身で考え工夫を加えてゆくので、そこに働く従業員自らの個性を発揮する機会が生まれる。

 進捗管理もできるだけ自主性を尊重し、上司はコントロール機能よりも、むしろ部下を指導し、必要とあれば援助を惜しまず部下を支援して目標達成に導くことが期待される。これが目標管理のもう一つの特徴である、働く者の自主性尊重のマネジメントスタイルである。この自主性を尊重し、参画のステップを多く盛り込むスタイルが従業員の働きがいにつながり、動機付けの効果が高い。

3. なぜ「チーム」の目標管理なのか?

 従来からある目標管理は、戦略目標が個人目標に分解できるという前提で行われてきた。しかし、実際に運営してみると営業部門のように個人目標を具体的かつ数値的に設定できる職種ばかりではないことに気付いた。

 そして、より本質的には戦略目標は組織横断的なものであり、個人目標レベルに分割し難いという事である。つまり、従業員一人ひとりの行動を直接コントロールする個人目標と、戦略目標が乖離しているという誤謬である。そこに、マネジメントの二重構造が生れ、組織のベクトルが混乱してしまうのである。

 一方、個人業績の査定に固執せず、「より良い成果を生み出すために」というマネジメント指向で発想すれば、チーム単位の目標管理を推進することで、意味のある業績考課指標をチーム目標とすることができる。チーム目標管理により、従業員が取り組む毎日の目標と経営計画が連動できるのである。個人業績査定への妄執は、「従業員の尻を叩けば頑張るだろう」というコントロール型(査定主義)人的資源管理の悪弊に過ぎない。

 チーム目標管理を導入すると、チーム目標の達成度に関しては、チームメンバーは皆同一の考課になる。協働責任を問われるからでもある。「しかし、従業員に差を付けなくて良いのか?」たしかに、従来はそういう考え方が主流であった。それが、個人業績査定への妄執なのである。一端それを忘れることから、成果を創り出せるマネジメントが始まるのである。

 ちなみに、チーム目標管理の達成度考課は皆同一考課だが、メンバー各々の貢献度は異なる。その異なる貢献度をフェアーな処遇につなげるため、コンピテンシー考課制度において、チーム目標管理達成プロセスを考課し加点する。同様に、管理職等が部門を超えた支援を行えばコンピテンシー考課制度において、組織の壁を超えた協働・支援プロセスを加点する。

4. チーム 目標管理のねらい

 チーム目標管理のねらいには次のようなものがある。

(1)マネジメントの高度化

  • 戦略目標/経営計画とチーム目標を有機的に結びつけ、戦略目標/経営計画の達成度を高める
  • チームの目標/課題の明確化により、メリハリのあるマネジメントを実現する
  • 言われたことをするだけでなく、成果を産み出すというアウトプット指向の役割認識を徹底する
  • 日常業務以外に改善/改革を継続的/システム的に推進する

(2)チーム指向による効果的マネジメントの推進

  • チームという単位で、活性化することで様々な職種の従業員の「相乗効果」シナジーパワーを高め高業績につなげる
  • チームという単位で、仕事を効率化できる:仕事は、一部分を改良するより、一連のフローととらえて改善すると大きな成果が上がる
  • チームという単位で、顧客の満足を高められる:顧客の眼から見れば、我社の提供するサービスは一連のフローであり、それを遂行するのは当然「チーム」である
  • チームを意識させ、従業員の「職場の人間関係を重視する」ニーズを満たす

(3)組織の活性化/動機付け

  • 部下と上司の面接(目標設定や達成方法立案の相談)をとおしてコミュニケーションを改善する
  • 組織目標の分担をとおして、経営への参画意識を醸成する
  • 働くものの自主性/創意工夫を尊重し、自己実現の機会を提供する
  • 的確な業績考課の実施をとおして、納得性の高い人事考課を実現する
  • 成果をあげた者、頑張った者がむくわれるフェアーな人事処遇をめざす
  • 挑戦的な組織風土を醸成し、組織を活性化する

5. チーム目標管理の手法

(1)チーム目標管理のステップ

 チーム目標は、全社もしくは事業部毎に策定されたによる戦略目標・部門目標に基づき、次のようなステップで策定する。

(a)部門の経営機能の確認

 各部門の経営機能・役割を確認する。(我が部門は何を為すべきかを確認する。)

