目標管理でお困りになっていませんか?目標管理は上手くいけば万能のツールになる可能性がありますが、実態は上手くいっていません。ドラッカーの提唱するマネジメントツールを安易に個人業績査定に流用したために、本来の良さも消え、弊害が大きくなっています。(悩みが尽きない目標設定の良い方法については、「目標設定を簡単かつ効果的に行なう方法」の項でご紹介しています。)
 例えば、営業部門以外の部署(事務部門・企画部門や職場チームで成果を出す製造部門等)では個人目標を目標管理で精密に追い求めるのは難しいのではないでしょうか?また、営業部門でも数値目標に集中しすぎて、組織的営業力の維持・カイゼン(人材育成など)が疎かになりがちです。

 また、そこには自律的働き方「逆さまのピラミッド」の問題も内包されています。 サービス業などの場合も「逆さまのピラミッド」です。つまり、お客様が一番上・第一で、お客様一人ひとりのニーズにきめ細かく応えるのが大切なのです。ですから、一人ひとりのお客様と毎日接して仕事をする社員の働き方は自律的なものでなければなりません。上司や組織に命令されてではなく、一人ひとりのお客様の方に顔を向けてその場その場でどう対応すべきか考えながら働くのです。「言われたことだけやる」「目標管理であらかじめ目標設定したことだけやる」という働き方ではお客様の満足は得られません。
 このような場合には、チーム目標管理という方法がお役に立ちます
お客様一人ひとりのニーズにきめ細かく応えるのが大切

1. 個人業績査定ツールとしての目標管理の限界

 目標管理は成果“査定”主義人事制度とむすびついて、個人業績査定ツールとして活用されてきました。

 しかし、ここに目標管理がうまくいかない大きな理由が潜んでいるのです。沢山の企業の方々が「目標管理がうまくいかない」と悩んでいます。誰もが悩んでいるといっても過言ではありません。それはなぜなのか?目標管理がうまくいかない要因は様々あります。拙著『超・成果主義』でも第1章において説明しています。

 「目標管理がうまくいかない」理由をさらに深く追求するために、「信頼関係を基盤とした対話と協働の知的チームワークを発揮し、高業績を達成する」という知識創造の視点から分析します。知識創造の視点から見ると、以下の説明が「目標管理がうまくいかない」理由の一つの解答になろうかと思います。

(1)目標のブレークダウンという常識に潜む矛盾

 重要経営課題や経営目標をじっくり見てみると、そのほとんどが組織横断的なものです。ほとんどの場合、重要経営課題や経営目標は各部には割り振られません。例えば、「経理部の経営目標(もしくは重要経営課題)は○○○」というように明確にはなっていません。

■図6-1経営課題・経営目標と部門目標・個人目標の構造

経営目標と個人目標の構造は非連続的

 ある意味ではこれは当然です。まず経営的視点から見た全社レベルの重要経営課題や経営目標が立てられ、その後その重要経営課題や経営目標を達成するためにどうすべきか各部署の管理者が検討する構造になっているからです。現在の組織の枠組みなどよりも、この重要経営課題や経営目標は優先されます。必要であれば組織変更や管理者の交代までふくめ検討して、重要経営課題や経営目標達成をねらうわけです。決して、各部門に割り振りやすいように重要経営課題や経営目標を策定するわけではないのです。

 従来の常識では、この組織横断的な経営目標を「ブレークダウン」と称して分割し、下位組織に割り当ててゆきます。割当が決まれば、各組織は所属する社員各個人に組織目標を分割し個人目標に細分化し(ブレークダウン)割当てます。こうすれば、経営目標から個人目標までの有機的な連鎖が完成するというわけです。しかし、この「ブレークダウン論」は見直される必要があります。

 まず、このブレークダウンされた目標の体系が、経営目標から個人目標まで有機的に結びついているように見えたとしても、それは「静的な状態」においてのみです。もっとダイナミックな、例えば挑戦的な目標達成に向けて組織メンバーが良い知恵を出し合い協力し合う「協働の連鎖」が保たれているかといえば話は全く別の次元になります。

