タンポポが害虫に襲われ瀕死になった際に、アリの集団が害虫を駆除してタンポポを救いました。科学的に説明のつく事ですが、生態系の尊さを体験し、自然の神秘に触れたような厳かな気持ちになりました。自然や世界の全てが繋がり影響しあっている事を体験しました。

 画像は刺激的なため、マスキング処理しています。(ご要望があれば、後日マスキングしない画像のページも作成予定です。)

1.タンポポがネキリムシに襲われる

(1)無農薬で家庭菜園を始めるが害虫に襲われる

 春から無農薬の家庭菜園を始めたのですが、突然そんな事を始めれば、害虫に襲われるのは避けられません。なぜなら、家庭菜園を始めたばかりだと、益虫がいないからです。(多数の害虫が集まってきて、その被害に困った頃に、ようやく益虫が訪れるのです。)
 なかでも、夜にしか出てこない害虫(ヨトウムシ、ネキリムシなど)には悩まされました。
 今回はネキリムシの状態(土中から顔だけを出し、付け根付近の葉をかじる)の害虫でしたので以下ネキリムシと呼びます。ヨトウムシの老齢幼虫に思えます。

(2)夜にネキリムシをひたすら捕殺→ストレスマックス

 8月初旬に、プランターで育てたタンポポもネキリムシに襲われました。途中から防虫ネットをかけましたが後の祭りでした。

 終齢幼虫期には土中に潜り、顔だけ出して葉をかじるような「ネキリムシ」は大きな脅威でした。毎晩2回くらいは懐中電灯を片手にタンポポを見て回ります。そうすると、一晩に一つのプランターで2匹くらいは捕殺できますが、まだ土中に隠れているようで、なかなか食害は止みません。

(3)タンポポが瀕死の状態になる

 そうやって十日ほど過ぎると、ある朝タンポポがついに瀕死の状態になりました。「あぁっ!こんなに葉を食べられたらタンポポが死んでしまう。しかも、葉っぱをかじるだけでほったらかしにしているなど狼藉にも程がある。共存共栄などできる関係ではない!」

「いっそ農薬を使ってネキリムシを駆除しようか……タンポポは食べる植物ではないので、農薬を使っても実害はないんだし。」と考え始めました。

2.アリが土中のネキリムシを次々に攻撃し駆除

 昼休みに、スマートフォンのカメラで、瀕死の状態になったタンポポを記録しておこうと思いました。そこで、今回の衝撃的なアリ軍団に遭遇したのです。

(1)プランターの中にアリを多数発見

 最初は、「またアリがアブラムシにでもたかってるのだろうか?」と考えました。しかし、良く見ると、支柱の穴の所にアリが集中し、その穴の底には憎きネキリムシが見えました。

 「アリがヨトウムシを襲っているのだろうか?(そんなことが起こるなら誰も苦労はしないから、あり得ないでしょう?)」と不信に思いました。そこで、記録のためスマートフォンで撮影をすることにしました。
 観察を続けると、アリの集団がネキリムシを攻撃しています。穴から地表面に追い出して、退治しています。

 そして、上の方の引きちぎられた葉っぱをめくってみると、その下にもう一匹のネキリムシが隠れていて、こちらもアリに攻撃されていました。これは疑いようがありません。

(2)いつもは素通りするアリがなぜネキリムシを攻撃?

 アリは、いつもはこのプランターの側を素通りしています。延々と遠くへ餌を取りに行っているようです。延々と千匹くらいは行列しているようです。
 以前、この行列にミニトマトでつかまえた青虫(タバコ蛾の幼虫と思われます)を食べさせようとしたことがありましたが、ちょっと触っただけで興味を示さなかったのです。
 それがこの日に限って、アリの集団がネキリムシを攻撃しています。おそらく300匹以上はいたでしょう。
 そういえば『植物は虫に食べられると防衛メカニズムが働いて自分の味を悪くしたりするから、虫に沢山食われた植物は無理に食べない方がよい』という話を聞いたことがあったなあと思いだしました。そういった植物の防衛メカニズムの一種が働いたのではないかと思い、観察を続けることにしました。

(3)社会性のあるアリ(軍団のように統率の取れた攻撃)

 アリは社会性のある昆虫だそうです。女王アリ、働きアリ等がいてコロニーの中で役割分担しています。
 そして、この日のアリは相当に統率の取れた攻撃行動をしていました。合計4匹のネキリムシを狩り出したのですが、多数のアリが真っ先に攻撃するのは「元気のよい」ネキリムシでした。弱ったネキリムシには少数のアリがたかるだけでした。
 この統率のとれた攻撃にびっくりしてしまいました。「アリはたがか虫なのに、よくもまあ集団にとって最適の攻撃行動を選んでいるなあ」と感心しました。つまり、弱っているネキリムシは逃げ切れないだろうから、強いネキリムシにこそ攻撃を集中し、全数を退治する(餌として持ち帰る)という意図だと想像しました。知能の低い虫なら、自分にとって餌を得やすい、一番弱っているネキリムシを狙って攻撃するんだろうなと思ってましたが、まったく逆でした。

