創造性やイノベーションを促進する良い方法があります。イノベーションが生まれず困っている会社も多いですが、発想法の次元では解決できません。優れた価値・知識を創造するための新しい「対話型チームワーク」をご紹介いたします。

Contents

 1. 「和して同ぜず」の対話型チームワークで創造性・イノベーション達成

 失われた20年が終わりそうも無く今なお続いている状態を考えるに、今の悪しき成果主義下の日本人の弱点というものを考えざるを得ません。グローバル人材になりきれない日本人という視点からも考えてみましたが、他人の意見を尊重できずにチームワークが可能なのでしょうか?

(1)チームワークには2種類ある

 チームワークには2種類あります。①調和型チームワーク、②対話型チームワークです。
この2種のチームワークを、経営戦略の内容に応じて組合わせる必要があります。顧客満足経営の時代には、調和型チームワークと対話型チームワークの2つともに重要になります。

調和型チームワークと対話型チームワーク

A.対話の定義

 「対話」(ダイアローグ)とは、「お互い立場の違う者が、それぞれの視点から様々なアイデアを出し合う等の前向きな議論をして、より高度な付加価値や新たな最適解を創造すること。」

(2)日米の対話・協働の違い概観

A.個人主義的アメリカ人の対話・協働

 アメリカ人は対話の場において、いろいろな見方を取り込み、異なる視点を探り、議論を進めて立場をはっきりさせ、より良い答えを求めようとする傾向が強いです。
 個人主義とチャレンジ精神はアメリカの創造性・イノベーション、企業家精神を高めています。

 対立を解消するために、直接的で対決的なアプローチを好みます。攻撃的であることは、主導的に行動することを意味します。
(自信に満ち率直である反面、傲慢で批判的で独断的だという印象を持つかもしれません。しかし、実際は対話の場におけるものの見方考え方・価値観の違いです。)
 アメリカ人の断定的な言い方は、必ずしも独断的な意味を持ちません。強い口調で断定的に言うことも、議論の糸口として提示しているのです。

 個人主義がゆき過ぎると、他人に対する関心が薄れます。これは、生涯発達心理学でいうところの「自己陶酔」の状態です。また、競争が過ぎれば、協力を妨げる敵対的状況が生まれます。過剰な個人主義は、総合的な能力を低下させます。

B.集団主義的日本人の対話・協働

 対照的に日本人は、コンセンサスを探り、対立を避けようとします。間接的で非対立的なアプローチを好みます。コミュニケーションでは雰囲気を感じとり相手の気持や場の空気を察することが重要です。

(3)調和型チームワークと対話型チームワーク

A.日本人の得意な:調和型チームワーク

 一般的に、「日本人がチームワークが得意」だと言われているのは、この調和型です。お互いに支援し合うチームワークです。

 効率を追求するキャッチアップ経営の時代であれば、調和型チームワークだけで十分だったかもしれません。また、国内市場が主な業種業態の場合も調和型チームワークが合うのかもしれません。
 調和型チームワークは、集団主義的なものの見方考え方・価値観を背景とし、個人主義的な人(集団と違うものの見方考え方・価値観をする人)を村八分にしかねません。少し前までは、「全社一丸となって」というフレーズが努力の象徴でした。

 著者もNKK(造船重機部門)で働いていた頃に、元アメリカ海軍の工務監督に日本の現場マネジメントをたいそう誉められました。「NKKの工場のマネジメントは、アメリカ海軍と同じだ。大変優れている。朝の打合せで言った内容が、事務室から出て10分後に現場に着いた時にはもう既に全工員に伝わっている。まさに、ネイビーシステムだ。(南洋の島のドックヤードで施工したときは困った)」これぞ一糸乱れぬ日本の調和型チームワークでした。当時はとても誇らしかったものです。

 しかし、産業が発展してモノが溢れ、社会が豊かになり供給サイドの論理が通用しなくなった「顧客満足の時代」には、調和型チームワークだけでは不十分です。

B.今の成果主義下の日本人の苦手な:対話型チームワーク

 対話型チームワークは、「和して同ぜず」の多様性尊重のチームワークです。チームメンバー一人ひとりが持つ個性や良いアイデアをお互いに尊重し合い、シナジー効果でより良いものを創り出せます。

 前提としては、一人ひとりが「自分自身の頭で考えられる」自己が確立している必要があります。さららに、「一人ひとりが違う意見を持っていても良いのだ」という個性尊重の文化を組織が持っている必要があります。