 個人の努力の総和を超えてさらに高業績を達成するには「チームとしての成果を最大化し、さらには企業組織全体の成果を最大化する。同時に短期的視点ばかりではなく長期的な視点からみた場合の成果を最大化する。」と考えることが必要です。その為には「チームワークを高める」さらには、チームの枠を越えて「組織の壁を越えて協力し合う」ことが重要となります。それは単なる助け合い運動ではなく、お互いに異なる視点の立場から有益な意見を出し合って議論し、最適な案を作り上げ協力して遂行するという「自律した個人同士の知的なチームプレーを業績向上に向け集中すること」なのです。まさに知識創造活動の実践そのものが求められるのです。

 しかし、個人業績査定に固執し分割された個人目標の下では、対話と協働の場が失われてしまいます。お互い自分自身に割当てられた個人目標を達成するためにタコ壺を掘り、努力することが最優先され、相互の協働は機能し難いのです。

■図6-2個人業績査定に固執すると「協働の連鎖」が断ち切られる

 個人業績査定に固執すると「協働の連鎖」が断ち切られる

 そして、一旦個人目標のタコ壺の中に入ってしまった社員は、なかなか外に出てきません。外に出れば、タコ壺の中の個人目標以外の事に取り組まされますから、強情にへばり付いてしまいます。

 著者は様々な企業にお伺いして、社員が皆タコ壺に潜ってしまった状況を見聞しています。社員がタコになってしまうと、もう理屈が通じません・・・ちょっと目端が利いて自意識過剰な社員ほどタコ壺に潜るんですね。「今はタコ壺に潜った方が得だ。」と・・・そしてタコ壺の中から自分の成果を声高にアッピールします。一見すると、これがまた優秀な社員に見えるんですね!でも本当に成果物を見てみると、案外アッピール下手な社員の方が素晴らしいものを作っていたりするんです。それを見極められるかどうか?

 ある商社の事例では、役員層に目利きがいらしたから良かったのです。「評価のシステムがどうあろうと、私の目利きに狂いは無い!」そう断言してくれるほどの見識があれば、安心して働けるのですが、通常は「まあ、ルールだしね、会社で決めた評価ルール。皆で相談して決めたんだから皆が従わなくちゃ。」となりがちです。こうして、日々悪貨は良貨を駆逐してゆくのです・・・

(2)組織目標の個人目標へのブレークダウンの誤謬

A.組織横断的な経営目標を分割する弊害

 分割すべきではない目標を分割してしまった場合はどうなるのでしょうか?本来組織横断的な課題であり、それを便宜上数値化もしくは具体的に細分化し各個人に目標として割り振った場合はどうでしょうか?当然、本来の課題解決には組織の枠組みを超えた協力が必要になります。しかし、一旦分割された目標は一人歩きしはじめ、便宜上数値化・具体化された目標だけが達成され、本来の組織横断的課題の本質的解決にはならないのではないでしょうか?

 続けて、分割できない目標の場合はどうなるでしょうか?その場合には優秀な社員には経営計画と連動した重要な目標(難易度の高い大きな目標)が割り振られ、他の社員には重要経営課題とは直接関わらないような職場改善的な目標が自主設定されることになりがちです。これでは優秀な社員ほど負担が大きく、リスクが高く、結果として報われることが少ない状況に陥ります。企業戦略の実現や業績向上に関連の薄い、職場の改善的な目標を立てた平凡な社員は、平凡な仕事振りながら目標を達成し、実質的な組織貢献度以上の処遇を享受することになります。これでは社員の成果に公正に報いる成果“査定”主義さえも実現できません。

 部門間の協力が必要な、組織横断的な経営目標を分割すれば、協力し合うことが難しくなります。大きな改善や改革を実施しようとすれば、全社的なフローを見直す必要があります。全社的なフローを見直すには、それを各部門共通の組織横断的目標のままにしておく方がベストです。

