『超・成果主義』は野中郁次郎先生の「知識創造理論」に触発されて書きました。また、顧客重視のTQC、改善マネジメント(米国流TQM)にも大きく影響されています。しかし、『超・成果主義』が経営の視点の人事戦略であることを、もっと解りやすく紹介するために、マネジメント界の巨星P.F.ドラッカー氏のマネジメント論と比較しました。
 結論からいうと、ドラッカーのマネジメント論と『超・成果主義』は次の点がとてもよく似ています。
①会社の中長期業績の向上をねらい、イノベーションを重視する(会社を成長・発展させるにはイノベーションが必要)。
②顧客のニーズの把握・発見から出発し、顧客満足を重視する(会社を成長・発展させる原点が顧客満足、マーケティング)。
③人を企業経営の付加価値を生む経営資産として大切にし、その人的生産性向上に創意工夫を凝らす(和して同ぜずの知的チームワーク、働く人のニーズを満たす動機付け等。成果主義の飴と鞭ではない)。
④社会の問題解決に貢献すること(事業により社会へ貢献)が重要な意味を持つ(若い世代のモチベーションに深く関わる。企業経営の根幹)。

 そして、これらは経営の視点で人事戦略を考えるからこそ生まれた特徴なのです。
ドラッカーのマネジメントの役割と『超・成果主義』

 P.F.ドラッカー氏の理論にそって、経営の視点の人事戦略とはどんなものなのか?を解説いたします。

  今年の5月連休はP.F.ドラッカーの著作を何冊か読んで、「経営の視点」を上手に解説できるように努力してみました。その理由は、経営の視点を説明できれば、『超・成果主義』をより解りやすくご紹介することが出来るからです。なぜなら、『超・成果主義』もまた、経営の視点から発想された人事戦略だからです。
(経営の視点は日常的ではない概念領域ですので、馴染みがありません。)

 今回は、次の書籍を参考にさせていただきました。
【参考書籍】
『明日を支配するもの』1999年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。
『チェンジ・リーダーの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。
『プロフェッショナルの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。
『P.F.ドラッカーHBR全論文』ハーバード・ビジネス・レビュー2010年06月号、2010年、ダイヤモンド社。

1.ドラッカー「マネジメント」とは何か?

(1)ドラッカーのマネジメントの定義

 ドラッカーのマネジメントの定義は、簡潔に言えば「組織をして成果を上げさせるための創意工夫(道具、機能、機関)」です。

A.日本語では経営管理

 ドラッカーのマネジメントを、あえて日本語にすれば「経営管理」でしょう。大事なのはより良いもの・より優れた価値を生み出すための創意工夫であるという点です。

つまり、コントロール型の管理ではないということです(ドラッカー言うところの「支配型の管理」ではないということです)。

(2)『超・成果主義』のマネジメントの考え方≒ドラッカーのマネジメントの考え方

 この、ドラッカーのマネジメントの「マネジメントとは、より良いもの・より優れた価値を生み出す(組織をして成果を上げる)ための創意工夫(道具、機能、機関)」という問題意識を、『超・成果主義』では別の表現で描いています。
『超・成果主義』のマネジメントの考え方はドラッカーのマネジメントの考え方

A.成果「査定」主義と成果『創造』主義

 『超・成果主義』では成果「査定」主義と成果『創造』主義の対比を通して「マネジメントとはより良いもの・価値を生み出すための創意工夫」でなければならないと主張しています。
良い成果主義と悪い成果主義の差異

(3)定義=マネジメントの役割

 もう少し詳しく定義する場合は、マネジメントの役割によって定義する方がよく分かります。そのドラッカーの「マネジメントの役割」は次の3つです。

A.組織のミッション(目的)を果たす

①顧客の求める製品・サービスを提供する
②顧客のニーズを満たす(顧客満足)
③利益を得る(顧客満足の結果としての利益)

B.働く人を生かし人的生産性を高める

C.社会の問題解決に貢献する

(4)『超・成果主義』が重視するポイント

 『超・成果主義』の場合は、会社を成長・発展させるというねらいで、ドラッカーのマネジメントの役割と同様なポイントを重視しています。それは、次のような表現になっています。ほぼ同義と考えて良いでしょう。
ドラッカーのマネジメントの役割と『超・成果主義』

