クラウゼヴィッツの戦略論の知恵を借りて、「メリット&プライド」戦略によってどのように業績向上と人材育成を両立するかを解説します。また、Apple社の成功事例から、我々が学ぶべきポイントをご紹介します。そこには、「新しい資本主義」が芽生えているのかもしれません。

■メリット&プライドの概要イメージ図
メリット&プライド戦略イメージ図31

(1)メリット
 メリットとは、外的報酬のメリット施策(金銭的報酬など)です。企業経営の「目標」系列です(目的達成のための手段です)。

(2)プライド
 プライドとは、内的報酬のプライド施策(働くこと成長した自分が誇らしく嬉しくなるようなこと。非金銭的報酬)です。企業経営の「目的」系列です。

(3)「メリット&プライド」の両方が大事
 「メリット&プライド」のバランス・調和が、高業績・中長期的業績向上(企業発展)と人材育成・人的成長をもたらします。

1.コミットメント対象の拡大が全体最適化組織を創る

(1)コミットメントとは何か?

 経営者や管理者が、「私はコミットメントする」と言うとき、その対象が「我が社の目標達成」に偏っていならば、コミットメントは「もっと儲けろ」と同義に堕ちています。

 経営目的へのコミットメント、すなわち「社業を通じて顧客・社会の発展に寄与する」ことに本当に真剣に深く感情移入して取り組むならば、経営行動は変わってきます。

(2)クラウゼヴィッツの戦略論

 クラウゼヴィッツの戦略論をヒントにして、簡単に説明します。「目的はパリ占領、目標はフランス軍の駆逐」という有名なクラウゼヴィッツの言葉があります。従来は、「目的と目標を取り違えるな」などと簡単に言われてきましたが、それは早計にすぎます。

 例えば、目的を達成すればそれで全て良いのか?というとそうではないのです。目的のパリを占領しても、目標であるフランス軍を駆逐しなければ(勢力を弱めて追い払わなければ)直ぐにパリを攻め返されたり、ゲリラ的持久戦で長年悩まされたりするのです。

 つまり、目的と目標は一対で意味をなしています。したがって、目標だけを管理したり(目標管理偏重の経営)、我が社の業績にだけコミットしたのでは「目的と目標の最適達成」ができないのです。

 「社業を通じて顧客・社会の発展に寄与する」ことに本当に真剣に深く感情移入して取り組む社員がどれだけいるでしょうか?この問いかけは極めて重要です。

(3)クラウゼヴィッツの戦略論と「メリット&プライド」戦略

■我が社の目標達成へのコミットメントと顧客の発展へのコミットメントを統合する
(「お客様の喜びを実現する」という共有の価値観への視野の拡大)
クラウゼヴィッツの戦略論とメリット&プライド戦略

2. 次世代に良き社会を伝承する善意こそ創造力の源泉

 Appleにあって他社に無いもの、それは一人の天才ではありません。イノベーションや革新的ビジネスを語るとき、「なぜ日本ではスティーブ・ジョブズ氏を育てられないのか?」などと言われます。しかし、Appleにあって他社に無いもの、それは一人の天才ではないのです。
顧客貢献ベクトル+愛情ベクトル=社会貢献、次世代貢献マインド

(1)Appleにあって他社に無い「魂(心的資産)の競争力」

 我が子に与え、次世代に伝えたいような「より良きもの」を創造・カイゼンするベクトルの合成がリスクを承知で努力する創造力を産みます。すなわち、それがAppleにあって他社に無いもの、「魂(心的資産)の競争力」になるのです。

(2)家族に対する愛情のような「自然な善意」を啓発する

 Appleのスティーブ・ジョブズ氏が「我々は世界を(良き未来へ)変えるために働いている」というと、人は「そんな経営は、大ボラだよ」と思うか、「ジョブズという希代の傑物だから可能だ(普通の人間には無理)」と諦めるでしょう。

 しかし、視点を変えて、自分の家族に対する強い愛情を思い出してください。我が子に与え、次世代に伝えたいような「より良きもの」を創造・カイゼンするベクトルの合成がリスクを承知で努力する創造力を産みます。

(3)知的資産は陳腐化しても心的資産は陳腐化しない

 知的資産(ナレッジ)は時を経ればやがては陳腐化してしまいます。しかし、心的資産、すなわち「お客様の喜びを実現しようとする前向きな心構え」は企業経営の本質的な部分でもあり、かつまたお客様の喜びがビジネスパーソン自身の成長の喜び・自己実現の喜びにつながるため陳腐化しません。

3. 「メリット&プライド」優れた人格や聡明な働き方が優れた組織力を発揮させる

 本ホームページが提案する、働く我々自身の経済的メリットと働くプライドを共に満足させ得る「メリット&プライド」戦略を実践すれば、日本のビジネスパーソンは聡明な存在に成長することができます。もちろん、経済的成功も手に入ります。

 眼の前の短期的なメリットやエゴ、自己保身を捨てて勇気をもって優れた仕事をする事ができるビジネスパーソンは、働く仲間と協働し合って「和して同ぜず」を実践することで優れた組織パフォーマンスを発揮できるはずです。なぜなら、実際に日本の経済発展は、我々の諸先輩方の知的協働が結実した成果だからです。

 したがって、自身の経済的メリットだけを考える場合であっても、「働く仲間が協力し合って良い仕事をして優れた成果をあげ、『お客様に喜ばれ』て、社員も成長し会社も発展する」ように行動することが、功利的な行動よりも優れて合理的な行動だということを理解すべきです。