 たとえ、各部門に目標を上手に割り振れてたとしても、部門間の協力が必要なはずです。しかしその協力が得られ難くなるのです。成果“査定”主義下では、皆が競争相手だからです・・・

■図6-3組織横断的な目標を分割する弊害

 組織横断的な目標を分割する弊害イメージ図

B.営業部門でも個人目標の弊害が

 さて、個人別に分割できる目標の最右翼である営業部門はどうでしょうか?数値目標達成だけが営業の仕事であると考えがちとなり、組織の底上げをはかるためのナレッジマネジメントや営業マニュアルの作成、後輩の指導育成などが疎かになりがちです。
 さらに、一旦分割された数値目標は一人歩きをはじめ、数値化・具体化された目標の達成だけが重視されます。その一方で、市場でのシェアやライバルとの競争、オンリーワンのサービスの提供、顧客ロイヤルティの獲得など、営業部門が本来とりくむべき組織横断的課題の本質的解決にはならないでしょう。

 営業の数値目標というのは、その「数値目標を継続的に達成できる体制づくり」という、より大きな(組織横断的な)課題が背景にあるはずです。例えば、営業マンの能力開発(人材育成)からはじまり、顧客ニーズを反映した商品開発の仕組作りや、顧客満足に指向したビジネスプロセス(自分達の仕事の進め方)の改善などです。
 それを忘れて、数値目標達成が独り歩きし始めますと、結局は営業マンを叱咤激励することが努力の中心となります。営業マンも歯を食いしばって頑張り、ようやく数値目標を達成します。しかし、上述の本質的な課題解決が行われていませんので、また来年も今年以上に歯を食いしばって頑張らなければならないのです。こうした近視眼的な数値目標偏重のサイクルが続けば、企業の本来のパワーは逓減し、緩やかに衰退してゆくのです。まさに、「成果のあがらぬ成果主義」の実態がこれです。

 「無理をさせ、無理をするなと、無理を言い」という川柳がありましたが、いつかは社員の必死の努力にも限界が訪れます。ぷっつりと糸が切れ、無理な努力が出来なくなったとき、ふと後を振り返ると本質的な強化は何も成されていません。
 結局は、経営にとっても、働く一人ひとりの社員にとっても何ら得る所はありません。これはまさにトヨタの「カイゼン」マネジメント(TQC、アメリカ型TQM)と正反対なマネジメントです。

 課の目標を分割し個人目標として割り振ってしまえば、個人目標がゴールとなりタコ壺の中での努力が積み重なるだけで、協力し合うことが難しくなります。困難性の高い目標を個人に公平に割り振ることは難しく、目標達成を優先すれば、特定の優秀者だけが困難な目標を担うことになり、その結果優秀で努力している者の評価が低くなりがちです。それは優秀者のやる気を無くすことになります。

 営業部門の場合であれば、課のメンバーと言えども同じ売上目標達成率という土俵の上で戦うライバルです。従って自分自身の個人目標さえ達成すれば満足し、他人の目標達成に協力したり、営業マニュアルをつくるなどして知恵を出し合うなどは上辺だけの協力で終わりがちです。本当に大切なことの書かれていない営業マニュアルは、新人教育に活用できる程度のものでしかありません。ナレッジマネジメントがうまくいっている企業が少ないのもこうした理由によるものと考えられます。

■図6-4営業部門でも個人目標だけがベストか?