A.戦略実現←組織目標の達成重視

B.会社全体の人的パフォーマンス向上

C.社会貢献マインド・次世代貢献マインド

経営の視点から人事を考える必要がある-社長が喜ぶ人事社会貢献マインド・次世代貢献マインドとイノベーション・モチベーション

2.ドラッカーのマネジメントの目的

 ドラッカー理論のマネジメントの目的は「顧客の創造」です。これはドラッカーの有名な言葉ですが、一つの単語の定義を明らかにすればよいのではなく、ドラッカー哲学といってよいほどの広がりを持っています。

 一言で言えば、「顧客の創造」とは①現在の顧客満足(マーケティング)と②未来(中長期)の顧客満足を創り出すイノベーションです。

(1)企業の目的は「顧客の創造」

A.「顧客の創造」は顧客満足と未来の顧客・ニーズ開拓(イノベーション)

 ドラッカーの「顧客の創造」を簡単に解説すれば、次の通りです。

①顧客に満足を提供する(顧客満足・CS、マーケティング
②新しい顧客に満足を提供する(新規顧客開拓のマーケティング)
③顧客の新しいニーズを見つけ出す(イノベーションの一過程)
④顧客のニーズをみたす新しい製品・サービスを創り提供する(イノベーション

B.ミッション(個々の企業の目的)

 具体的にどのような顧客のどのようなニーズに応えていくか、明確にしたものがミッションです。

(2)利益は目的ではなく目標と考える

 ドラッカーは上述の「顧客の創造」の意味だけを考えると、利益を重視していないようにも見えますが違います。ドラッカーはマネジメントの目標の最も重要なものとして財務業績(利益)をあげています(後述)。

3.ドラッカーのマネジメントの機能

 マネジメントの目的を果たすための、マネジメントの機能は次の2点です。(上の「顧客の創造」の内容と連携しています。)

①マーケティング
②イノベーション

4.ドラッカーのマネジメントの目標:成果とは何か?

 ドラッカー理論のマネジメントの目標(ゴール)とは、「成果」です。その成果は次の3点です。ドラッカーは「成果」を中長期的な業績として考えています。
(ドラッカーは利益を軽視しているわけではありません。利益こそ成果の中心です。ドラッカーは「短期利益だけを考えるな」と主張しているのです。)

①財務業績(利益)
②より優れた価値を生み出すこと(優れた製品・サービス)
③人材育成

5.『超・成果主義』=経営の視点≒ドラッカーのマネジメント論の視点

 『超・成果主義』は、ドラッカーのマネジメント論と同様な「経営の視点」から発想した人事戦略です。
『超・成果主義』は経営の視点でありドラッカーのマネジメント論の視点と同じメリット&プライド戦略イメージ図-目的と目標の調和

(1)経営の視点の人事戦略

 『超・成果主義』では、人事管理の目的を「会社の成長・発展(中長期的業績の向上)」と考えています。そのために、業績向上と人材育成を両立する創意工夫を凝らします。
信頼関係を基盤としたチームワークが高業績達成上昇循環

総合的人的生産性向上戦略チャート図

(2)イノベーションを促進する『超・成果主義』

 日本企業の競争環境が、従来のキャッチアップ型競争(何をなすべきか、お手本がある時代)から、フロンティア型競争(何をなすべきか解らない、自ら切り開く時代)へ移行したことから、『超・成果主義』ではイノベーションを促進することを最重視しています。

 『超・成果主義』は野中郁次郎先生の「知識創造理論」を応用しています。さらに社会貢献マインド・次世代貢献マインドという新しい心理学を応用しています(ドラッカーの時代はマズローの自己実現欲求が最上位でした)。したがって、ドラッカー理論よりもイノベーションを促進する機能が優れています。

【参考書籍】

『明日を支配するもの』1999年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。
『チェンジ・リーダーの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。
『プロフェッショナルの条件』2000年、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社。
『P.F.ドラッカーHBR全論文』ハーバード・ビジネス・レビュー2010年06月号、2010年、ダイヤモンド社。