このページは「人材育成-組織活性化重視!人事制度改善-改革テキスト」の第3章 要員計画 がテーマです。

1. 要員計画の意義

 要員計画とは、企業の発展に必要な人的資源を確保するための人的資源管理機能の一つである。企業環境の変化に対応して、企業活動の効果的かつ効率的な遂行のために、質・量の両面から合理的な要員を定めこれを維持運用する。

 要員計画の意義は、人的資源は「今欲しい機能を今直ぐ採用し役立させる」ことが困難である点に起因する。つまり、あらかじめ必要とされる機能を把握し、その機能を遂行する人材を計画的に探し求めて採用し、組織の中で能力発揮が十分出来るように慣れてもらうためには、大分時間がかかるのである。したがって、計画的に前もって準備することが必須であり、要員計画が不十分であれば、多額の費用をかけて人的資源を急遽調達することになり、必要に追われ十分な検討もできずにその結果必要な機能を発揮できない場合が多い。

2. 要員計画の体系

 要員計画の体系は次の図表のとおりである。これに沿って要員計画の体系を以下に説明する。

■図表 要員計画の体系
要員計画の体系図

(1)能力状況の把握

 現在,どのような能力をもった人材が何人いるのか,職能資格等級別,職種別に明らかにする。また,だれがどのような仕事を担当していて,その遂行度はどの程度かを把握する。人事考課を実施していれば,その評価が能力の判定に用いられる。人事考課を実施していなければ,上司による勤務成績の評価を参考とする。

 縦軸に氏名,横軸に求められる能力(遂行すべき職務)のマトリックスを作り整理する。

(2)経営計画と要員計画

 「組織は戦略に従う」という有名な言葉があるが,これにならえば「要員計画は経営計画に従う」といえよう。

 すなわち,経営計画の実行計画から遂行すべき業務が導かれる。これがミクロ適正要員を設定する際の分析対象になる。さらに,利益計画からは許容総額人件費としての人件費計画が導き出される。これがマクロ適正要員設定の基礎となる。

 人件費計画には総額人件費予算,人件費枠,枠と総額人件費の差異検討,1人当たり平均人件費予測,人件費削減計画等が含まれる。

3. 要員計画の手法 

(1)マクロ要員設定

 マクロ要員計画は経営採算人員を導き出すための手法である。経営計画・利益計画に基づき,どれだけの人員(≒総額人件費コスト)が許容されるかという視点である。

 まず,業績予測・分析を行って目標売上高を設定し,それに目標付加価値率をかけて目標付加価値の額を設定する。そこに目標労働分配率をかけると目標総額人件費が導かれる。

 次に,目標総額人件費を目標1人当たり人件費で割ると,経営採算人員(目標とすべき人員数)が導かれる。その人員数を基礎に,目標部門別人員構成比率をかけて目標部門別人員数を設定する。

■図表 マクロ要員計画の設定方法
マクロ要員計画の設定方法

(2)ミクロ要員設定

 ミクロ要員計画は部門別必要人員を導き出すための手法である。仕事をこなすためにはどれだけの人員が必要かという視点である。

 まず,部門別単位業務の明確化を行う。初めに業務・作業量分析を実施する。そして,単位業務ごとの課業の明確化を行う。すなわち,課業内容の分析と課業発生頻度・件数の分析,課業単位当たりの所要時間分析を行う。

 その分析結果から現状の部門別標準業務量算定がなされる。さらに,医業経営に特有の法的規制要因を加味して部門別最適人員を算出しなければならない。

■図表 ミクロ要員計画の設定方法
ミクロ要員計画の設定方法

(3)質的要員計画

 質的要員計画は戦略遂行に必要な機能の担い手として,どのような分野のどの程度の能力水準の人材がどの程度必要なのかを導き出すための手法である。企業戦略と連動した長期的で質的な視点である。

 能力状況の現状把握と,中長期経営計画もしくは企業戦略で描かれた将来の事業領域を切り開くための人員や戦略目標を達成するために必要な人員との間には,大きなギャップが予想される。そのギャップを埋めて,戦略目標を達成するための人的資源を補強しなければならない。

 社内の人材を育成・開発し,戦略遂行に必要な新しい機能を発揮させる場合にしても,中途採用で必要な能力をもった人材を補充するにしても,いずれにしても3年なり5年なりのタイムスパンで計画的に取り組まなければ成功は覚束ないであろう。

(4)業務の改善

 ここまでは現状分析を中心に進めてきたが,要員計画をまとめる前に,ぜひ業務の改善のステップを盛り込む必要がある。すなわち,より効率的で効果的な新しい働き方を作り出すために,業務改善,組織簡素化,事務合理化を実施することが望ましい。

 詳細については拙著『すぐにつかえる管理間接コスト削減マニュアル』(共著,生産性出版)を参照されたい。

(5)要員計画の統合

 どのような能力の従業員が(職能資格等級別,職種別)何人くらい必要なのかを統合するステップである。

 マクロ的な視点およびミクロ的な視点から設定された必要人員数を比較検討して決定する。現実には,現状の人員とマクロ要員計画(経営採算人員)を勘案して決定される場合が多いであろう。ミクロ要員計画は大きな労力を必要とするため,コストダウンのための業務改善や人事制度設計のための職務調査を実施する際に同時に行うか,近年に業務改善・職務調査の実績があれば,そのデータを活用することが望ましい。