(4)顧客満足の時代には調和型と対話型の2つのチームワークが必要

 顧客満足経営の時代には、お客様に満足してもらえる良いものを適価で提供する必要があります。それを実現するには、調和型チームワークと対話型チームワークの2つともに重要になります。

 例えば、トヨタ自動車のカイゼン活動は、まさに対話型チームワークの実践です。ズバリ言うと、トヨタの強さの一つは、現場レベルで高度に知的な対話型チームワークが行なわれている点です。欧米の企業であれば、よほどレベルの高い人材でないと実践できないほどの対話型チームワークを、生産現場が実践できるというのは大変な強みです。

 そして、カイゼンされた後は、調和型チームワークで効率的に生産を進めます。著者もトヨタの製造ラインを見学した際に、高度な調和型チームワークを拝見しました。それは、感動的な光景でした。ある製造職社員の担当する部品取付けがちょっと遅れたのです。それを察した同じライン内の別の製造職社員が、スルスルっと自分の持場を離れアシストしてあげたのです。極めて自然な流れるような動作で、その遅れた工程の部品を持ってきて手渡したのです。

(5)フロンティア経営の時代には対話型チームワークが重要

 従来のように先進国の企業や産業を真似してきた時代は過ぎ去ろうとしています。日本も先進国と同じ土俵で、新たな顧客・市場や商品・サービスを切り開いていく競争が求められています。それがフロンティア経営の時代です。そこでは革新性や創造性を追求することが必須ですから、対話型チームワークがもっとも重要です。(調和型チームワークが不要という意味ではない)

 フロンティアや革新的などと言うと大げさに聞こえますが、言葉を変えればグローバルな競争に勝ち残ってきた日本企業は、このフロンティア経営を実践していると言えます。例えば、自動車業界はその典型例です。

(6)腹が据わった昔の日本企業はイノベーションの宝庫だった

 たとえば、公益社団法人発明協会の「戦後日本のイノベーション100選」によれば、次のような沢山のイノベーションが生まれています。
出典:公益社団法人発明協会

■高度経済成長期まで

時期(西暦年) 選定イノベーション
1948 魚群探知機
1949 溶接工法ブロック建造方式
1951 フェライト
1952 ファスナー
1953 銑鋼一貫臨海製鉄所
1955 自動式電気炊飯器
1955 トランジスタラジオ
1956 コシヒカリ
1958 回転寿司
1958 公文式教育法
1958 小型(軽)自動車(注:明らかにスバル360
1958 スーパーカブ
1959 ヤマハ音楽教室
1962 リンゴ「ふじ」

スバル360写真の出典:富士重工業株式会社

時期(西暦年) 選定イノベーション
1964 人工皮革
1964 電子式卓上計算機
1965 自脱型コンバインと田植機
1967 カラオケ
1967 自動改札システム
1968 柔構造建築
1968 郵便物自動処理装置
1969 LNGの導入
1969 クオーツ腕時計
1960s ブラウン管テレビ
1960s-1970s 脱硫・脱硝・集じん装置
1972 電界放出型電子顕微鏡
1973 CVCCエンジン
1974 コンビニエンスストア
 その一方で、最近は次のように寂しい状況です。特にバブル崩壊以降の失われた20年が浮き彫りになってきます。(赤い文字がバブル崩壊以降のイノベーション)

■アンケート投票トップ10

時期(西暦年) 選定イノベーション
1950 内視鏡
1958 インスタントラーメン
1963 マンガ・アニメ
1964 新幹線
1970 トヨタ生産方式
1979 ウォークマン®
1980 ウォシュレット®
1983 家庭用ゲーム機・ゲームソフト
1993 発光ダイオード
1997 ハイブリッド車(注:明らかにプリウス
 初代トヨタ・プリウス画像写真の出典:トヨタ自動車株式会社

 「戦後日本のイノベーション100選」事業におけるイノベーションの定義は以下のとおりです。
「経済的な活動であって、その新たな創造によって、歴史的社会的に大きな変革をもたらし、その展開が国際的、或いはその可能性を有する事業。その対象は発明に限らず、ビジネスモデルやプロジェクトを含み、またその発明が外来のものであっても、日本で大きく発展したものも含む。」出典:公益社団法人発明協会

2. 今の日本人の弱みを克服しよう

 かつての(悪しき成果主義の影響が無かった時代の)日本企業は、沢山の創造性発揮やイノベーションを成し遂げてきました。しかし、最近はかつての実績ほどではありません。率直に言えば、創造性発揮やイノベーションは大変少なくなってしまったと言っても過言ではありません。

