1991年バブル崩壊から失われた20年が続き、もうすぐ25年目です。経営環境も人の心も大きく変わりました。その変化に対応して、新しいフロンティア時代にあったビジネス、働き方、人事を築かなければ会社は活性化しません。若者の早期離職が多いのも、働きがいが得られないのが一大要因です。また、人手不足に悩んでいるのなら、ぜひ働きがいを重視してください。きっと良い結果につながります。

 さて、実はグローバル人材育成の一番のポイントは、「自分と違う意見・異なる価値観に上手に対応し、さらに違いの中から新たな価値を創造する力」なのです。一言で言えば、「和して同ぜず」もしくは、「ダイバーシティ、多様性尊重」です。
 しかし、人のマインドは簡単には変わらないのです。新時代の息吹を感じさせる若い世代には権限がなく、日々成果主義で査定されるだけ。それで良いのでしょうか?「黙って俺に付いてこい」等の高度成長時代のマネジメントでは、もう何も生まれません。ごり押しすれば、すぐにパワハラ、ブラック…インターネットであっと言う間に広がってしまいます。では、どうすれば良いのでしょうか?

Contents

1.我々は今「高業績」を生む直前で奮闘している

(1)古い常識が通用しなくなっている

A.環境変化:キャッチアップからフロンティアへ

 豊かな社会、産業ライフサイクルの成熟、コストアップ要因などによるキャッチアップ型戦略の限界、IT化、グローバル化による世界のフラット化・双方向化という環境変化を受けて、フロンティア型の企業戦略が求められています。欧米先進国と真っ正面からビジネスで競いあう状況です。昔のように、欧米の開発した新商品を低廉に安定して生産することで繁栄することが難しくなっています。

B.インターネットとエクセルで武装した消費者に勝てるのか?

 率直に言って、今までのビジネスの常識が通用しなくなっています。例えば、豊かな社会になると、「自律性」というものが快感になってきます。つまり、消費者も与えられた商品で満足せず、自分自身で選んで商品を買いたいのです。インターネットやスマートフォン、エクセル(表計算ソフト)などにより広範な情報を収集して合理的に商品購入の比較ができるようになりました。とても簡単にできるので、インターネットでの情報収集がショッピングの楽しみの一部にもなっています。

 こうした新しい消費者の行動と、従来からの供給サイドの論理はあいいれません。しかし、企業の多くは未だに供給サイドの論理で行動しています。

2. オールドタイプとニュータイプ(エコノミック・シチズン)の葛藤

オールドタイプとニュータイプ(エコノミック・シチズン)比較

(1)ニュータイプ(エコノミック・シチズン)は「社会に貢献できる仕事がしたい」と願う

 ニュータイプ・ビジネスパーソン(エコノミック・シチズン)とは「社会に貢献できる仕事がしたい」と思い、社会貢献とビジネスで利益をあげるということは矛盾しないと考えるビジネスパーソンです。

 一方、オールドタイプは「私企業である以上ビジネスで利益を上げることをが第一で、社会貢献とは相いれない」と考える人です。

 ニュータイプやオールドタイプはものの見方考え方・価値観であって年齢や勤続ではありません。事実、過去の素晴らしい日本企業にはニュータイプ(エコノミック・シチズン)が沢山いました

(2)あなたは古い常識にイエスと言えるのか?

 環境や消費者の行動は大きく変化しました。しかし、働く我々ビジネスパーソンを取り巻く状況や会社の論理は、古いままです。
 簡単に言うと、古い常識に囚われた上司の言うことを聞いているだけでは、中長期的発展が期待できないのです。そこに、若いビジネスパーソンの葛藤があるのです。

 例えば、自動車産業でミニバンが大流行しました。しかし、その結果、自動車を所有し走ることの楽しみが無くなってしまい、需要がドンドン先細りしてしまいました。
 上司が言います「アンケートを見たまえ、ユーザーが求めているのはミニバンだ」「データを見たまえ、ミニバンが一番売れている」そういう常識だけで行動していると、人の心の奥底にあるニーズを見逃してしまいます。ミニバンよりも2ボックスカーの方が軽量なので省燃費ではないだろうか?ベビーカー2台が積めればよいならツーリングワゴンでも良いのでは?ミニバンよりもスポーツカーの方が車の楽しみを味わえるのではないか?そんな発想が出なくなってしまいます。

(3)あなたは上司にノーと言えるのか?