 営業部門でも個人目標がベストではない

(3)個人業績査定の妄執から離れよう

 以上のような考察の後で、ドラッガーの提唱していた「Management by Objectives」目標管理は、本来は十分な責任と権限をもつ職位の社員、すなわち組織管理者レベルを対象としたものであったことを思い出すべきです。つまり、課の組織目標レベルであり、一人ひとりの第一線社員レベルにまで目標を分割することは、目標管理本来の使い方ではなかったのです。

 一人ひとりの第一線社員にまで無理を承知で目標を分割したのは、やはり目標管理を使って、個人業績を査定したかったからという理由が大きいと思われます。アメリカ企業において特に重要な理由は、非効率社員の解雇の法的根拠とするためです。(参考文献『アメリカ企業の人事戦略』日本経済新聞社、1999年)
 日本企業においては家族主義・年功的処遇を捨て、社員一人ひとりの個人業績査定を行い個人間の競争を煽ることで、さらに生産性を高めようとしたためです。

 社員を集めて組織を作ったのは何のためでしょうか?一人では達成できない大きな仕事を成し遂げるためではなかったのでしょうか?一人ひとりが個別に努力する以上に効率的に目標を達成するためだったのではないでしょうか?個人業績査定へ妄執し、組織目標を個人目標にまで分割すれば、チームが本来持つ潜在能力を奪ってしまいます。チームを自分の目標達成しか考えない烏合の衆におとしめてはいけません

(4)業績向上マネジメントにダブルスタンダード

 結局、個人業績査定に固執した目標管理は業績向上のためのマネジメント・ツールとしてはうまく機能しません。したがって、別の方法で業績向上マネジメントを行う必要があります。つまり、業績向上マネジメントに、あってはならないダブルスタンダードが生まれてしまうのです。

 あなたの会社でも業績向上マネジメントのP・D・C・Aサイクルを回していると思います。例えば、幹部会議、管理職会議、業績会議など様々な呼び名で様々なレベルで行われています。業績向上マネジメントの場では、徹底的に進捗管理がなされます。しかし、その場で業績向上のためのマネジメント・ツールとして目標管理が使われることは極めて少ないのです。言葉を変えれば、目標管理が人事評価のためだけに使われている状況がほとんどなのです。

 あなたの会社でもたぶん目標管理とは別の業績評価のツールが使われているはずです。例えば、バランススコアカードという技法もその一つです。そして、そのバランススコアカードは人事システムと結び付け難いといわれています。その理由は、バランススコアカードが組織横断的な4つの分野の経営目標を達成するための業績向上マネジメントツールとして生まれ運用されているため、どうしても個人目標にまで分割し難いのです。

(本来、目標管理が個人業績査定に固執することなく、業績向上のためのマネジメント・ツールとして健全に発展していれば、目標管理とは別に業績向上のためのマネジメント・ツールが必要であるという今の目標管理の窮状には至らなかったはずです。)

 あってはならないダブルスタンダードと言う意味では、「組織の壁を越えよ、それが高業績達成の秘訣」と言っておきながら、個人に目標を分割し与える成果“査定”主義自体が、ダブルスタンダードという矛盾の産物なのかも知れません。

2. 組織目標達成への回帰

 目標管理の本質を見つめなおし、「組織目標の達成」こそが目標管理のゴールであると考え、一人ひとりの努力を組織目標の達成に向けて総合する必要があります。これが組織目標達成への回帰です。

(1)チーム目標管理を業績向上マネジメントのツールに

 組織横断的な重要経営課題、経営目標を達成するために、会社全体として、そして部や課としてのチーム力を活かすマネジメントを展開しなければなりません。

A.チーム目標管理による対話と協働の場の創造

■図6-5個人からチームへ視点を切り替えると

個人からチームへ視点変えると協働可能

 部門間の協力が必要な、組織横断的な経営目標は、機能に応じて役割分担します。しかし、協働の連鎖を切らないために、毎月ミーティングの場を持ちます。そのミーティングの場で各部門相互の対話と協働が可能となり、協力し合うことができます。

(組織横断的な経営目標の達成度を連帯責任とします。達成できれば全部門が高く評価され、一方未達であれば全部門が低評価となります。勿論、各部門別に組織横断的な目標達成への貢献度が異なるでしょうから、その点はコンピテンシーで評価し、公正に報いるように工夫します。例えば、コンピテンシーに「組織への貢献」という項目を設け、組織横断的目標達成への貢献度を加点的に評価します。)

