成果主義にしたら、人材育成ができないと困っておられませんか?本当のところ、業績向上と人材育成は両立できるのです。安易な成果主義では難しいかもしれませんが、きちんと考えて対策すれば人材育成が可能になります。

業績向上と人材育成を両立する人事戦略
~会社の成長・発展に貢献する「人材育成のできる成果主義」~
業績向上と人材育成を両立する概念図

1. 日本の強みを活かす「知的チームプレー」による高業績追求

知的チームプレーを戦略実現に向け集中し成果創造
 かつて隆盛を誇った日本的経営は、労働コストの上昇などにより機能不全に陥ったかに見えるが、今日でも優れている部分が沢山ある。その一つは日本の人的資源の強みを活かす「知的チームプレー」による高業績追求であり、それを可能にする「信頼と協働」の企業文化・組織風土である。

 知的チームプレーは、かつてのような感情論優先の疑似家族主義や単なる仕事の助け合いではない。質量共に優れた成果を生み出すための「知的に刺激し合って新しい知恵を創造し、協力し合う」チームプレーである。特に重要なのは、この「対話と協働」の知的チームプレーが、新しい知恵を生み出し、「優れた製品・サービス」を創造できる点である。だからこそ、イノベーションにつながり会社の中長期的発展が可能となる。

2. ポスト成果主義の人事戦略はどうあるべきか

(1)成果『査定』主義から成果『創造』主義へ革新する

 ポスト成果主義の人事戦略は、成果『査定』主義という皮相的なコンセプトを捨て、成果を「創造」し会社を発展させる人事システムをつくるべきである。それが成果『創造』主義人事戦略である。

成果創造主義のスパイラルアップ『超・成果主義』

 成果『創造』主義とは、企業の中長期的発展に貢献することを目的として、「高業績を『創造』するために、自律した個人の『知的チームプレー』を組織目標達成・戦略実現に向け集中する人事戦略」である。

普通の成果主義-成果査定主義のスパイラルダウン

こちらは悪しき成果「査定」主義

(2)成果『創造』主義戦略の3つのポイント

 成果『創造』主義戦略には図1のような3つのポイントがある。

図1 成果『創造』主義戦略の3つのポイントと成果『査定』主義の対比

良い成果主義と悪い成果主義の差異

A.「対話と協働」の知的チームプレーを重視し新しい知恵・価値を創造する

 「対話」とは、異なる視点を持つ社員や違う立場にある社員同士が、率直に建設的な意見交換を行うことである。「対話」を通して、自分一人では気付かなかった新しい視点で物事を捉え直すことが可能になり、新しい知恵・新しい価値を生み出すことができる。
 「協働」により、社員相互に弱みを補い強みをさらに伸す。また、仕事を全体(フロー)として捉え調整・協力することで最適化し、重複する投入コスを削減して、「孤立した個人の成果の総和」以上の高い成果を生み出すことができる。

高業績達成への視点の違い-良い視点-悪い視点

B.戦略実現へ組織力を集中し全体最適化

 まず企業の方向性を明示し、次ぎに組織目標へチーム力を集中して、全体最適化を図る。

(a)「バリュー・○○ウェイ」を作り出し企業の方向性を明示

 経営理念、企業ビジョンから共有すべき価値観(バリュー・○○ウェイ)を作り出し、包括的行動指針として社員の緒力のベクトルを合わせる(図2参照)。GEバリューやトヨタウェイ・花王ウェイなど優れた企業での実践事例が近年増加している。

図2 共有すべき価値観(バリュー・○○ウェイ)と組織の知恵(コンピテンシー)

バリューと連係コンピテンシー事例

(b)組織目標という共通のゴールに集中

 経営戦略の実現につながる組織目標を策定し、それを日々仕事を進める上での共通のゴールとする。例えば、課の目標を課メンバー共通のゴールとし、その組織目標達成に向けチームの力を集中する。

高業績達成へのトータルフロー図

C.組織目標達成へのプロセスの絶えざる改善

(a)行動改善のために組織の知恵(コンピテンシー)を活用する

 コンピテンシーは、「高業績達成につながる行動パターン」と定義されるが、端的に言えば「組織の知恵」である。また、コンピテンシーと呼ばれていなくても職場に受け継がれたノウハウがあれば、それらを文章化することで沢山のメンバーで共有・活用できる「組織の知恵」にする事が可能である。
 前述した共有すべき価値観(バリュー・○○ウェイ)と連携させて、組織の知恵(コンピテンシー)を作成すると、最も効果的である。
 社員一人ひとりの行動改善に、組織の知恵(コンピテンシー)が「高業績達成のためのノウハウ・ヒント」として役立つ。

