経営理念・ビジョンで活性化型成果主義!経営学から学ぶ人事
経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略の本質は「トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップ」の有効性そのものです。共有すべき価値観(バリュー・○○ウェイ)を評価制度に活用する施策という、人事管理の世界で考えるだけでは不十分です。
こうして、最新の経営学:リーダーシップ論から考えると、従来の成果主義の大きな間違いが際立ってきます。
ポイント:経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略(トランスフォーメーショナル・リーダーシップ)は、ポスト成果主義の切り札として期待されています。しかし、成果主義は正反対の考え方で、経営理念・ビジョン・ミッションで活性化しようとしても、上手く行きません。
そして、改良したつもりの成果主義も、本質的な間違いを改良しきれていないため、困難が生じます。
目次
1.経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略への大きな期待
(1)ポスト成果主義の切り札
今まさに、経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略は、ポスト成果主義の切り札として期待されています。
(2)中堅・中小企業の強み「企業経営への情熱・経営理念」を活かす
中堅・中小企業の強みは、経営者の「企業経営への情熱・経営理念」を活かしやすい事だからでもあります。
(3)共有すべき価値観(バリュー・○○ウェイ)
具体的人事戦略としては、経営理念(ビジョン-ミッション)を人事戦略の中心に据え、共有すべき価値観(バリュー・○○ウェイ)を作り出し、①組織の知恵(コンピテンシー)と連携させたり、②対話型コーチングなどにより「対話と協働」を実践することで、優れた企業文化を築くことができます。
2.経営学:リーダーシップ論から考える「経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略」
人事管理の世界で考えると、経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略は、共有すべき価値観(バリュー・○○ウェイ)を評価制度に活用する施策になります。
しかし、その本質は経営学:リーダーシップ論から考える必要があります。経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略の本質とは、「トランスフォーメーショナル(変革を促す)・リーダーシップ」の有効性に外ならないのです。
(1)トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップ
トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(Transformational leadership) は最も効果的だと評価されるリーダーシップ論です。
トランスフォーメーショナル・リーダーシップは、以下のように統計的な裏付けのある経営学の最新理論なのです。
(2)組織パフォーマンス・部下の満足度を高めるリーダーシップ
トランスフォーメーショナル・リーダーシップは、①組織パフォーマンス②部下の満足度を高めます(正の相関性がある)。
トランスフォーメーショナル・リーダーシップの特徴は次の通りです。(これは、まさに経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略です。)
- 組織のビジョン・ミッションを明確に掲げ、部下の組織に対するロイヤルティーを高める。
- 事業の将来性や魅力を前向きに表現し、部下のモチベーションを高める。
- 常に新しい視点を持ち込み、部下のやる気を刺激する。
- 部下一人ひとりと個別に向き合いその成長を重視する。
注:不確実性が高い(事業環境が安定していない)場合に好適。安定している場合は逆の結果もありえます。しかし、今日では不確実性の低い安定的な環境は、それを探し出すのが難しいほど少ないです。
資料出所:『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』2015年、入山章栄著、日経BPマーケティングを基礎にして、加藤が人事コンサルティング向けに応用しました。
3.経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略の対極が成果主義
さて、経営学:リーダーシップ論から考えると、もう一つ大切なことが解ってきます。
トランスフォーメーショナル・リーダーシップの対極が、トランザクショナル(取引型)リーダーシップなのですが、それこそが悪しき成果主義の特徴なのです。
(1)トランザクショナル(取引型)・リーダーシップ
トランザクショナル(取引型)・リーダーシップは「成果を上げた部下に対して正当な報酬をきちんと与える」ことで、部下を従わせようとします。金銭的報酬だけではなく、昇進や承認(よくやったと評価してあげる)や罰を含みます。しかし、これはアメとムチの施策に過ぎません。
(2)組織パフォーマンスは高めないアメとムチの成果主義
『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』2015年、入山章栄著、日経BPマーケティングによれば、トランザクティブ型リーダーシップの一部である「コンティジェント・リワード」は組織のパフォーマンスを高めません。部下の満足度だけは高まるアンバランスな施策です。
トランザクティブ型リーダーシップの一部は、①部下の満足度を高める(正の相関性がある)。そのトランザクティブ型リーダーシップの一部とは、「コンティジェント・リワード(アメとムチの成果主義)」です。
加藤注:組織パフォーマンスとの正の相関性は見いだせない。要は成果主義は、組織のパフォーマンスを高めない。個人主義の米国においては、フェアな処遇は重要なので、部下の満足度は高まったと考えられる。そして不満のある社員は社外に流出するのが一般的(外部労働市場が成熟)という事情と対になっている社会(皆が受け入れる土壌がある)のため、これらが持続的に機能する。日本の場合は、成果主義の失敗と同様に、不満が社内に蓄積し続けると考えられる。
資料出所:『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』2015年、入山章栄著、日経BPマーケティングを基礎にして、加藤が人事コンサルティング向けに応用しました。
4.成果主義の大きな間違い
(1)成果主義の3つの本質的な間違い
最新の経営学:リーダーシップ論から考えると、従来の成果主義の大きな間違いが際立ってきます。
- 時間軸:短期業績に集中し過ぎ、会社と人材の成長・発展を阻害(チームワーク崩壊など中長期業績への悪影響・デメリットを無視)
- 空間軸:部分最適化で全体のパワーを弱める(チームワークを崩壊させ組織力が低下)
- 方法論軸(時代遅れのマネジメントである成果「査定」主義):アメとムチの動機付け理論に集中し過ぎ(刺激的だが直ぐに怠業に陥る、働きがいを阻害し、チャレンジ・創造性・イノベーションに悪影響大。人間力を伸ばせない。)
(2)最新の経営学:リーダーシップ論の結論
経営理念・ビジョン・ミッションで活性化する人事戦略(トランスフォーメーショナル・リーダーシップ)は、ポスト成果主義の切り札として期待されています。しかし、成果主義は正反対の考え方で、経営理念・ビジョン・ミッションで活性化しようとしても、上手く行きません。
そして、改良したつもりの成果主義も、本質的な間違いを改良しきれていないため、困難が生じます。
5. 超・成果主義:人事管理の枠組みを超え成果『査定』から成果「創造」へ飛躍
(1)成果を「創造」する人事システムへ
従来の成果「査定」主義の何が悪いのかが明確に見えてくれば、問題解決の道は開けます。成果「査定」主義という皮相的なコンセプトを捨て、成果を「創造」し会社を発展させる人事システムをつくればよいのです。 高業績達成につながる成果を「創造」し、戦略を実現して会社を中長期的に発展させるためには、個力を引き出し強い組織をつくる必要があります。一人ひとりの社員を管理し個力を引き出すだけでなく、チームパワーを高め強い組織をつくる必要があるのです。
(2)コンセプトを刷新する「人事革新」が必要
そのためのシステムは、従来の人事管理の枠組みを超えなければつくれません。つまり、従来の人事管理の概念や枠組み、成果「査定」主義のコンセプトを、成果「創造」主義へ刷新する「人事革新」が必要なのです。
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6.リーダー・管理者に役立つ参考書籍
『ちょっとズレてる部下ほど戦力になる!』日本経済新聞出版社刊、加藤昌男著。最新刊!(このホームページ上にも紹介記事ページがございます)
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『労政時報』の労務行政研究所様が、拙著のレビューを書いてくださりました(人事・労務の専門情報誌『労政時報』の労務行政研究所が運営するjin-jour(ジンジュール)様からのレビューです)。誠に有り難うございます。