Q:当社では、市場の順調な伸びに助けられ、発展・成長を遂げてきました。念願であった後継者問題も解決し、事業継承に向けて事業にも力が入る今日この頃です。しかし、一部上場企業に修行に出していた総務課長(後継者)から管理面の弱さを指摘されて口論になってしまいました。今までは大した予算や計画を組まなくても良い決算を実現してきたのですが、大企業にいた総務課長の目からは危なっかしく見えるようです。中小企業と大企業は違うのだと反論したものの、ほんとは私自身が事業計画そのものについて良く解らないのです。できるだけ解りやすくポイントのみで結構ですから教えてください。

A:お二人の意見にはそれぞれ尊重しなければならない点が含まれています。まず、事業計画は中小企業にも必要なものです。そして次に、大企業の事業計画と同じものは作れませんし、作る必要もありません。しかし、その本質・大切さにおいてはあまり変わりはないのです。ですから食べず嫌いにならず、事業計画のアウトラインだけでも理解してみてください。以下に事業計画のエッセンスを抽出して、ごく簡単に・解りやすくご説明させていただきます。(もし、もっと詳しくお知りになりたい方は、事業計画に関する各論を別途用意していますので、ご参照下さい。事業計画策定時の着眼点や進め方の手順、実行に移す際の留意点について、より詳細なものをお読みいただけます。)

1.事業計画とは何か?

事業計画は次のようなものから成り立っています。チャート図もあわせてご覧下さい。

(1)経営理念
(2)経営目標の設定
(3)経営方針の設定
(4)経営戦略の策定
A.製品市場戦略
B.優先戦略課題の決定

(5)推進計画の策定
A.戦略推進計画の策定
B.事業年度推進計画の策定

(6)利益計画の策定

A.個別数値計画
(a)売上計画
(b)費用計画
(c)生産計画
(d)設備投資計画
(e)要員計画
B.利益改善計画
C.目標損益計算書
D.目標貸借対照表
QA11

2.事業計画の内容はどんなものか?

(1)経営理念:経営者の経営にかける思いです
 当社は、社会に対してどのように貢献していくのかを表現します。企業経営に対する基本的考え方を表現します。

(2)経営目標の設定:経営への思いを具体的な姿にしたものです
 将来こうありたいと考えている企業像です。

A.イメージ目標
 将来こんな企業になりたいというイメージを描きます。

B.業績目標
 その時には、具体的にどのような業績をあげているべきなのかを予想し設定します。

(3)経営方針の設定
 経営を進めていく上での重要な判断の基準となる重点方針・ルールを決めます。

(4)経営戦略の策定
 事業計画は、将来の発展を見据えたものであって欲しいものです。単なる行動予定や予算であってはなりません。だからこそ、将来の環境変化を見据え、事前に手を打っておく「経営戦略」という考え方が重要なのです。

A.製品市場戦略
 当社は誰に何を売るのですか?そうすることでずっと長い間発展を続けられるのですか?この問に答えるのが製品市場戦略です。基本的なだけに答えるのは難しい問いかけですね。

(a)誰に:どのような市場に(今の市場ですか?新規市場ですか?)
(b)何を:どのような製品を(今の製品ですか?新製品ですか?)

B.優先戦略課題の決定
 誰に何を売るのかが決まれば、次は何に手をつければよいのか、はっきりさせる必要があります。経営戦略の実現のために具体的に進めて行くテーマを戦略課題と呼びます。そして、その戦略課題の優先順位を考える必要があります。

(5)推進計画の策定

A.戦略推進計画の策定
 製品市場戦略を個別に取り上げどう展開していくか、推進期間はいつからいつまでかを明確にします。

B.事業年度推進計画の策定
 今年度は何に取り組むのか、どのような手順で日程はどのように組むのかを計画します。必要であればプロジェクトチームを組織化します。

(6)利益計画の策定
 まず、いくら儲けるのか決める必要があります。それは、投下資本に対する利益率から判断できるかも知れませんし、いつもイメージに描いている売上利益率を使われることもあるでしょう。 
 大切なことは、まずはじめにいくら儲けるのか決めることです。つまり、「目標利益額=目標売上高-許容できる費用」の式を使って計画を立てることです。目標利益額が決まってから、次ぎに目標売上高と許容費用が決められるのです。

 出来れば次のものを作成したいものです。

A.個別数値計画
 実際の実現可能性を配慮しながら戦略推進計画との相互関連を考えたうえで、売上計画、費用計画、設備投資計画、生産計画、要員計画などについて数値に基づいた計画の策定をします。

B.利益改善計画
 成り行きでは上手く行きませんので、再度目標利益に迫れるよう改善計画を練ります。

C.目標損益計算書
D.目標貸借対照表

3.事業計画はなぜ必要なのか?

(1)計画とは何か?なぜ計画が必要なのか?
 計画とは、次にどんな手を打てばよいのか、あらかじめ考えておくことです。
 そうすれば、その場になってあわてて、一から情報収集をして、その結果時間切れなどという醜態を演じなくてすみます。その間にライバルや市場はずっと遠くへ進んでしまい、もう追いつくことは出来ないでしょう。
 確かに計画した通り物事は進みません。状況も絶えず変わって行きます。しかしたとえ、予想した環境とは違っても、必ずいくつかの代替案が計画の途中で生まれていたはずです。または、必ずいくつかの兆候が計画の途中で感じられていたはずです。その情報を活用すれば不測事態への対応も、全く計画無しに対応するよりはよほど効果的です。

 また、実現するのに長い時間がかかるものは、それが欲しい今その時に行動を起こしたのでは間に合いません。事前にきちんと計画し、行動をスタートさせておかなくてはならないのです。

(2)環境変化に対応するために必要
 企業を取り巻く環境は常にものすごいスピードで変化しています。その変化に対応して企業自らも変わらなければ、衰退して行くばかりです。

 例えば、米国のハリウッド映画界が衰退したのも、テレビという手軽な映像娯楽の出現をライバルとは見ずに、我が道を行きすぎたためと言われています。この場合は競争環境とテレビを好み出した一般消費者の変化(市場の変化)を見逃したために衰退したのであると言われています。

(3)目標が行動を生む
 目的がなければ具体的目標は生まれません。
 具体的目標がなければ、具体的行動は生まれません。
 具体的目標がなければ、何とか目標を達成しようという問題意識も生まれません。

 具体的行動と問題意識がなければ結果は良くなりません。少なくとも、目標無き散漫な企業活動の結果には大した業績は期待できません。

(4)マネジメントサイクルを回す最大の道具として必要
 どんなに立派な経営理念や経営目的を持ち、それを可能にする経営戦略を立案したとしても、それを実現するための具体的な道具(ツール)がなければ実現は不可能です。事業計画こそが、経営のP-D-C-A(マネジメントサイクル)を回す大切な道具なのです。

 事業計画に記された予定がなければ、いま事業の推進が上手くいっているのかどうか、何を使って判断するのですか?業績が低迷していれば、事業年度の途中に何か対策を打つ必要がありますが、現状が良いのか悪いのかを把握する事が出来なければ対策の打ちようがありません。