 上意下達の企業組織では、上司に逆らうのは厳禁なのです。さらに、人事考課に「上司の指示した仕事をやり遂げたか」という項目が非常に大きなウエイトを占めるのです。
 キャッチアップ時代には、「部長のおっしゃるとおりです」「課長のご指示に従います」でも良かったのでしょう。なぜなら、欧米先進国に手本があって、それを廉価に大量生産するのがメインだからです。

(4)社会貢献とビジネスは矛盾しない

 社会貢献とビジネスで儲けるということは矛盾しません。矛盾すると思っているのはオールドタイプなのです。大抵のビジネスパーソンは人事異動で数年で職場が変わりますから、中長期業績など取り組むだけ無駄にみえるのかもしれません。

 会社は利益を出すことが必要条件です。ただし、短期業績と中長期業績の両方をバランス良く向上させる必要があります。短期業績だけ見ていると、社会貢献と相いれないと錯覚するかもしれません。トヨタ自動車は最高益をたたき出した後「人材育成に投資する」と宣言しました。人材に投資するというのは、中長期業績を重視するということに他なりません。

3. あと一歩で「働きがいと高業績を両立」できる

(1)社会貢献マインドは優れた強み

 厚生労働省の統計データでは若者の8割が社会貢献マインドを確実に持ち、7割が次世代貢献マインドに目覚めています。この、若きビジネスパーソンの「自分らしさを活かして社会に貢献したい」というマインドは日本の最大の強みでもあります。

 日本が豊かになり生産コストが相対的に高くなってしまい、生産コストの優位性を失いました。しかし、我々は社会貢献・次世代貢献マインドを持てるようになりマインド優位性を確立しつつあるのです。これは、周辺諸国にはまだ望み得ない日本の強みです。

 豊かになり日本人が成熟しつつある今、ここからあと一歩進むだけで、我々は「働きがい・心の豊かさ」と「高業績・経済的豊かさ」を両立することができるのです。

A.公的な意識調査結果からみる「働きがい」の源泉:社会貢献マインド

 厚生労働省「若者の意識に関する調査」2013年(PDF)によれば「社会に役立つことをしたい」というニーズが高まっています(若者の80%の意見)。うち37%が自分の職業を通して貢献したいと回答しています。
若者の8割が社会に役立つことをしたい
 「企業は社会性を同時に追求する必要性がある」という意見が、勤続経験を経るにしたがって70%(20〜24才)から80%(35〜39才)へと増えています。儲けだけでなく社会性も必要と若者の8割

(2)自分と違う他人を尊重する「和して同ぜず」能力

 あと一歩とは自分と違う他人(その存在と、意見)を尊重する「和して同ぜず」能力です。

4. 旧来の人事制度は働きがいを与えてくれない

 当然、今までの働き方・人事管理の仕方も通用し難くなっています。

(1)長期雇用の崩壊で会社への忠誠・貢献はナンセンス

 これからの世代を担う若いビジネスパーソンは、不景気の時代を生きてきました。ある意味、日本の長期雇用慣行が揺らいで崩壊しつつある時代を生きてきました。沢山のオールドタイプ企業の衰退、大規模なリストラ、友人の親御さんがそれに呑み込まれて苦しんでいる姿を実際に体験するなど、会社への忠誠・貢献を簡単に期待することはできません。

(2)旧来の人事考課は万能ではない

A.旧来の人事考課はインセンティブ(アメとムチ)中心

 旧来の人事制度、旧来の人事考課制度はアメとムチのインセンティブ中心の制度です。どうしてもそこに限界があります。「働きがい」を提供する制度ではないのです。

 賃金、昇進その他の社内の処遇を人事考課の結果次第で上下させ公平に報いるという方法は、間違ってはいません.「良い成果を出せて賞与が増えた、やる気が出るぜ!」しかし、賃金や昇進などはやる気につながるのですが、効果が持続しないと言われています。不満解消には役立つけれども、長持ちするやる気がでない「衛生要因」と言われています。

 その理由は、賃金、昇進はアメとムチのインセンティブ(刺激策)だからです。働きがいが心の内側から湧き上がってくるパワーなのに対して、賃金や昇進は外側から刺激する「外発的動機付け」といわれる手法なのです。

 したがって、旧来の人事制度、旧来の人事考課制度は、本質的な「働きがい」にはほんとんどつながりません。

5. トヨタとAppleの事例に見る本質的な「働きがい」

 アップル社やトヨタ・プリウスは、社員に本質的な「働きがい」を提供し、世界一の高業績を達成しています。
 本質的な「働きがい」を生むのは、社会貢献マインドと、それが未来志向に発展した②次世代貢献マインドです。社会貢献マインド・次世代貢献マインドとイノベーション・モチベーション

(1)本質的な「働きがい」(社員の幸せ)とイノベーション(会社の中長期的発展)

 また、真の顧客志向を実践するには、目に見えない潜在ニーズを創造する必要がありますが、その創造の軸になるのが①社会貢献マインド②次世代貢献マインドの評価軸です。どのような評価軸で評価するかによって、評価結果や見えるものが違ってきます。例えば、我が子により良いものを残したいという「次世代貢献マインド」の軸で見るからこそ、トヨタ・プリウスやトヨタ・ミライというハイリスクな車が開発目標になるのです。

■トヨタ・プリウスを3つの軸で評価したイメージ図(クリックで拡大します)
トヨタ-プリウスを3つの軸で評価したイメージ図
写真の出典:トヨタ自動車株式会社
トヨタとAppleのイノベーション事例に関しては別のページで詳述しています。)

 このように、本質的な「働きがい」とイノベーション、社員の幸せと会社の中長期的発展は緊密に結びついています

参考【統計データにみる①社会貢献マインド、②次世代貢献マインド】

厚生労働省「働きがい」関連調査2014年より

厚生労働省「若者の意識に関する調査」2013年より