図3 目標達成の努力過程(協働過程)が最良の人材育成機会
組織的支援があれば、高度な成果に挑戦する過程が、最良の人材育成機会に昇華
(組織的支援がなければ、苛烈なノルマに追われる日々が、人的資源をスポイル)

業績向上と人材育成を両立する概念図

(b)チーム目標管理で組織目標のP・D・C・Kaizenを回す

 目標管理は組織目標達成のためのツールである。単に社員一人ひとりにノルマを分担させる仕組みではない。本来は組織目標を達成するために創意工夫して達成方法を立案し、その手段を組織メンバーで分担してP・D・C・Kaizenのサイクルを回すことがねらいである。

 チーム目標に焦点をあてるので、組織目標達成手段を分担しあっている協働関係が途切れない。組織目標達成に努力中の社員が孤立しないですみ、チームメンバー間・組織間のコミュニケーションが向上し、組織の問題解決能力が高まって組織目標達成が加速する。

 経営戦略と連係できる個人目標が設定できるのであれば、個人目標も同時に推進してもよいが、成果『査定』主義的な弊害のでない範囲に留めることが望ましい。

3. 中堅・中小企業のための「人材育成のできる成果主義」事例

 「人材育成のできる成果主義」とは、図3の「高度な目標達成に挑戦する過程で、社員を組織的に支援すれば、組織目標が達成され業績が向上するだけではなく、同時に自律型人材を育成することができる。」という考え方と、実践のための諸技法の体系である。

 本稿では、中堅・中小企業の強み・特長を活かせる「人材育成のできる成果主義」戦略の実践事例を以下に紹介する。

(1)目標達成を支援する対話型コーチング

目標達成を支援する対話型コーチングチャート図
 「目標達成を支援する対話型コーチング」とは、部下の目標達成プロセスを支援することを通して、部下の成長と組織目標達成を両立させる施策である。
 「目標を達成するためには、今実施している方法をどのように改善すればよいと思いますか?この組織の知恵(コンピテンシー)の中にヒントがありませんか?」といった質問でコーチングすることで、お互いの意見を交換しあって最適解を見付け出すことができる。

 組織の知恵(コンピテンシー)を活用した「非指示的な対話型のビジネス・コーチング」であり、従来のコーチング技法に比べ、①コンピテンシーという具体的ツールを活用し効率的に「対話」ができる、②「対話型」なのであらかじめ正答が解らなくてもお互いに刺激しあい意見を出しあって新しい答を創造できる、の2点が優れている。

(2)ISOを活性化する対話型コーチング

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 「 ISOを活性化する対話型コーチング」は、ISOの優れた特性に対話型コーチングを加えることで、マネジメントのバランスを最適化して、部下の成長と組織目標達成を両立させる施策である。

 「今困っている問題を解決するためには、どうすればよいと思いますか?我社の経営理念、共有価値観(バリュー・○○ウェイ)や組織の知恵(コンピテンシー)の中にヒントがありませんか?」といった質問でコーチングする。

 ISOにおいては、「経営理念→品質方針→品質目標→重点施策→私の役割」のように理路整然と方針管理が行われる。それはISOの優れた強みであるが、そのISOだけでは、計画化し難い目標(予測できない目標、計画できない手順、概念的な目標など)に注意が向かなくなるリスクがある。また、社員がISOの標準遵守の理念に集中するあまり、標準化されていない物事への取り組みやチャンレンジ精神を忘れるリスクもある。

 こうしたリスクを低減し、優れたマネジメントを実践するために、経営理念、共有価値観(バリュー・○○ウェイ)や組織の知恵(コンピテンシー)を用いた「対話」を行うことは、ISOを活性化するために非常に効果的である。

終わりに

 資源の乏しい島国日本で働く我々が繁栄を続けてこられたのは、我々自身が「以和為貴」「和して同ぜず」という精神の下、チームワークを発揮してきたからである。日本の企業の強みや良さを活かして、本当に貴社の発展につながる人事戦略を策定されることを願ってやまない。本稿がその一助になれば幸いである。

以上