■図6-6組織横断的目標とチーム目標管理

 組織横断的目標をチーム目標管理で管理する

 課の目標は課メンバーの役割に応じて一旦は役割分担をします。しかし、協働の連鎖を切らないために、毎月ミーティングの場を持ちます。そのミーティングの場でメンバー同士の対話と協働が可能となり、協力し合うことができます。課の目標が共通のゴールとなり様々な状況の変化に対応しつつ協力体制・役割分担も柔軟に変えていきます。課目標の達成できる可能性を高めます。

 こうした工夫により、困難性の高い目標やステップがあっても、能力の高いメンバーからアドバイスや支援がもらえるため、必ずしもベテランばかりとは限らないメンバー構成であっても、組織目標達成につながり易くなります。

 目標を数値化しやすく個人に分担させやすい営業目標であっても同様です。イメージ的には課の組織目標と個人目標の2つがあり、それぞれを評価されるという体系です。

 まず課目標達成ための問題解決ミーティングを開くことで直接アドバイスや支援を受けられます。優秀者のノウハウをメンバー皆で活用してより効率的に高い成果をあげる努力が自然に出来るようになります。つまり、知識創造活動やナレッジマネジメントの推進が容易となるのです。

(課目標達成も個人の総合評価に影響するため、誰もが課の目標達成に関わりを持つようになります。)

■図6-7個人目標にチーム目標へ視点を加えると

個人目標にチーム目標へ視点を加え役割分担

(2)先進的企業では知識創造活動を実施し成果をあげている

 著者のお手伝いした先進的な企業では、すでに課の枠組みを超えて、それぞれの課の抱える難しい案件を、それぞれの課のノウハウを出し合ってアドバイスし合い、全社的な業績を高める「知識創造活動」を展開しています。

「はじめは知識創造理論を経営に活かすといっても、正直いって良く解らなかったのですが、最近ようやく解るようになりました。具体的には、課長同志がお互いのもつ貴重なノウハウで相互にアドバイスし合う、協力しあえる場を作ったのです。」とのことでした。

 自律した個人が知的なチームプレーを業績向上に向け集中する施策は、決して絵空事ではなく現実のものなのです。

 そしてこうした本当に効果的な業績向上努力が現実に行われている企業では、成果“査定”主義人事を導入していなかったのは決して偶然ではありません。むしろ、当然のことかも知れません。成果“査定”主義下で、課長同志がお互いの成果を苛烈に競い合ったならば、協働が機能するとは思えません。少なくともこの本を読まれた読者の皆様にはご理解いただけると思います。

3. チーム目標管理を実践するポイント

(1)目標設定を先行シミュレーション

 「それほどまで個人業績の把握が難しいと主張されるのならば、今はまだ目標管理の制度設計中ですが、目標設定を先行してシミュレーションしてみよう。」と考えました。プロジェクトメンバーは管理職一歩手前の中堅・ベテラン職員でしたので、能力的には十分成熟しています。
 まず、課という単位で部門目標を設定してもらいました。それから、その課の部門目標を各課員でどう分担するかを考えてもらったのです。■図6-9のフォームを使って、シミュレーションしてもらいました。

■図6-9目標設定先行シミュレーションのフォーム例

目標設定先行シミュレーションのフォーム例

※部門課題の1のみ記入イメージ例を記載しました。

A.経営計画の達成・経営戦略の実現のための目標設定

 目標設定シミュレーションの際最も気をつけたのは、経営計画との連係です。目標なら何でも良いのではなく、必ず経営計画に掲げられた経営課題や経営目標の達成につながるような目標でなければ意味がありません。
 なぜならば、目標管理は経営計画の達成・経営戦略実現のためのマネジメント・システムであり、経営計画から離れた目標を立ててはならないからです。(その原則は、目標管理を個人業績査定のツールにすると崩れてしまうわけですが・・・)