 日本には良い所が沢山あるけれども、弱みもあります。その弱みをきちんと見つめ、克服しましょう。

(1)失われた20年は成果主義下の表面的顧客指向が原因

 真の顧客志向は、表面的なニーズに応えることや、購買責任者・購買担当者にゴマをする事ではありません。そうすることが成果主義下では短期的業績達成の秘訣と勘違いされているため、次の一手が打てず、失われた20年が続いたのです。

 特に国内市場では、マーケットを支配した企業の供給サイドの論理で商品・サービスを提供してきました。その結果、顧客が「これが欲しい!」「買って良かった!」と喜ぶような商品・サービスが生まれなくなってしまいました。「モノが売れない」のではなく、欲しいモノ(今あるモノよりずっと良いと感じさせるモノ)がないのです。

(2)和して同ぜず(多様性尊重)が創造性のキー

 創造性・イノベーションを実践するには、「和して同ぜず」に『自分と違う意見・価値観』を尊重し、むしろその違いを活用してシナジー効果を得る(多様性の尊重、ダイバーシティ)が効果的です。多様性を尊重することが対話型チームワークを高め、創造性やイノベーションを加速し、顧客創造・市場創造が可能になります(企業の中長期的発展が可能になります)。

(3)今の成果主義下の日本は和して同ぜず(多様性尊重)が大の苦手

 「違う意見、異なる価値観」を受け入れるのは今の日本人にとってもっとも苦手な事です。本来の目指すべき「和」とは「和して同ぜず」であって、他者と同じになれと強制することではなく、補い合うこと(助け合いだけではなくシナジー効果)のはずでした。

A.IBMの世界規模の調査結果から

 これは、IBMが実施した世界規模の調査結果からも明らかになっています。中堅社員対象で、全世界に展開するIBMの支社で大規模なアンケート調査が行なわれたものです。

B.他人の意見尊重は過去の自分自身の否定リスク?

 他人の意見を尊重するということは、自分の意見より良い意見があリ得ると認めることです。それは、過去の自分自身を否定することでもあり、大変恐ろしいことです。通常は、無意識にその恐怖から逃れようと、防衛的に反応してしまいます。自分自身を否定しかねない「自分と違う意見」を憎み、頭から否定する等して防衛するのです。

C.集団のものの見方考え方・価値観にあわせよと言う圧力

 それゆえ、日本人は集団と同じものの見方考え方・価値観になろうとします。そして、もし集団のものの見方考え方・価値観と違うビジネスパーソンが現れより良い方向へ改善・改革しようとしても、大抵は「集団のものの見方考え方・価値観にあわせよと言う圧力」がかかりうまくいきません。

D.多様性尊重が苦手なためグローバル人材になり難い日本人

 ちなみに,多様性に対応できない弱みが日本人がグローバル人材になり難い最大の理由です。英語はスキルの問題に過ぎません。日本人は、外国人、外国企業のものの見方考え方・価値観が日本と違うことに対応するのが大の苦手です。

 経産省のグローバル人材育成調査事業に参画した際にご指導頂いた、グローバル人材の権威である大学教授も、「グローバル人材育成のポイントはものの見方・考え方です。英語力ではありません。(英語力は必須であるが、もっと優先順位が高く難しいのがものの見方考え方です。)」とおっしゃっています。

 知識として、新興国の人々のものの見方考え方・価値観を学ぶことはできても、それを上手に活用することができません。なぜなら、防衛機序が働き、頭から否定したり、無意識に避けたりしてしまうからです。

3. 苦手な和して同ぜず(多様性尊重)を克服するには

 この苦手な「和して同ぜず」(多様性尊重)を克服するには、次のような方向性があります。

(1)自分自身が成長・成熟する

 自己が成熟すると、(アイデンティティが揺らいでいた場合にはアイデンティティが再確立して)他人を自分と同じアイデンティティが確立した人として尊重することができるようになります。アイデンティティが揺らいでいたり、自分が不安であったりすれば、他人を尊重する余裕はありません。

A.成長し成熟することで創造やイノベーションに挑戦できる

 自己の成熟とは、簡単に言えば「自分自身の得になること以外に、他者へ貢献したいと思うようになる」ことです。(心理学用語では「自我の飛躍」などと呼びます。)

 「自分自身の得になること以外に、他者へ貢献したいと思うようになる」からこそ、リスクが大きいことが明らかにもかかわらず、創造やイノベーションに挑めるようになります。
 ビジネス上では二番手戦略がリスクが少なくて良いのです。しかし、皆が二番手戦略を目指しては社会は停滞してしまいます。

B.具体的にどうすれば良いのか?

 では、具体的にどうすれば良いのでしょうか?(別項にてご紹介する予定です