(b)部門の課題抽出

 自部門の経営機能・責任範囲の現状分析を行い、(例えば、バランスト・スコアカードの4つの視点に注目して)問題点を整理し、課題を抽出する。その課題が、部門目標の候補になる。部門の階層は、「部」単位で展開を終えるのではなく、むしろ部の課題・目標をさらに展開し、「課」単位で課題抽出を行う方が適切である。(課をチームとするのが適切である。)

(c)チームメンバーの対話によるチーム目標設定

 チームメンバー同士(部下達と上司)で今期のチーム目標を相談して決める。お互いにチーム内の状況を良く理解しつつ、部門目標達成のために何をすべきかを中心に策定する。その際、戦略目標との関連を重視する。

 大切なポイントは、目標と経営計画の連係概念図にみるように、それぞれの目標が有機的に連係しあって部門目標を達成し得る体系に調整されなければならない点である。このレベルまでは「事後的指標」が中心となる。

(d)目標の達成水準の設定

 どの水準までやり遂げるのか、明確に具体的に設定する。

(e)部門内調整

 各チームのチーム目標が設定されたならば、部門内の調整を行う。

■図表 戦略目標のチーム目標への展開
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(2)チーム目標達成方法の検討

 実は、このステップが大変重要である。上述のチーム目標までは、戦略目標から論理的に展開することで比較的策定しやすい。(戦略スタッフも支援がしやすい。)しかし、そのチーム目標を如何に達成するか?その方法を検討するのはチームの実力を問われることになる。

 チーム目標達成方法の各メンバー各々の役割分担を決めるが、「これは誰の目標」と明確に分割はしない。「これはチーム目標だが、Aさんが中心になって進める。他のメンバーは必要に応じて支援する。結果は、協働責任。」と柔軟に役割を分担する。その理由は、お互いに支援し合う柔軟な体制を築く為である。

 もし、従来のように個人目標にまで明確に分割していくと、大きな弊害が起こる。一端分割されたチーム目標達成方法が個人目標として、チームメンバーの行動を規制し始める。分割された「個人目標」以外には関心が無くなる。なぜならば、分割された「個人目標」の達成度こそが、メンバー個人の処遇を高めるからである。つまり、環境の変化に対応し、戦略的に行動しようとする意図や、チームメンバーを支援しようという意思を失わせるのである。これでは、戦略経営の実践とはいえない。

 チーム目標達成方法を柔軟な分担状態にマネジメントすることは、次の様な大きなメリットがある。

(a)期初にチーム目標達成方法を完全に決定できなくても、目標達成行動の進捗に合わせ、目標を取り巻く環境の認識が深まるにつれ、順次目標達成方法を策定できる。要は「走りながら考えられる」のである。

(b)チームメンバーの協働を奨励し、相乗効果によるパフォーマンス向上が見込める。チームの問題解決能力が向上するので、目標達成度が高まる。

(c)コンピテンシーを、目標達成方法のヒントとして活用することで、未知の仕事、計画できない状況への現場対応力を増大させる。コンピテンシーは、「高業績に繋がる行動パターン」という組織ノウハウの体系であるため、それを実行することが良い成果産出に繋がるという「パフォーマンスドライバー」の性格を持っている。

(d)個人目標への過度の執着、全体的成果増大の第二義化、戦略目標達成思考の形骸化を避けられる。個別最適化はある種の怠業である。(上述)

6. チーム目標管理の進め方

(1)目標の数とウエイト

(a)チーム目標の数

 チーム目標の数は戦略上の必要性から設定される。「組織は戦略に従う」との原則から、必要ならばチームメンバーの増員を検討するほど、戦略上の必要性を重視すべきである。チーム目標管理は、人事考課制度ではなく、経営計画と連係するマネジメントシステム(マネジメント指向型人的資源管理システム)である。したがって、柔軟かつダイナミックにチーム目標管理に取り組む為に、従来の人事考課の既成概念を取り払う必要がある。

(b)ウエイト

 各目標は重要度に応じて順位付けとウエイト付けを行う。