Q:当社では、事業計画策定の準備を進めています。市販の参考書籍も数冊購入し準備を進めてきました。しかし、事業計画の策定の手順があまりにも複雑なため、全体像がつかめません。事業計画の具体的策定手順を教えてください。

A:事業計画の具体的策定手順について以下にご説明いたします。チャート図を同時にご参照下さい。

1.STEP-1 経営実態の把握

 事業計画策定の基礎分析をする段階です。
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(1)基本経営戦略分析

 まず現状での企業目的・戦略について分析することからはじめます。

A.経営理念・経営目的の分析:企業の社会的存在意義・理由、企業経営のキー・ファクターに対する基本的考え方を分析します

B.基本経営目標の分析:現時点で将来こうありたいと考えている企業像を分析します(イメージ目標と業績目標)

C.基本経営方針の分析:企業の事業領域の基本的な考え方・基本経営目標の実現を図るための運営ポイントとその方針を分析します

D.基本経営戦略の分析:現時点で考えている、将来の事業や市場の構成、それを実現するために必要な戦略課題とその展開の仕方を分析します

(2)経営環境分析

 つぎに、企業が長期的に安定成長するには経営環境への対応が不可欠といえます。このために経営環境についての分析が必要となります。

A.2つの経営環境を分析

(a)マクロ経営環境:一企業の努力では影響を与えられない環境

(b)ミクロ経営環境:一企業の主体的働きかけで影響を与えられる環境

B.経営環境の評価

(a)成長促進要因:企業の成長を促進するような方向の環境変化をリストアップします

(b)成長阻害要因:企業の成長を阻害するような方向の環境変化をリストアップします

(3)企業分析

A.成長過程分析
 成長過程分析は、企業の生成・発展の歴史を知ることによって、企業の理念・事業の変化等を明らかにして経営の「原点」を理解・認識するものです。
 また同時に、当社の発展のキーポイントが何だったのかも把握します。企業の個性・特徴として漠然と把握していたものの背景、蓄積的企業力が生成されてきた過程などを分析し、将来とも受け継ぐべきもの、生かすべきものは何かなどを明らかにし、事業計画設定の礎として活用します。

B.企業能力分析
 企業能力の分析では、企業の経営資源や各機能の強み、弱みを体系的につかみ、取り組むべき経営戦略課題を明らかにします。そこから企業ビジョンに反映すべき課題、長期経営構想に取り入れる課題、中期計画で取り組む課題などが抽出されます。
 経営環境の変化にどう対応するかは大変重要な課題ですが、それにどのように取り組むべきかは、企業の総合的な力、すなわち、人・物・金・情報等の経営資源の質と量、そして(その経営資源を組み合わせた結果としての)営業力・技術開発力・生産力・マネジメント力等の各機能別能力がどれだけあるかによって変わってきます。なぜならば、企業の実力を無視した実現可能性の低い方法をいくら設計しても、それは絵にかいた餅でしかないからです。

(a)経営資源の評価
 人・物・金・情報等の経営資源の強味は何か、弱味はどこかなどを明らかにします。

(b)各機能別能力の評価
 営業力・技術開発力・生産力・マネジメント力等の各機能別能力の強味は何か、弱味はどこかなどを明らかにします。

C.企業業績分析
 企業業績の分析は、過去の業績を分析するとともに将来の予測を行い、企業ビジョン、長期経営構想、事業計画の策定段階のそれぞれにおいて設定する数値目標と現状から予測される数値とのギャップを明らかにし、そのギャップを埋めるものとして、長期経営構想、事業計画の経営戦略の創出してゆく役割を果たします。
 企業業績がどう推移するかの予測は、大変難しいことですが、いくつかの前提をおいて検討します。現状のままの経営構造で推移した場合はどうか、経営環境が有利に変化した場合、経営環境が厳しく変化した場合はどうかなどに分け、楽観的予測、標準的予測、悲観的予測の三パターンについて行うことが望ましいといえます。

(4)戦略課題の整理・体系化

 上述の基本経営戦略分析、経営環境分析、企業能力分析、企業業績分析などに基づいて、企業の経営構造変革に関する課題を整理します。環境変化によって新たに生じるビジネス・チャンスの活用方向、あるいは企業活動にとってマイナスとなる変化に対する克服方向、また企業のストロング・ポイントを生かした競争戦略の検討やウィーク・ポイントの改善など経営革新課題の整理をします。

2.STEP-2 企業戦略の策定

 このステップは、事業計画策定の中核となる部分です。内容はつぎの四項目で構成されています。
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(1)経営理念の設定

 経営理念は、企業の社会的存在意義・理由を表明すると共に、企業経営のキー・ファクターに対する基本的考え方を述べたものです。

(2)基本経営目標の設定

 基本経営目標は、将来こうありたいと考える企業像を定性的・定量的に表明するものです。具体的には企業イメージ目標と企業業績目標に分けて設定します。

(3)基本経営方針の設定

 基本経営方針は、企業の事業領域規定に関する基本的な考え方と基本経営目標の実現を図るための事業別、部門別または経営機能別の運営ポイントとその方針を表明するものです。

(4)基本経営戦略の策定

 経営基本戦略は、基本経営目標および基本経営方針に基づいて、将来の事業の構成、市場の構成をどう設定するかということと、それを実現するために必要な戦略課題とその展開の仕方についての考え方を表明するものです。

A.事業構造戦略

(a)事業構成戦略:どのような事業の組合せをしますか

(b)製品市場戦略:どのような製品・市場分野を事業領域として選択しますか

B.事業展開戦略:各事業をどのように展開して行くのですか

3.STEP-3 戦略計画の策定

 戦略計画の策定のステップは、個別戦略推進計画の策定、個別数値計画の策定、中・長期利益計画の策定で構成されています。
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(1)個別戦略推進計画の策定

 個別戦略推進計画の策定は、「基本経営戦略の策定」のところで明示されている事業展開戦略を個別に取り上げどう展開していくか、推進期間はいつからいつまでかを明確にするものです。

(2)個別数値計画の策定

 個別数値計画の策定は、個別戦略推進計画との相互関連を考えながら売上計画、設備投資計画、生産計画、要員計画などについて数値に基づいて計画の策定をすることです。

(3)利益改善計画の策定

 個別数値計画が現場の管理者から提示されてきます。それに基づいて利益計画をまとめるのですが、現状肯定型の成り行きベースの計画では目標利益の達成を上手く計画することが出来きません。再度目標利益に迫れるように改善を盛り込んだ計画を練り直す必要があります。これが利益改善計画の策定です。

(4)中・長期利益計画の策定

 中・長期利益計画の策定は、個別戦略推進計画と個別数値計画・利益改善計画に基づいて目標損益計算書、目標貸借対照表を作成することになります。

4.STEP-4 事業年度推進計画の策定

 上述の「個別戦略推進計画の策定」段階においては、個別プロジェクトの展開ー推進スケジュールが明確になっていますので、それに基づいて年度で取り上げるべき個別プロジェクトの選定とその推進体制を確立することがこのステップの役割です。
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 年度個別プロジェクトの選定、推進の手順・日程計画の作成、プロジェクト推進組織の編成、推進コントロール・システムの設計が内容となります。事業計画の実践に当たっては、年度事業計画とどう調和させ日常の経営活動のなかでプロジェクト推進するかが大切になります。推進コントロール・システムが適切に設計・運用されるとき効率的なプロジェクト推進が行われます。このことは同時に、プロジェクト組織の編成が適切であることも条件となります。年度推進計画の適切な策定が事業計画の実践上極めて重要であるということができます。