3.アリがタンポポを助けた科学的な背景

 私は、大学時代にカール・R・ポパーの『果てしなき探求―知的自伝』を読んで感銘を受け、卒論に卒論「カール・R・ポパーの批判的合理主義」を書き、常に科学的でありたいと考えてきました。したがって、いかに趣味の家庭菜園体験記だったとしても、えせ科学や疑似科学、オカルトの類は避けたいところです。そこで、アリがタンポポを助けた科学的な背景を簡単に解説いたします。

(1)ジャスモン酸メチルという情報伝達物質(植物ホルモン)

 植物は、虫に攻撃されると、ジャスモン酸メチルという情報伝達物質(植物ホルモン様物質)を生成して、防衛メカニズムを作動させます。例えば、まだ虫に食べられていない葉を不味く、消化が難しい状態にして、虫に食べられるのを防ぐなどです。

(2)土中のネキリムシを次々に攻撃し駆除ジャスモン酸メチルで救助信号を出した

 さらに、ジャスモン酸メチルは「イモムシを食べてくれる天敵や寄生者をおびき寄せる効果もある」のです。
 植物からすれば救助信号ですが、虫からすれば「ここに美味しい食べ物がある」という信号なのでしょう。ジャスモン酸メチルはジャスミンの香り成分の成分だそうですから、きっとアリにしてみれば最高のご馳走に見えたのでしょう(推測です)。
 プランターの中は、ある意味で自然環境から(弱いながらも)隔離されていますので、よほど強い救助信号でなければアリも気づかなかったでしょう。そうした意味からも今回の出来事は大変稀であり、その状況を写真に残せたのは大変貴重です。

 例えば、ナショナル ジオグラフィック協会「植物はイモムシを共食いさせて身を守る、初の発見」,2017.07.13に天敵を誘き寄せる効果があるとの記載が見られます。その内容を一部引用いたします。

植物の防御メカニズム

 オロック氏と研究チームは、植物の防御メカニズムを引き出すため、化学物質ジャスモン酸メチルをトマトの木に散布し、そこにガの仲間であるシロイチモジヨトウの幼虫を置いた。

 ジャスモン酸メチルは、損傷を与えられるなど植物が何らかのストレスを受けたときに発散する物質。この物質を受け取ったトマトは、自身の化学成分を変化させ、イモムシがそれを食べた時にまずいと感じるようになる。

 この防御反応は、ほかの様々な植物でも記録されている。植物には、近くにある他の植物が攻撃されているのを感知する能力があることを示唆する研究もある。そして攻撃を感知すると、周囲の植物全体がジャスモン酸メチルを発散するという。(参考記事:「植物は隣の植物の声を聞く?」)

「ほとんどの植物は、周囲の環境から得られる情報を利用しているとよく言われています。私が最も興味を抱いたのは、この点です。そしてその情報を基に、植物は自分たちの資源を自己防衛や他の目的にうまく振り分けているのです」と、オロック氏。

 ジャスモン酸メチルは植物の味を悪くさせるだけではない。「イモムシを食べてくれる天敵や寄生者をおびき寄せる効果もあるのです」

引用:ナショナル ジオグラフィック協会(日本版)「植物はイモムシを共食いさせて身を守る、初の発見」,2017.07.13

4.無農薬だから体験できた自然・生態系の不思議

(1)タンポポは守られた

 結局、この日はアリの集団が4匹のネキリムシを退治し、これ以降はネキリムシの被害は無くなりました。瀕死のタンポポは守られたのです。

(2)自然・生態系の尊さに触れた

 これは上述のように科学的に説明のつく出来事ですが、「アリが植物を救う」というイベントが自分の目の前で起こる可能性は低く、自然の神秘に触れたような厳かな気持ちになりました。

5.まとめ:全体最適化は難しいが王道・部分最適化は簡単(皮相的)

 自然も、人事も、焦らず辛抱して、全体最適を心がけることが大切です。アリは、集団の利益のために、率先して難易度の高い、強い害虫に挑みます。

 最近では「侵略的外来種」の「ヒアリ」が注目を集めています。ヒアリは明らかに害虫であり社会に害をなしますから駆除する必要があります。しかし、昔から日本にいるアリは、益虫なのです。ぜひ、在来種のアリを駆除する前に、一度本当に駆除が必要かどうか考えてみてください。アリは、シロアリの天敵でもあります。ヒアリと戦ってくれるのも、また在来種のアリだそうです。

 2018年7月、庭の外れの廃木に巣くっていたらしいシロアリを、アリが退治してくれました。ものすごい勢いで、シロアリの卵を運んでいました。
シロアリの卵を運ぶアリ

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