(3)企業の目標の体系は非連続的

 参加してくださったプロジェクトメンバーには大変申し訳なかったのですが、シミュレーションとは言えできるだけ運用の際の目標設定レベルに近づけるために、3回ほど書き直しをお願いしました。どうやったら課の目標を経営計画と連係させられるか、大分悩まれたようです。

 一般的に、経営計画には重要経営課題、経営目標が記述されていますが、その性格は組織横断的・全社的なものです。従って管理者からは「我が課の組織目標を、経営計画と連動させて設定すると言っても、出来ません!」という声が聞こえてきます。前にも説明しましたが、これは組織の中(マネジメントのネットワーク)がそう言う階層になっているのです。■図6-10目標の階層と非連続性を参照してください。

 経営レベルでは、全体的な課題や目標を設定します。

 そして、ミドル管理者が経営計画達成につながるように組織横断的な協働を前提として、自分の担当組織の課題や目標を設定するのです。■図6-10に見るように、実は重要経営課題・経営目標と各課の目標には大きな断層があります。それは、上述のマネジメントのネットワークの階層が「非連続的」だからなのです。

■図6-10目標の階層と非連続性

戦略的管理者は目標の階層と非連続性を埋める

(4)戦略ミドルは複眼思考

 経営者層(トップマネジメント)は、物事を全体的・長期的・大局的・戦略的に見据え、革新的・統合的な発展の方向を目指します。

 その一方で、管理者層(ミドルマネジメント)は、物事を部分的(担当する組織限定)・短期的に見がちです。そして物事を改善的に発展させようとします。さらに上からの「全体的・長期的・大局的・戦略的・革新的・統合的」な要請と、下からの「局地的・短期的・現実重視・効率重視・実行重視」の提案、外部の「顧客・競争相手・環境の変化」を最も的確に把握できるポジションに位置しています。それゆえ、物事を「複眼的」に見る役割を担います。

 しかし、これが難しいのです・・・人という生き物は、常に物事を「自分なりの経験に基づいて、自分なりの視点で」解釈しようと試みます。皆が皆「俺流」です。例え、その解釈の試みが失敗しても、意に介しません。それが「頑固」ということの意味なのでしょう・・・

 物事は見る視点、解釈する理論の違いによって、大きく異なります。管理職にはこの視点を複数持っていただく必要があります。自分自身の役割である「担当組織の目標達成」という視点だけではなく、「組織横断的目標・全社的目標の達成」「経営課題の解決」という経営の視点、そして日々第一線で働く社員の視点を持たなければなりません。

 さらに、外部指向の視点、すなわちお客様第一・お客様のニーズをどう満たすかの視点、如何に社外の競争相手と戦うかの視点、経営環境の変化の中に成長の機会を如何に見つけリスクを如何に最少限にするかという視点なども不可欠なのです。(■図6-11参照)

■図6-11複眼的にものを見て考える戦略ミドル

戦略ミドルは複眼的にものを見て考える

A.経営計画と連動する目標設定の工夫

 以上説明してきたように、実は目標設定とは非常に難しく、管理職に負担を強いるものなのです。ですから、まだ管理職になっていないプロジェクトメンバーには難しい目標設定シミュレーションになってしまったのです。「・・・・・目標設定できないなあ、困ったなあ・・・」目標設定が難しくて出来ないのと、学園の事務や教育・研究と言った仕事の特性上目標設定が出来ないというのは全く意味が違います。

 さあ、困りました!皆さんは、どのように目標設定を工夫されていますか?優秀な管理者ばかりだから心配いりませんか?それとも、とにかく数値化されていれば良い目標だと、経営計画に連動しているかどうかなどはもう検討しないで忘れていますか?

 悩みが尽きない目標設定の良い方法については、「目標設定を簡単かつ効果的に行なう方法」の項でご紹介しています。